À cette belle personne..~美しいあの人へ…(加筆&続編♥️)


2024年2月11日にアメブロに掲載させて頂きましたこちらの小説。



2024年3月
加筆&続編として、もう少し話を続けました✨

すみません💦

本当に本当に

R18です💦

嫌な人は読まないでね💦


寛大な人だけご覧下さいませ(._.)💦




えーと。

2024年2月28日
アメブロ公式ハッシュタグランキング16位になりました!

ありがとうございます!



私は個人事業で、savon職人を25年しています。
香りにはとても敏感で、ありとあらゆる勉強もしました。
去年の夏から友人の調香師にたのんで、
オスカルとアンドレの香りをイメージした
無添加フラワーオイルを作って貰いました。
オール フランス製の材料です。


いま輸入仕入れがものすごく高いので、販売価格も高いのですが、本当に欲しい方のみにしか販売していないのです

いや。関係ない話を書いてますが(笑)


ふと思い立ち

もし、アンドレがオスカルの為に調香を学んだら…と、思い
小説を書いてみました…



読み切り小説です♥️


この小説は、2023年10月4日に、
1度pixivで掲載させて頂いておりますが、中盤から、加筆&続編として追記させて頂きました♥️✨

2人のラブラブな駆け引きをお楽しみ下さいませ♥️

では、どうぞ〰️✨♥️✨





~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨






衛兵隊B中隊隊長となって、隊員達と散々ゴタゴタを起こしながらも、

漸く、オスカルと隊員達の絆が強くなり始めた頃。

アンドレは、休暇日の度にパリに出向くようになり、オスカルと一緒に屋敷に帰る日が少なくなっていた。

何か用でパリに向かうのか?と何度かオスカルは聞き出そうとしたが



「ちょっと勉強をしに行ってるんだ」
の、一点張りで、
それは、


嘘だな。
と、帰りの馬車の中でオスカルは一人、苛々が収まらない。

2人はオスカルが近衛を辞めてから、互いに幼なじみから恋人へと変わった。
それは、ごく自然な成り行きで、2人とももう気持ちを隠す必要すらなかった。



なのに。



最近のアンドレは、勤務が終わるとパリへ行くと言い、また
休暇の日も、時々パリへ、
しかも朝早くからいなくなるものだから、
寝台を共にしても
翌朝早くにはベッドに彼の姿、形もなく。




寝乱れた身体に愛の刻印をいくつも付けられても、


「アンドレの馬鹿!」

と、言いたくなる気持ちを抑える事が出来なくなっていた。



そして。
とある日の勤務が早めに終わると、アンドレがまた
「ごめん、オスカル」
と口にした途端


「パリの何処へ行く」
と、超機嫌の悪いオスカルの最低音の声が司令官室に響いた。


「だから…勉強をしに…」

「何の勉強だ?」

アンドレは、う、と詰まった後に

「最近のパリの情勢の調査…」


「私はお前にそんな命令はしていないぞ」

「…オスカル…」

「何だ」

「声が怖い」

「私は普通に喋っている」

「そうかなあ」

「今夜はチェスの決着をつけると約束していたのを忘れたのか?」

「あ…。そうだった…。わかった。決着をつけよう。パリには行かない」
そうアンドレが少し不満そうな言い方をしたので、オスカルは苛々の頂点に達した。

「アンドレ。私と、パリの勉強とやら。どちらが大切なんだ」

「……オスカルに決まってるだろ?どうして比較するんだ?何か勘違いしてないか?」

「勘違いされるような事をしているのか?」

オスカルは、揚げ足を取った。



「ない、ない、ないです!機嫌なおして…な?さあ、屋敷に帰ろう」
アンドレは、オスカルが持っていた書類を取り、箱に綺麗に納めた後、司令官室のカーテンを閉めて

苦虫を噛み潰したような顔したオスカルの頬に軽く口づけた。

「チェスの勝負がついたら、その後はこの前、買ってきたブルゴーニュのワインで乾杯だ。付き合えよ?」
ワインで乾杯。



それは寝所を共に、と言う2人だけの暗号。




口の端をニッと緩めながら、オスカルはアンドレを見上げた。





「あ〰️!負けた!俺の負けだ!」
チェスは30分で勝負がついてしまった。

ゲームは、本当にオスカルは強い。

いや、酒も恐ろしく強いんだが…。

小さな時から、本気で2人で色んなゲームをしたが、殆どはアンドレが負けていた。

「アンドレ、多分…お前は私に1000回以上は負けてるな」

次はワインのボトルに手を出しながら、オスカルは上機嫌で鼻歌を歌っている。

「1000回以上だ、すごいぞ、アンドレ」
そう言って、グラスにワインを注ぐと、アンドレに渡した。

「……でも、夜はいとも簡単にお前に負けている、私は……」

オスカルの唇から、意外な台詞を聞いたアンドレは、驚いて顔を上げた。

「オスカル…」

「なんだ?」
オスカルは楽しそうにアンドレが持つグラスに、キン!と自分のグラスを当てた。

「あのさ…そういうの、勝ち負けじゃないよ」

「なにが?」

「……お前を抱く事」



そう囁くとアンドレは、オスカルを膝の上に乗せ、背中から抱きしめる。
「アンドレ、だめ…ワインが溢れる…」

「わかった」
アンドレは絡めた腕をほどいた。


「飲む?テーブルに置く?」
とアンドレが尋ねると、オスカルはひとくち
ぐいっと飲み

「テーブルに…」
すぐ横にある丸テーブルに2人分のグラスを置く。その仕草を見つめていたアンドレは
オスカルを優しく、抱き上げた。



「オスカル、お前明日非番だろう?俺も非番なの知ってるよな?」

「ああ。それが何か?」

寝台に下ろされ、クラバットをゆっくりほどかれ

アンドレの唇が鎖骨に下りて、浮き出た華奢な白い肌に口づける。

「いや、なんでもない…」




軍服では決して見えない場所に。
甘いため息がオスカルの唇から漏れる頃には、陶器のようなオスカルの白い肌が、うっすらピンク色に染まり、女の身体が熱を持つ。

アンドレは、その蒸気するオスカルの肌と、汗の香りにめまいが起きそうな程、酔いしれる。



芳醇なワイン以上の、甘いかおり。


アンドレの唇が、彼女の細いウエストラインから、指をゆっくり這わせ、お腹、臍へと口づけをし、赤い刻印を付ける度に、
オスカルは、よがりながら、女の細い声を上げ

時折、口づけをくれる柔らかく黒い髪に、指を差し入れ、かき回す。




「オスカル……気持ちいい…か…?」

返事はない。

アンドレは彼女の腹部の下に手と顔を下ろして、指を金色の茂みの下奥にゆるりと入れてみた。

「あ…ッ……!そこは……!…ッ…」

オスカルの下肢が快感で震える。
気持ち良いのか、腰が僅かに浮くのだ。

中はすでに濡れていた。

2本目の指を入れると、抜き差しを早める。

「…!ああ…!ア…アンドレ…!…」

オスカルは、左右に開かれた脚をより一層開き、アンドレの頭をそこに押し付ける。
それが絶頂の合図。

アンドレは、指を今度はゆっくり抜き差ししながら、漏れてシーツまで滴る、甘酸っぱい彼女の蜜を舌で
唇で


わざと音を立てながら、吸い取ってゆく。



「……ひ…!…あ……ああ…!」

その感触がたまらず、オスカルはいっそう、高く女の甘い声をあげるしかない。

まるで、腰から下が他人のように感じる感覚。

アンドレと身体を重ねる毎に、彼はオスカルの敏感な箇所を的確に操り、時間をかけて拓き、
快楽の沼に落とされる。

そして

愛される度に、アンドレがどれだけ自分を深く愛してくれているか…

ずっと長い間、見つめて、守ってくれていて…
愛情を注いでくれていたのか
狂おしい程に判る。






しとどに濡れた秘部に、アンドレが腰を当てながら、オスカルの柔らかな胸を片手でほぐし、ブロンドの髪が汗で付く女神のような彼女の唇も塞ぎながら、次第にアンドレの腰は次第に早まり


オスカルとアンドレの、蕩けるような声が混ざり

2人は同時に果てた。







翌朝、アンドレより早く起きたのはオスカル。

耳の良いアンドレに気取られないように、何も身につけないまま素早く寝台から下りたオスカルは、
床に散らばったアンドレのシャツやキュロットの匂いを嗅いだ。

パリへ行く何かの証拠がないかを確かめる為だ。

(私は…何をしているんだ…?…嫉妬か……?)



だが、キュロットのポケットの中にあったハンカチを見つけた時。

ふわりと優しい花の香りがした。



「……なんだ…?香水…か?」
嗅いだ事のないパヒューム。


あまやかで、凛としたトーンが後から残る極上の…

今まで嗅いだ事もない。

王后陛下のご愛用のパヒュームに、負けずと劣らずの…


「誰の香水だ…?」
そう呟いた自分の声に、1つの疑惑が沸き起こった。



「ん…」
その時、アンドレが寝台で寝返りをうつ。

あ、と思ったオスカルは、裸体の冷えた身体をベッドに滑りこませた。

無意識なアンドレが彼女の身体を包む。

男の体温が高い事を知ったのも、アンドレと契りを交わしてからだった。

温かくて、何とも言えぬ男の体臭。
太陽に当たったようなぬくもりの香り。

オスカルは再びその腕の中に包まれてまどろみ、浅い眠りについた。

彼女の寝息。

それを確かめると、アンドレは目を開けた。

床に散らばった、互いの服を見つめながら





「……感が鋭いな…そろそろ話をしようか……。変に疑われる前に…」



アンドレは寝台の横に置いた懐中時計を開き、時間を確認すると、するりとベッドを抜け出し、素早く衣服を着て

「もう少し寝てろ。オスカル。また後でな」

と、囁くと

美しい頬にキスをして部屋を出た。








今日は二人とも非番。



オスカルはアンドレが厩に向かうのを2階の廊下から見つけると


「アンドレ!またパリか?」
背中でその声を聞いたアンドレは

(絶対、誤解してるな…)
と、思いながら振り返った。

(ノエルまであと1ヶ月だけど…もう嘘は付けない感じだ……あのつり上がった眉のオスカルの顔…)



「おはよう、オスカル。一緒に行くか?パリへ」

「……え…?」

アンドレの返事に拍子抜けしたオスカルは、

「行っていいなら、行ってやろうじゃないか」
とトゲのある言い方で返事をする。

アンドレは苦笑い、
「俺たち、喧嘩してるんじゃないんだけど」
と、呟いて

階段を降りてくるオスカルを手招きして馬を連れてきた。

パリは今、あまり穏やかではない。

オスカルが率いる衛兵隊も、巡回をして回る程に、
あちこちで市民が演説を聞いたり、怒号が飛び交う広場もある。
治安が悪い場所は、巡回の時に把握している2人は、一番の表通りの高級品を扱う道を馬を預けて歩いた。
オスカルもアンドレも、質素な服装で市民の中に溶け込んでいる。

先に歩くアンドレに付いて歩いているオスカルは、
こんな高級品を扱う路地を歩いた事もなかった。




「アンドレ、何処へ行くんだ?」

「ああ、早足過ぎた。悪かった。もうすぐだよ」

「この辺でお前は、勉強とやらをしているのか?」

「ああ、そうだよ。ちょっと知り合ってね…ホントはまだオスカルには知られたくなかったんだけど…なんか疑われてるようだし…」

「私は別に疑ってなど…!」

表通りから、左の細い路地に入ると、看板もない、彫刻が品良く美しい扉が現れた。

「ここだよ」

「どんな所なんだ?」

「まあ…入ってみて。…こんにちは、アンドレです」
ドアをノックすると、まだ若い青年が一人現れた。

「やあ。アンドレさん。昨夜、試作で作ってみたのがあるから、とりあえず嗅いでみて下さい。……あ、この方は?」
頭を掻きながら、アンドレは後ろにいるオスカルの腕を引いた。

「俺の恋人」

「え!?この方が?…男性の格好だけど…」

「パリの治安を考えて、男装してもらったんだ」



(まあ、本当は普段から男装だけど、話せばややこしくなるからな…)
「私はオスカル・フランソワです。貴方は?」

「僕は、調香師のピエール・ルカと言います。でも巷ではウビガン・ピエールと言う名で通しています」

「ウビガン……?あのウビガンですか?有名な調香師の」
オスカルは驚いて、アンドレを見た。





~ウビガン~

当時、貴族から最も愛された調香師。
ウビガンはパリの中心街に

ア・ラ・コルヴェイユ・ド・フルール
(花籠)
と言う店を構えていて、奇跡のパヒュームと言われる様々な香水を開発し、様々な貴族階級や、富豪からこぞって注文がくる程に人気の店だった。

「たまたま俺やラサールが巡回中に、酔っぱらいに絡まれてたのを助けたんだ。それで知り合って、ピエールさんがあの有名な調香師だと知って、どうしても作って欲しい香りがあるから、と、色々勉強させてもらってたんだ。ここはピエールさんの自宅兼作業場なんだ」

「そうだったのか…」
オスカルは自分が妙な嫉妬をしていた事を思い出し、アンドレに謝った。

「本当はノエルのお前の誕生日にプレゼントしようと、色々いまは試作段階で、何種類か作っている段階だったんだ…。だから、俺は浮気をしてた訳じゃないよ。ちゃんとピエールさんから調香を学んでたんだから」

「悪かった…。誕生日プレゼントだと知らず…疑って…。私は帰った方がいいか?」
ピエールは慌ててオスカルの言葉を遮った。

「とんでもない!是非とも試作を試して下さい。アンドレさんが、貴女の為にと僕の指導で、一生懸命調香した試作品たちです。良いタイミングでした。直接貴女のイメージを聞けるのですから」

「でも…」

オスカルは、アンドレを手招きして耳打ちした。
(ウビガンの香水は金貨5枚でも買えない代物だぞ?お前に買えるのか?アンドレ)

小さな声で言ったつもりが、ピエールには聞こえていた。
クスクスと笑っている。

「大丈夫ですよ。僕はアンドレさんに助けていただきました。そのお礼で作っているんです。お金は頂きません」

「ええ!?」
逆にアンドレが驚いた。

「金貨5枚は無理だけど…払う為にお金はずっと貯めていたんです」

「まあ、とりあえず、オスカルさんに試作品を嗅いで貰いましょうよ、ね、オスカルさん」

「わかりました…」

ピエールは、4つ小瓶を出してきた。

「全て、貴女を想像して開発したパヒュームです。お好きな香りがあれば良いのですが…」

オスカルは、渡された小瓶を1つ1つ、黙って嗅いだ。

どれも、素晴らしい。
嗅いだ事のないパヒュームだった。

ベルサイユでは、香りのキツイ、むせ返るような香水をふんだんに見にまとった貴婦人や、殿方ばかりで、近衛の時は、気持ちが悪くなるのを我慢しながら夜会の見回りをしていたのを思い出した。

だが。

ピエールのこの作品は、どれも本物の花を直接嗅ぐような、爽やかで甘やかな優しい香りだ。

「アンドレが貴方から教わって…これを…?」
「自分で、愛する人に似合う香りを調香してみたいと言われて、一から十まで教え差し上げました。門外不出の香りも。アンドレさんにだけです。アンドレさんのあの熱意に感銘を受けました」

「オスカル…。どう?気に入った香りはある?」
アンドレが不安そうに聞いてきた。

「うん…。この青い小瓶の香りかな…。トップに柑橘系の香りが立って、次第に甘い薔薇の香りが広がる…押し付ける感じもなく、庭園の朝露の薔薇の花を嗅いだような優しい香りだ」
その表現に、ピエールは喜んだ。

「だが。1つ付け加えるとすれば…」
「付け加えるとすれば?」
ピエールはオウム返しに言った。

「優しいだけではなく、凛々しく華やかなイメージも欲しい…かな…」

「凛々しい…か。オスカルらしいな」

「そうか?でも難しければこれで…」

「いえ!やらせて下さい。オスカルさんのその美しさをイメージした作品を作りたいのです。あと半月お待ち下さい」


半月、と言えば

ノエルの10日前あたりか。



アンドレは
「今日は、オスカルを連れてきてるので帰ります。また近々来ます。ピエールさん」
「じゃあその時まで、調香を考えておきますね」

帰り間際
オスカルは、ピエールに耳打ちをし、
「これは私のリクエストです。宜しくお願いします」
と、微笑んだ。



オスカルとアンドレは、作業場から出てパリの繁華街へと向かい、少し離れた所にあった馬を預けていた所へ戻り、屋敷へと帰って行った。

「アンドレ、いいのか?あの調香師、かなり有名な人物だぞ?私は思いがけない事ですごく嬉しいが…。でも…私はあまり香水の事は詳しくないし…」

「興味もない、って感じだろう?」

オスカルの部屋に二人とも入ると、侍女がローズティーを出してくれた。

それをオスカルはゆっくり飲みながら、
「いや…私に似合うと思うか?香水…」

ああ、その言い方は、肯定して欲しい言い方だ、とアンドレは悟った。
勿論、オスカルに合わせて作るパヒュームだ。似合わない筈もない。

「俺は…、たまにはつけて欲しいと思ってるよ。オスカルに」

「わかった。お前の中にある私のイメージで作ってくれ。そしてノエルの日にプレゼントして欲しい。……私に……」
オスカルは、ティーを飲み干すと、向かいに座るアンドレの背後に回り、後ろから抱きついた。



「いらぬ嫉妬をして悪かった。アンドレ…楽しみにしている」
そういって、アンドレの顎を上に向かせると、オスカルは彼の唇を奪った。

二人のキスは、ローズの味がした。







そして半月後の非番の夜。




アンドレは
「ノエルには早いけど、香って欲しくて」
と、縦長い箱をオスカルに差し出した。

開けると、小瓶ではなく、剣を思わせるようなシャープな形のガラス。
サファイア色の香水瓶。

オスカルはクスクスと笑い
「もう頂いていいのか?アンドレ」
と、言いながら指は嬉しそうに、そのスタイリッシュな小瓶を目映そうに眺めていた。

「お気に召していただければ…。俺の女神」

「ありがとう…では…」

オスカルは、小瓶を開け手首に着けた。

トップに柑橘系の爽やかな香りの後、続けてダマスクローズのような優しい薔薇の中を歩いているような香りに代わり、最後に少しスパイシーな、キレのある花の香りとダマスクローズが混ざり、なんとも言えない好みの香りになっていた。

「これ…アンドレが調香したのか?」

「うん。ピエールさんに教えてもらって。どうだった?」

「ちゃんとリクエストに答えてもらっている。…素晴らしいよ、アンドレ!ありがとう」

「そうか!それは良かった」
2人は抱き合い、口づけを交わした。

「ところで…私も彼に香水を作ってもらったんだ。3日前に届いた」

オスカルは暖炉の上に置いていた小瓶をアンドレに見せた。
「オスカルも?どんな香り?」

「嗅いでみるか?」

小瓶を開け、自分の指に着けると、アンドレの首もとにそっと塗った。

「なんだろう…?花の香りじゃないな」

「私がイメージしたアンドレの香りだ。日向の草原の香りと、男らしさを表現するムスクという香料だそうだ。これでプレゼント交換したい」

「オスカルの誕生日なのに、プレゼント交換って…いいのか?」

「いいんだ。お前を愛して初めてのノエルになる。特別な日だから…」

「オスカル…」


もう一度、熱い視線を交わし合い
腕を絡め、
口づけを交わし

そして寝台へと

2人は倒れこんだ。



「アンドレ」

「ん?」

「今夜はシャンパンを持ってきてくれ。パヒュームのお披露目の祝いだ」


アンドレは潤んだ彼女の蒼い眼差しに引き寄せられ、ベッドの上でまぶたにキスをすると、もう一度立ち上がり

「バレないようにこっそり持ってくるよ。見つかったらワインだ。いいな」
と、オスカルにウインクをした。


「仕方ないな…まあ許す」


オスカルの部屋から出たアンドレを見送って

彼女は、もう一度

アンドレをイメージした香りを嗅いだ。


(これは、お前に寝台を共にする時に付けて貰おうと作ってもらったパヒュームだ。お前の汗と合わさると、より一層、お前の香りが強くなって、私を刺激するかも知れないな…)

ふふ、と微笑み


オスカルは、寝台に戻ると

帰ってくる、その愛しい男の姿を


にこやかに。想像していた。




~✨🌹✨~✨🌹✨~✨🌹✨~✨🌹✨~
(ここから加筆です)





私室に小さくノックの音。

シルクの寝間着に着替えていたオスカルは、
早足で扉を開ける。


「待った?」
にこやかにアンドレが、そこに立っていた。

スルリと扉をすり抜ける。

手にはシャンパンと、グラス2つを持って。

「上出来、アンドレ」

暖炉の傍にある猫足のテーブル
濃紺の長椅子に2人は腰掛け、
アンドレが、調達してきたものをテーブルに置くと、2人は何度目かの口づけを重ねる。



ひとしきり

シャンパンと、語らいで優しく見つめ合うと

オスカルは、アンドレに渡す小瓶の蓋を開けた。

黙ってそれを見つめるアンドレ。

彼女が指の腹にそれをつけると、
その指はアンドレの首筋を辿る。



最初は、あの時嗅いだ暖かな日向の香りだった。

が、次第にアンドレの体臭と混ざると

何とも言えぬ……雄のフェロモンのような香りが立ち上がり…



まるで

日差しを避け、風緩やかに吹く木陰の下で

木漏れ陽を落としたその場所で


互いを絡めとるような

情愛を確かめるような


そんな情景が浮かぶ香りに変わっていった。


「やはりすごいな。あの調香師。私が伝えたオーダーそのものだ」

オスカルはシルクの袖口から白く細い腕を彼の首筋にゆるりと伸ばし、

顔を寄せた。

思い切りその香りを吸い込む。


「オスカル、くすぐったいよ」

「そのままでいろ、アンドレ」


もう一度、香水とアンドレの体臭が混ざった香りを


吸い込む。

野生の雄のフェロモンのような香りに変わってゆくのを

オスカルは楽しむ。


そして、

この香り…。

もう一面は、

懐かしくもあり、また
彼との出会いから、現在までの姿を一気に思い出させる


不思議な、香り。


「そんなにいい匂いか?オスカル」

妙な顔を作り、その白い手を取り、蒼く揺らぐ瞳を覗き込む。

「俺にはよくわからないよ…」

「……だろうな。ウビガンが言っていた。自分の体臭に近い匂いは、日常本人が嗅いでいるので、自分ではわからない。と」

「で?これをいつ付ければいい?」

オスカルは、ふっと微笑む。

「いつでも。…ああ、夜を共にする時も良いな。お前の香りが強くなる…私はお前の香りが好きだからな」

「それは…嬉しいな」


アンドレは、優しく微笑むと、

自分の首筋に回されていた華奢な腕を、ゆっくり掴み、

シーツの波へと

2人は沈んでいった。


時刻は12月26日をとうに越えていた。




翌朝。

衛兵隊は既にノエル休暇にある。

そのため

ベルサイユ宮殿への出向の用向きがあり、

宮殿内のジャルジェ家用の執務室件、宿泊室へと向かう途中。

廊下で、ふくよかな貴婦人4人と、
オスカル、アンドレがすれ違った。

オスカルは少し話しかけられ、貴婦人達に一礼し、
アンドレも後ろに控えめに立ち、うやうやしく礼をする。


麗しく美しい男装の麗人、オスカルと

その従僕として彼女に付き添う、
背が高く、精悍でいて柔らかい物腰のアンドレは、宮殿を出入りする貴婦人達の眼の保養になっていた。


だが。

今日、オスカルがご挨拶をした貴婦人達から

噂が立ち上っていった。

オスカルとアンドレの事で。




2人の知らぬ所で、


(オスカル・フランソワ様の香りが変わったわ)

(どこの調香師に作らせたのかしら)

(まるで霧雨が上がった後に立ち上る、麗しい薔薇の香り、そのものですわ)

(ああ…あの香り。またオスカル・フランソワ様にお会いしたくなりますわ)

(いえ!あの香水をどこで作らせたのかお聞きしたいですわ)


(それより……)

(あの方の従僕のアンドレ。見る度にハンサムになって、オスカル様と歩く姿を見ると、うっとり致しますわ)

(まあ!貴女も?…でも、それより…あの時、アンドレも香水を着けてませんでした?まるで嗅いだ事のない、優しくも男らしい、素敵な香り…たまりませんわ)

(そうそう!あれを私のラ・マンに着けて欲しいわ。どこで手に入れたのかしら…)

(今度、お会いしたら、オスカル・フランソワ様に問い詰めなければなりませんわね)

(そうしましょう。…ああ、でも!あの2人の香りが混ざると、なんだか身体が疼いてしまいますわ。お似合いの2人の香りだからかしら?)



お茶を飲みながら


貴婦人の噂話は、あれからも永遠と夜半まで続いたらしい。





「……ッくしゅん!!」

夕刻。

帰りの馬車の中で、オスカルとアンドレは
同時にくしゃみをしていた。



「くしゅん!!」

「オスカル、風邪でも引いたんじゃないのか?帰ったら、すぐ湯浴みの用意をさせる。俺は、すぐ温かい飲み物を作っていくよ」

「アンドレ。お前だって、くしゃみを何度もしていたではないか。お前こそ、あの寒い宮殿の庭園で身体を冷やしたんじゃないのか?」


「「ハッくしゅん!!」」

2人同時にくしゃみが重なる。




「2人とも…完全に風邪かな?」
アンドレはオスカルの額に手を当てるが、熱はない。




「……もしかしたら…」

オスカルは呟いた。

「え?なに?」

「あ、いや。なんでもない。屋敷に着いたぞ、アンドレ」

「あ、ああ」


オスカルは、暗くなる空を馬車の中から見上げながら


(貴婦人の噂話だろうな。次に会っても、ウビガンに作ってもらったとは、絶対に言わないからな。2人だけの、永遠の香りの秘密だから…)




アンドレの横顔を嬉しそうに見つめながら


オスカルは

もう一度


くしゃみをしたのだった。




さて。

噂話なのか

風邪なのか…




12月26日の夜がやってきた…







fin