Est-ce que je peux t'aimer... 
~あなたを愛してもいいですか……(前編)






ベルサイユのばら
漫画、アニメにもある、
オスカルのブラウスをアンドレがビリビリと破るシーン。
これ、「ブラビリ」と呼ばれています。


ブラビリの後、アンドレからの愛の告白を受けて、自分は、一体彼の何を見ていたのか?
見て見ぬふりをしていた自分に気がついて、
アンドレへの純粋な愛を気づいてしまったあと…

と、言う感じで書きました。
今回はアニメ寄りですが、原作もミックスしています。



私はアンドレ頑張れ!派です(笑)

そして、話が長くなりそうなので、
またもや、前編、後編になりました!

すみません!

声はもちろん

オスカル→田島令子様

アンドレ→志垣太郎様

で、妄想してください♥️


思い切り

R-18指定ですので、お気をつけ下さい。

夜中にこっそり読んで下さいね😁

では、どうぞ♥️



この小説は、pixivにて2023年7月29日に掲載したものを、一部改正、修正してアメブロに掲載しました。








~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨


無情にも布を引き裂く音が

オスカルの寝室で響いた。


その

2人の瞳は

動揺に恐ろしく揺れている。











「それで…私をどうしようと言うのだ…」




ああ、そうだ。

私は、あの時
アンドレにそう言うしかなかった。




……あの時は。





愛している!

と、告白され、

動揺し、

思わずフェルゼンの名を口に出した。

あれは…

あの言葉は。


アンドレを傷つけてしまった。


私のブラウスは、私のその思わず口にした男の名を遮るように、

無残にも引き裂かれた。


その夜はずっと眠れなかった。
多分、アンドレもそうだっただろう。





長い長い間、ずっと彼は、私の事を守り、愛していてくれていた。


ああ。
そうだった。

あの時の笑顔も。

あの時の辛そうな横顔も。

アンドレは、己の感情を胸の奥に圧し殺して。



では、私は?

私はどうだったのだ?

身分の隔たりなく、主と従僕と言う表向きの間柄でもなく。


いや。そんな事を彼に思った事もなく、



私はずっと彼に守られてきたではないか?





ノルマンディーの海辺を歩きながら。

私はずっと、胸の苦しみを拭いきれずに、

ただ。

アンドレの居る屋敷から逃げた事を後悔した。



向き合えば…ちゃんと向き合えば…良かったのに…。

近衛を辞め、ノルマンディーの別荘に来てしまった自分に、様々な思いが湧き、
何故、ちゃんとアンドレと向き合えなかったのかを…。

そう。

後悔、していたのだ。

ノルマンディーに着いて翌日の朝。




屋敷からここに到着するまでも、ずっと

向き合わずに逃げた己に、囁いていた。

何故、ちゃんと告白をしたアンドレから逃げたのだ?と。
あんな事をされたからか?
いや、違う。



これから10日間、ノルマンディーに滞在する。

それでいいのか?

何事もなかったように、ノルマンディーから帰るのか?

それが出きるのか?


「私は記憶にもとどめない」

そう、言ってしまったのだ。


愛してくれている、あの温かい瞳に、冷たくも
そう告げてしまったのだ。

「愚かなのは…私の方だ…」

朝焼けを見つめながら、少し肌寒い海辺を

コートの襟を立てながら、私は別荘へと歩いた。







「早馬?」
別荘に住み込みで働いている中年の夫婦が、私に
早馬で手紙が来たと、渡された。

見ると、母上からだった。
「珍しいな…母上が早馬を出してまで私に…」

日付を見ると、私がノルマンディーへと向かった日付だった。

自室に戻り、暖炉の前で手紙の封を切った。






「我が子、オスカルへ。
貴女が、ノルマンディーに向かった朝、アンドレに言っていた言葉を、私は聞いてしまいました。
アンドレに、それとなく事情を聞いてみようと試みましたが、アンドレは、申し訳ありません。何でもありません。の一点張りでした。
それでもアンドレの顔は暗く、悲しみが溢れていました。
貴女がノルマンディーへと向かった先を、アンドレは立ち尽くして、ずっと悲しい顔で見つめていたのです。私は、もしかして…と、悟りました。母も女です。アンドレがずっと自分の縁談話を断り続けて、貴女をずっと守りたい、とお父様や私に告げた時に、アンドレは娘に深い愛情を抱いてくれているのだと。私はアンドレが小さな時から、貴女と分け隔てなく、母親代わりとして育ててきました。賢くて、素直で、明るくて、誰にでも優しい青年に育ってくれた事に、母は…貴女の母として、アンドレに感謝をしています。貴女もそうであるよう、私は願っていますよ。
愛される事は、人を強く優しくしてくれます。
わかりますね。
母の私がそうでしたから。


追伸。この手紙が付く日には、アンドレはそちらに着くでしょう。ちゃんと2人で向き合う時間が必要です。私がアンドレをそちらに向かわせました。」


「……え……?」

アンドレが……ノルマンディーに…来る…。

私は母の本心が書かれた手紙を震えながら読んだ。




そして、
手紙を文箱に入れ、冷たい風が舞う窓の外を見つめた。

住み込みの婦人が、昼食をお持ちしましょうか?と尋ねて来たので

「2人分あるか?なければもう1人分作って欲しい。屋敷からもう1人ここに来るそうだ」
と、私はずっと外の景色を見つめながら頼んだ。


その1時間後。

二階の自室で、ずっと外を眺めていた私の目の中に。

馬から降りて、厩に向かうアンドレの姿が映った。

茶色いコートに身を纏い、こちらを見上げる仕草をしたので、私は思わず窓辺から身体を隠した。

何故?隠すのだ?

気まずくなるのはわかっている。

でも。

私は。
いや、私達は、ここで、乗り越えなければ

一生、後悔をする。


私は、アンドレが来た事を知らずに、再会し、

笑顔で


どうしたんだ?

と、聞けばいいんだ、と自分に言い聞かせた。




ドアをノックする音が聞こえたのは、
夫人が、2人分の料理をテーブルに並べている時だった。

「入れ」

私がそう言うが、ドアは開けられない。

昼食を用意し、退席する夫人がドアを開けた時。

「おや、アンドレじゃないか。屋敷からもう1人ここに来るってのは、アンドレだったのかい?」
と、夫人に言われ、優しい笑顔で
「お久しぶりです」
と挨拶を交わしていた。


扉の向こうに去る夫人を見つめながら、こちらを向かない。

私は思いきってアンドレに話しかけた。

「アンドレ…寒かっただろう?昼食が丁度来た所だ。ここは屋敷じゃない。一緒に食べないか?」

出来るだけ明るく、そう告げた。

「…え?俺が…?一緒に?」

一度閉めたドアを開けようとしたアンドレに近づき、彼の手を…。冷たくなっていた手を握った。

「こんなに冷えた手をして。ワインもある。温かい食事を一緒に食べよう」

「…いいの…か…?」

身を引こうとするアンドレの手を引き、テーブルに座らせた。

「1人で食事をするのは、味気ないものだ。アンドレが来てくれて良かった」

「オスカル…」

「ん?」

私はワインを開けながら、向かいの顔を見た。

「奥様から、こちらに行くようにと、これを預かったんだ…」

アンドレは布にくるまれたバスケットを見せた。

「そうか。なんだろう?開けてくれないか?」

「ああ…」

開けると、tarte à la citrouille(カボチャの包みパイ)が入っていた。

「奥様から頼まれて、おばあちゃんが作ってくれたんだ。これをノルマンディーに持って行って欲しいって奥様に言われて…」

「私が急にノルマンディーに行ったから、母上が心配されたのかな。はは。私の好物だ」

「ああ」

「アンドレも好きだったな。温めなおしてもらって、ティータイムにでも食べよう」

「俺は…頼まれ事が済んだら、屋敷に帰るよ」

「アンドレ……。とにかく昼食をゆっくり食べよう。……話したい事がある」

「俺は…ない…」
アンドレが私を避けようとしているのが痛い程分かる。
「後で、読んで欲しいものがあるんだ。…帰らずにそれを読んで欲しい」

「……」

私達は、ぎこちない世間話を少し交えながら、昼食を済ませた。



私は文箱から、その手紙を出してアンドレに
読んで欲しい。と渡した。

暗い顔であまり目を合わせようとしない彼の瞳が、その母上が書かれた文面を読むと、次第に目を見開いていた。

アンドレの手が、小刻みに震えている。

私は、向かいの椅子に座り直した。

(私がこの場から逃げてはならない。……私は、アンドレが必要だ。アンドレがいない世界など、私は考えても見なかった…。)

「アンドレ…。母上の書かれている事を読んで…私は思った。私は……、お前の想いにすら気づかなかった愚かな人間だと」

「それは違う」

「私にとって、お前は幼なじみで心許せる唯一の人間だと。ずっとそう自分の中で思っていた」

「オスカル…」

私は、グラスに残っていたワインを、クイッと飲み干した。
見ればアンドレのグラスは、手付かずのままだった。

「アンドレ……。母上の言う通りだ。私は、お前なしでは生きて行けない…。何故、もっと早くそれに気がつかなかったのか…。お前を苦しめていたのは……私…」

「違う!オスカル、違うよ。お前のせいじゃない。俺の身勝手な思いだ」

身勝手……?
お前は、その自身の想いで、私を必死にあらゆるものから守り続けていたではないか。
私のせいで、左目を傷つけられ…。


アンドレの視線は、下を向いたままだった。

もうすぐ、食器を下げに人が来る。

私は立ち上がり、アンドレに言った。


「少し寒いが…、海岸まで遠乗りに行こう、アンドレ。……私と一緒に」

「オスカル…」

「あの時私が言った、記憶にもとどめない…、その言葉は撤回する。私は間違っていた」

椅子から立ち上がらないアンドレに、私は手を差しのべた。

「行こう。共をしてくれ。お前にしかこの先も、こんな事は頼めない。今回の事で、それが痛い程判った…さあ、手を…」

私の手を見つめていたアンドレが、ゆっくり立ち上がり、私の腰を引き寄せた。

「…あ…」
思わず、あの時の感覚を思い出す。
だが、ここでまた私は、漸く気づいた己の感情から逃げてはならない。
私は向き合うと決めたのだから。

「オスカル…」

「アンドレ、私はまだ恋愛とやらに、どうやらまだ未熟だ。だが…、お前は私には絶対に必要だし、離れるなんて考えても見なかった。この感情が何なのかも、私は自分の事なのに、気づきもしなかった。だから、ノルマンディーで心の整理をしようと1人で来たんだ…」
私は、アンドレの潤んだ目頭を拭った。
そのまま、彼の頬に両手を添えて

私から、心を込めて口づけた。



しばらくそうして、唇を離す。

「アンドレ、遠乗りに行こう。もうすぐ食器を片付けに人が来る」

黙っているアンドレの手を引き、私は微笑んで彼を見上げた。




午後の海岸線は凪いで、波も穏やかになっていた。

潮風に当たりながら、私達は時に馬を走らせ、時に歩幅を合わせるように馬を歩かせた。


1時間程、遠乗りをした後、海岸線の領地内にある、一軒家のような素朴な小屋に向かう。
遠乗りした後に使う、休息場でもあり、仮眠室でもあった。
馬たちを小屋の外に繋ぎ、水を飲ませる。




「少し休もう。少々疲れた」
と、鍵を開けようとして、後ろのアンドレに振り返る。

躊躇った顔。

「アンドレ、もうそんな顔をするな」

「だが…」

「ここは、誰も来ない。少し話をしよう」




アンドレが小屋の中にある暖炉に火を灯すと、部屋は少しずつ暖かくなってきた。

それでもやはり、海沿いにあるこの小屋は、普段は誰も使わないせいか、煉瓦が冷えきり
中々、暖炉の暖かさが全体に行き渡らない。




私は、隣の部屋から大きな毛布を見つけ、
「暖かくなるまで、これにくるまろう」
と、広げて、暖炉の前の長椅子に腰かけて、火を調整していた、アンドレの背中に掛けた。

「オスカルは?」

「私も一緒にくるまる」
そう言って、アンドレの隣に座り、毛布を2人で被った。
だが。

アンドレは、私との距離を開けようとする。
「アンドレ、間が空くと寒いではないか」

「…また、罪を犯すかもしれない。お前を傷つける…」

傷ついているのは、アンドレ。お前だ。




「アンドレ…あれは、罪か?罪だったのか?違うだろう?」

「……」

「アンドレは、私を本気で愛している、そう言ってくれたのだ。それを、記憶にもとどめない、と言ってしまった私の方が罪深い…」

私は薪を一つくべた。

ボウッと一瞬、部屋が明るくなる。

「母上が書いた手紙を読んで、私は自分の中にある本当の自分に気がついた……。私は、アンドレが次から次からくる縁談を断ってでも、私の傍に居ようと決心してくれていた事実を知らなかった。私は…
愚かだ。そしてその事実を知って、見えぬ縁談…相手に嫉妬を感じた」

「オスカル…」

同じ毛布の中にくるまり、横に座るアンドレに微笑んだ。

「私は…どうあがいても、女だ、と……思い知らされた…」

「オスカル…」


アンドレの顔の半分が、暖かいオレンジ色に染まる。
アンドレから見れば、私もそうだろう。

アンドレのその顔は、美しく、端正で
改めて見つめても、ハンサムな青年だった。


母の手紙を思い出す。


「愛される事は、人を強く優しくしてくれます。
わかりますね。
母の私がそうでしたから」







「アンドレ…今でも私を愛していてくれているか?あんな酷い事を言った私を……」

少し間を置いて、アンドレは言った。



「俺は、ずっと昔からお前だけを見てきた。お前だけを愛している。これからも……それは変わらない」

ああ、その台詞。
まるで、神前で誓いを立てる台詞のようだ。

私は、アンドレをずっと見つめながら、知らずと涙を流していた。

「アンドレ…さっきもお前に言ったが…。
私はまだ恋愛とやらに、どうやらまだ未熟だ。
けれど…私には、お前は絶対に必要だし、離れるなんて考えても見なかった。この感情が何なのかも、私は自分の事なのに、気づきもしなかった…。これは…愛…なのか…」
アンドレは黙って聞いている。



「これが…愛と呼ぶ感情だったのか…。甘く疼く想い…。名を呼べば切なくなるほどの…。これが…?」

「ああ。そうだよ。それが…愛だよ、オスカル」

目の前のアンドレの眼に、キラリと光るものが見えた。



私は…想いのままに。

目の前の愛しい男の唇に口づけた。










どのくらいたっただろう。

暖炉の火は消え掛かり、寒さで目を覚ました。
私はアンドレの腕の中で眠っていた。
しっかり毛布とアンドレにくるまれていたが、部屋はもう暗く、寒さがぐっと身に染みた。

私は…ブラウスを着ていた。
身をあずけて、ここで愛されても構わない気持ちでいたのに。

私が身を起こすと、アンドレも目を覚ました。

「オスカル…帰ろう。これ以上遅く帰れば騒ぎになるよ」
私の肩にアンドレの手のひらがあった。

温かく、大きな優しい手。

あの日とは違う。

私は安心した。

「うん…。帰ろう。寒い…。お前の馬に私も乗る。2人で乗った方が温かいだろう?」

「判った…」






別荘に着いた頃には、もう真っ暗で。
管理人の夫婦は、探しに行こうと思っていた、と慌てた声で言う。

「すまなかった。心配かけて。湯浴みをしたいんだが…頼めるか?」

「もう、御用意しておりますが…ここには侍女はおりませんが…」

「ああ、構わないよ。1人で出来る。もう子供ではないからな。心配しなくてもよい」

「畏まりました。では湯浴みがお済みの頃に、夕げをお持ち致します。アンドレと一緒で宜しいでしょうか?」
私は、後ろにいるアンドレを見ながら
「もちろん」
と言い
「アンドレも、海辺を走ったから、身体を冷やしている。彼にも湯浴みの用意をお願いしたい」

「もちろんでございます。海風はベタベタ致しますからね」

「ん?そうなのか?」
私はアンドレの髪を触った。

顔を近づけ、髪の匂いを嗅いだ。

「本当だ。潮の香りがするな」

「ベタベタなんだろう?」
アンドレが拗ねたような口振りで聞く。



「私もだ。2人ともだ。温かい湯に浸かって、身体を休めよう、アンドレ。あと、ペコペコだ」




私たちは、顔を見合わせて笑った。

久しぶりに…。











後編へ


続く