à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~⑥







原作無視の、現代版オスカル、アンドレたちの物語その⑥です。

すみません!書いてたつもりが、アンドレの
savonの店名を全く書いてない事に気がつきました!
アンドレの店名は
ブーケ ド サボン
bouquet de savon です。

で。
この先、2人はどうなるのかな?


えーと。
今年、2023年1月から○○年以上ぶりに絵の復帰をした時に、前々から描きたかった
オスカルがスーパーモデルだったら…
あちこちの女性誌の表紙を飾り、ヨーロッパだけでなく、世界中にファンがいるようなスーパーモデルだったら…と、描きためたオスカルの絵をモチーフに、春前から少しずつ構想をしていました。

詳しくは、プロフをご一読くださいませ

そして
アンドレの職業は…
実は、私の個人事業の内容です(笑)
一番今、私が詳しく知っている職業であり、大好きな作業、夢のある事業だと確信しているから。
アンドレに、この仕事をやってもらおうと思いました。
なので、アンドレが仕事の説明をしているセリフは、私が言っている事と全く同じです(笑)

私も、石鹸のオリンピックと呼ばれる
ソーパーズ カップで、2度優勝しています。
ただ、コロナ禍になってから出店を控えて、tweetでオーダーを受けています。





ああでも。
石鹸の他に、ハンドメイドアクセサリーを作ったり、客寄せの為に占い師もしているトコは小説のアンドレとは違うかな(笑)

そして

少し長編にしたいなと思います。

今の私だから、書ける所まで
気長に書いてみようと思います。

そして!

いいね。や、
嬉しい、楽しいコメント頂き、本当にありがとうございます!
尻尾振って喜びます♥️

どうぞよろしくお願いいたします♥️


~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨







「それ、どこで買ってきたんだよ…」



アンドレは、週末の蚤の市の会場で、キャンピングカーから荷物を出しながら、呆れていた。


前髪パッツンの真っ黒なボブのウィッグ。





そして
サングラス。
アンドレのTシャツを着て、裾だけおへその所で玉結びし、足の長さを強調するような、真っ黒な細いスキニーパンツに…

足だけは包帯を両足巻いてるので、アンドレの大きめの、ビーサン。


ここは
土曜日のヴァンヴの蚤の市。





他の蚤の市と違い、様々な高級ブランド品や
ビンテージの品揃えが豊富で、客層も品が良い。


アンドレのキャンピングカーのsavonの店
bouquet de savon も、高級な材料で作った
savonが人気だった。




「ボブ、似合うか?」
キャンピングカーから少し顔を出し、小さい声で聞くオスカル。

「んまあ、似合うけど…。ブティックでバカみたいに大量買いした服は?」


彼女は、石油王からもらったという、ブラックカードで大量に買っていた。

「寝室に置いた。スキニーだけは履いてるけど?」

「…でさ。なんで俺のTシャツ着てるの?」

「savonのいい香りがするから」

あ、そういう理由か。
そう言う所が可愛いとは思うけど…。



この変装なら、あのオスカル・フランソワだとはわからないだろうな…。

でも、かなり目立っている…。

「頼むから、キャンピングカーから顔を出すなよ?ベッドとトイレと冷蔵庫はあるから、何にもするなよ?ランチは買ってくるから。あと何が欲しい?」

「新聞とファッション雑誌」

「オスカルが載ったやつ?」

「多分、全部に私は載ってる。私を見るんじゃなくて、他のモデルの写真を見ておきたいんだ。ライバルだから」

ふーん…よくわからないけど。

「じゃあ、今から買ってくるよ」
アンドレは、
只今、外出中のプレートを看板に掲げ、
フードエリアと、近くの本屋に向かった。


蚤の市は賑わい始めた。

「あらー、いまbouquet de savon、外出中なんだ」

残念そうに年配の女性の声がした。

キャンピングカーのベッドで携帯を見ていたオスカルが、気になって、少し顔を出した。



「あら?お店の方?見ない顔ね」

「おはようございます。マダム。いまアンドレはランチを買いに行きました。すぐ戻ります」

「そうなの?じゃあ座って待ってようかしら」

「そこのテーブルにお掛けください」




オスカルは、作り方を教えてもらったミントティーを作り、足を気遣い、ゆっくりとキャンピングカーから降りて、マダムの前にティーを置く。
「まだ不慣れなので、美味しいかは保証できかねますが…」

「ありがとう。いただくわ」

アンドレはまだ帰って来ない。
どうしたものか。
顧客っぽいから、少し付き合うか。


「貴女…アンドレの恋人?」

「え!?…そうみえますか?」

「サングラスしてても、貴女が美人なのは判るわよ?アンドレも漸く昔の恋の呪縛から抜け出たのね」

「昔の恋の呪縛?」
ミントティーを飲みながら、常連のマダムは続けた。
「私は彼とは長い付き合いでね。よく知ってるの。
アンドレは、学生の頃、フェンシングの選手だったのよ」

ああ、それは壁に飾っていた剣の事だ。
「彼から聞いた話なんだけど……。その時、ものすごい強い女性の選手がいつもトップに居て、メダルも彼女の元へいくばかりで、アンドレはフェンシングを諦めたそうよ」

へえ…そうなんだ。

「でも、アンドレはね、その(仮面の女神)の事が本当は好きだったの。で、わざと休憩中に飲み物を渡したり、タオルを渡したり、試合で負けてあげたりしてたの」

「仮面の女神って?」

「あら、知らない?その女性、試合の時も、それ以外も、会場にいる時は、いつもマスクを外さなかったそうよ。だから誰も彼女の顔は知らないの。
金メダルを何個も取っても外さなかった。有名な話よ」

聞いているうちに、オスカルに少し悪寒がしてきた。
が、まだ聞いてみたい話だったので、我慢して黙ってきいた。

「で、その仮面の女神は、17歳で突然引退して失踪。アンドレがフェンシングを止めて暫くしてから、だったかしら」

「その人、なんで止めたんですか?失踪って?」

「それが誰もわからないのよ。噂では、彼女のお父様、世界フェンシング連盟の会長のレニエ・ド・ジャルジェ氏から、ある人と結婚をするようにと無理矢理引退させられそうになって失踪したとか
…おほほ、もう10何年も前の話よ?」



オスカルは、レニエの名前を聞いて、震えが止まらなくなった。




「ごめん!お待たせ!買ってきたよ!……あ、大丈夫か?オ…っと、ミシェル」

ミシェルとは、オスカルの偽名だ。




「う、うん…キャンピングカーの中に戻る」
オスカルは、びっこを引きながら車に向かった。

「マダム。savon出来てますよ。今からご用意致しますね。あとご友人から頼まれた2件の商品も」

「merci!貴方も隅に置けないわね。素敵な人と蚤の市に一緒に来るなんて」

「あ、いえ。友人です」

「あら、そうなの?じゃあ、進展するように祈るわ」
アンドレは苦笑いをしてマダムを見送った。




オスカルの様子が気になって、キャンピングカーに入ると、ベッドのブランケットを被り、少し身体が震えていた。



「オスカル?どうした?何かあった?」

「アンドレ…」
ブランケットをずらすと、ウイッグが取れ、豊かなブロンドの彼女が不安な顔で見つめていた。
息が荒い。


「オ…オスカル!? 大丈夫か!?発作がでたか!?」

「わからない…。わからないけど…マダムの話を聞いて…」

「マダム?何を話したんだ?」

「アンドレ…胸が苦しい…」


これは…。あの時と同じ症状だ。
何で昼間にフラッシュバックが出たんだ?
「オスカル、すぐ片付けるから、帰ろう」

「でも…」

「蚤の市なんて、いつでもある。心配するな。お前の身体が優先だ。帰ってラソンヌ先生に診てもらおう」

「アンドレ、その前に行きたい所がある。そこだけは連れてってくれ」

「どこ?」

「サン・ルイ島の私のアパルトマン。取りに行きたいものがあるんだ」

「わかった。俺が取りにいく。場所を教えて?」

あわてて片付けながら、アンドレはキャンピングカーの中にいるオスカルに話した。
「鍵と場所。あと、何を取りに行けばいいかを」

「…わかった」
力ない声がする。

ランチ用のサンドイッチをオスカルが寝ているベッド横にある小さな冷蔵庫に入れて、車は出発した。



「すまないアンドレ。せっかく来たのに…」

「大丈夫だよ。蚤の市はいつでもあるから。じゃあアパルトマンと病院に行くぞ?」

運転を優しくしながら、アンドレは出来るだけ急いだ。




アンドレは、オスカルのアパルトマンの一つでもある。サン・ルイ島に向かった。
鍵を開けると、シンプルだけど豪華、全て白を基調とした部屋。
ビックリする位広くて、庭にはプールもあった。

「しかし…何でパスポートなんだ?…あ、ここのクローゼットの引き出しか」

オスカルのパスポートが出てきた。

辺りを見渡すと、本当に生活感がまるでない。

こんなアパルトマンをあと三つも所有してるのか。
やっぱり俺とは違う世界。






「アンドレ、あったか?」

「うん、これ」
横たわるオスカルにパスポートを見せた。

「どうするんだ?これを」

それに答えず

「アンドレ…さっきのお客から、フェンシングの話を聞いた。少し思い出したんだ。あの時の感覚を」

「え!?」

オスカルの肩が震えていた。

アンドレはエンジンをかける前に、キャンピングカーの簡易ベッドで震えているオスカルの背中をそっと撫でた。



「アンドレ…助けて…」

「オスカル?どうした?」
眼が怯えている。
力ない声で、震える声でこう言った。

「ああ、お父様、やめて下さい…私は結婚なんかしたくない…どうして…私に自由を下さらないのですか…」


あのセリフだ。
例のフラッシュバックだ。


アンドレは彼女を落ち着かせるように抱き寄せ、ゆっくり、そして優しく背中を撫でた。

「オスカル、横になれるか?今からすぐ病院に行くぞ」
その問いに、苦しそうに小さく頷いた。

キャンピングカーのエンジンが掛かり
アンドレは自宅一階のクリニックへと向かった。








「そうですか…フラッシュバックの原因の話を聞いて、思い出されたのですね…」

横たわるオスカルがラソンヌ医師に、はい、と小さく答えた。
「今のご気分は?」

「頭の整理がつきません。私は…選手時代の事を全部忘れていました」

「それは選手時代に衝撃な体験をされたから、貴女の心から、自分で消し去ったんです」
「…………」

オスカルのベッドの横にアンドレが座り、彼女の左手をずっと握りしめている。




記憶の断片を思い出した彼女の苦しみ。
それが自分の苦しみのように辛かった。
彼女は独りでずっとこのフラッシュバックに耐えてきたんだから、と。

「ふむ…。足も痛みはだいぶ楽にはなっているようですし、少し気分転換できる環境に身を置いて、溜め込まれている感情を整理できれば…」

先生の言葉に続けて、オスカルが言った。
「私を解放してくれたのは、引退後に逃げるように向かったセドナでした。私は…セドナで気持ちを切り替えたい」

「セドナですか。それは良い環境だね」

「先生、アンドレとセドナに行きたいんです。まだ足も完全ではないし」

「え!?俺と?」

「………無理か?」
オスカルはアンドレの顔をみた。

蚤の市の客は、メールで連絡すればなんとかなるか…。発送すればいいんだし。
オスカルの休暇もあと3週間はあるし…。




「アンドレ。セドナに行く理由があるんだ。お前と行く理由が…」

「よくわからないけど…。オスカル独りで今は動けないから。一緒に行くよ。うちの店の事はなんとかなるから」




ラソンヌ医師は、ゆっくり頷く。
「アンドレさんも、良い休暇になるでしょう。ずっと仕事ばかりの人生に、新しい風とスパイスは必要ですよ。新たな発想も見つかるかも知れない」

オスカルは黙ってアンドレを見ていた。
「明後日の飛行機を手配するよ?それで良い?」
オスカルは、コクリと頷いた。








アンドレはオスカルと5階の自宅に戻ると、アンドレは工房に入り
顧客に月末まで急遽店を休む旨を詫び、制作は7月に入ってからさせて頂きます。と一斉にメールをし、手元にある注文商品を、発送手配した後
しばらく使ってなかったスーツケースを2個、クローゼットから引っ張り出した。

なぜか、黙って荷物をまとめる二人。

さっきの
(お前と行く理由があるんだ)

の、セリフがリフレインする。

理由…って、どういう意味かはわからない。
けど、セドナに着いたらきっとオスカルは話してくれるだろう。

今はあれこれ、彼女に聞いちゃいけない。
彼女がやらないと気が済まない事を、一つ一つ、クリアして行けばいいか…。


きっと、そこに答えがあるんだ。



「ちょっとマネージャーに電話してくる」

「ああ」

「あ、晩御飯は昼間のサンドイッチでいい」

「じゃあ、温かいスープを作るよ」


オスカルは部屋を出た。


アンドレは小さくため息をついた。






思い出した。俺も。

顔の見えない仮面の女神と呼ばれていた少女に憧れていた事を。
顔が見えなかったから、恋心とかとは縁遠い感情だけど。
いつも、試合会場でひとり孤独に座る姿が痛々しかった。
オスカルの父親が、フェンシング連盟の会長
レニエ・ド・ジャルジェだとは知らなかった。



多分、当時の誰も知らなかった。

きっと隠されていた理由も、オスカルは話してくれるんだろう。
話したくないなら、それでもいい。

彼女が過去を乗り越える、その手伝いを少しでも出来れば、それで良かった。



「マネージャーに話した。モデルになる前の過去を思い出した事を。あと、セドナに行く事も」

「問題ないんだな」

「足の事で、ちゃんと休暇をもらってる。マネージャーは足の治療だと思ってるから問題ない」

「俺と行く事も…」

「……セドナに着いたら、色々話さないといけない事がある。アンドレに。だから来てくれ」
思い詰めたその素顔。
目が潤んでいた。




その夜。

アンドレの寝室で、2人は並んで横になった。

いつもなら、にこにこしながらオスカルから寄り添ってくるのに。
横顔を見れば、ずっと天井を見つめている。


「オスカル…?明後日の朝早く出発だ。今日も、色んな事が起きて大変だったろ?」

「……うん…」



「オスカル…おいで…」
アンドレは少し離れていた彼女を呼び、毛布を上にあげて、ここに入りな、と笑う。

その笑顔に、オスカルは涙を溜めて、アンドレに抱きついた。

「思い出した事、辛かったろう?話したい事、話せない事もたくさんある筈だ。セドナで言いたい事だけを言ってくれればいいよ」

「…ありがとう…」

オスカルがアンドレのパジャマにしがみつく。
その手を取り、アンドレは額に優しくキスをした。
オスカルは握りしめてくれるアンドレの手の甲に口づけた。



華奢な身体を抱き寄せたまま、2人はゆっくりと



眠りに着いた。






サイドテーブルに開かれたページには、







スーパーモデル オスカル・フランソワ 失踪か!?

の見出しがあった。








⑦話に続く