à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~④




原作無視の、現代版オスカル、アンドレたちの物語その④です。
さあ、この先、2人はどうなるのかな?

えーと。
今年、2023年1月から○○年以上ぶりに絵の復帰をした時に、前々から描きたかった
オスカルがスーパーモデルだったら…
あちこちの女性誌の表紙を飾り、ヨーロッパだけでなく、世界中にファンがいるようなスーパーモデルだったら…と、描きためたオスカルの絵をモチーフに、春前から少しずつ構想をしていました。

詳しくは、プロフをご一読くださいませ

そして
アンドレの職業は…
実は、私の個人事業の内容です(笑)
一番今、私が詳しく知っている職業であり、大好きな作業、夢のある事業だと確信しているから。
アンドレに、この仕事をやってもらおうと思いました。
なので、アンドレが仕事の説明をしているセリフは、私が言っている事と全く同じです(笑)

私も、石鹸のオリンピックと呼ばれる
ソーパーズ カップで、2度優勝しています。
ただ、コロナ禍になってから出店を控えて、tweetでオーダーを受けています。

ああでも。
石鹸の他に、ハンドメイドアクセサリーを作ったり、客寄せの為に占い師もしているトコは小説のアンドレとは違うかな(笑)

そして

少し長編にしたいなと思います。

今の私だから、書ける所まで
気長に書いてみようと思います。

そして!

いいね。や、
嬉しい、楽しいコメント頂き、本当にありがとうございます!
尻尾振って喜びます♥️

どうぞよろしくお願いいたします♥️


この小説は

2023年5月15日にpixivにて掲載させて頂きました。






~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨



オスカルの叫ぶ声。

工房の仮眠ベッドで横になっていたアンドレは、飛び起き、寝室のドアを思い切り開けた。




「お父様!いやだ!」
「私を何故、自由にさせてくれないんですか!?」
「いやです!…誰か……誰か、助けて…」

次第に涙声に変わる。


オスカルはきつく目を閉じ、震えながら
助けて…と譫言(うわごと)の様に言っていた。



「オスカル?…おい!オスカル!大丈夫か!?」

「誰か助けて…」

力なく細い腕を空にあがきながら助けを乞うていたオスカルの、その腕を掴み、

アンドレは無意識に、オスカルを抱きしめる。




まるで、

大丈夫だ。
大丈夫だよ。

とあやすように。


オスカルが落ち着くまで、アンドレはこうしていようと、オスカルの細い背中をさすりながら

そう、思った。








窓から鳥たちの鳴き声が通りすぎる。

カーテンの向こうが明るくなり、車の音も聞こえ出した頃。

オスカルは、ゆっくりと目を覚ました。
でも、まだぼんやりとしている。


何かに包まれて、久しぶりに安心し、ぐっすり寝たような感覚。


背中が温かい…

腕枕で寝ている…

優しいsavonの香り…

もう一人の静かな、寝息。




目を開けた。

目の前に白地にストライプの生地が見えた。

(……え…!?え!……なに?)

横たわったまま、上を見上げると

自分を抱きしめたまま、寝ているアンドレの…


(寝顔!!)



オスカルは、ガバッと起き上がり、自分の身体を見た。
ブカブカの濃紺のシルクパジャマ。

着ている。


アンドレも、パジャマを…


着ている。


(何がどうしてこうなったのか?何で一緒のベッドで寝ているんだ…)

「ん…」

オスカルがアンドレの腕からすり抜けて起き上がった感覚で、アンドレは目を覚ました。

「アンドレ」
「オスカル」

2人の声が重なる。

先を続けたのはオスカル。

「こ、これは、一体…どういう…」
動揺を抑えながら、尋ねる。

「おはよう…え…?覚えてないのか?」
「何を」
「昨夜、急に叫び出したから、俺は慌てて…」




あ。またあの夢だ。
あの夢を見たんだ。

あの夢は、たまに見る。
でも、その時は必ず自室で独りだから、翌朝は酷く疲れて、寝覚めも悪い。

だが、今日は?

温かいぬくもりの中に包まれて、なぜか安心して、そのまま…

「アンドレ。私は叫んでいたのか」

アンドレも起き上がった。
「そう。…と、言うか、すまない。お前を安心させようと背中をさすっていたら、俺も…寝てしまったみたい」
「アンドレ」
「え?」
「ありがとう。…熟睡できた」

「俺が隣に寝てたのを、責めないのか?」
「責める理由がない。こんなに熟睡できたのは久しぶりだ。……ありがとう……痛ッ」
オスカルは両足に巻かれた包帯を見て思い出した。
昨夜の怪我を。


「まだ、痛いよな。下のクリニックの先生に電話して往診に来てもらおう」
「だけど…」
「俺が信用している医師だし、それにこのアパルトマンの管理人は俺だから。大丈夫。口は固い」

アンドレはベッドから起き上がり、何か作ってくるね。と寝室から出ていった。

オスカルは呆然とそのドアを目で追う。


私は他人と距離をずっと置いてきた。
仕事仲間も、スタッフも、ボスも。
モデル仲間も。
それで自分の心のバランスを保ってきた。


その私が…

彼の腕の中で熟睡した。

それが出来た。


何故?


理由が自分でもわからなかったが

わかった事がひとつ。


あの彼の匂い。
何処か懐かしかった。
知っている匂いのような…。

あと、彼の作るsavonの優しい香り。
彼のパジャマからもずっと香りがしていた。
抱きしめられた間、ずっと。

それは、彼そのものに感じた。






アンドレと朝食を食べ、ハーブティーを飲みながら、オスカルは、
アンドレがクリニックに電話をしているのを見ていた。

「判りました。朝10時の診療開始前に来て下さるんですね。じゃあ9時半…あ、もう少し前でもいいですか?よろしくお願いします。すぐですね」

オスカルは昨日、アンドレがアイロンをかけてくれたタイトスーツを着ているが、足は素足だ。

アンドレはそれを気にかけていたが
「どうせ、両足が怪我している。別に素足でも恥ずかしくない」

と、オスカルは平然と言う。



なんと言うか…
あっさりしてるな…。
昨夜のあの時と大違いだ。
アンドレは苦笑いを隠れてした。

「オスカル、もうそろそろ先生が上がってくるから」

「わかった」



アンドレの管理するこのアパルトマンの一階には、ラソンヌクリニックと、セレクトショップのブティックが入っている。

先生がアンドレの部屋に入って、オスカルを診察、治療している間に、一階のブティックまで下りて、開店前のオーナーに頼み込んで、ストッキングを買ってきた。





5階に戻ると、オスカルの足の消毒、治療も終わり、2週間~3週間は安静にして下さい。と、先生はアンドレに伝えた。
「あと……。ご本人が、怖い夢をしばしば見るので、精神安定剤が欲しい、と言われましたが、出してもいいですか?」

「あ…。昨夜、見ました。彼女が寝ている時に、急に叫んで、何かに怯えた状態になって…。本人は翌朝、私は叫んだのか?と聞いてきましたけど…」

「そうですか…。いや、うちはメンタルクリニックもしているので、色々状況をお伺いしましたが、あれは夢、ではなく、過去に衝撃的な体験をし、フラッシュバックが起きるとあのような状況になりますから」

「フラッシュバック?」

「そうです。まあ、取り敢えずお薬は出します。彼女はしばらくここにおられる、と聞きましたから」

え!?

オスカルがそんな事言ったのか!?






「言った」

「あのさ、俺たち会ってまだ2回目だよね」

「私はいま、歩けない。聞いただろう?長くて3週間はかかると」

「聞いたけど…」

「私のアパルトマンに帰っても、1人じゃなにも出来ない」

「メイドさんとかいないの?」

「部屋には誰も入れない。どのアパルトマンにも」

「ちょっと待って。どのアパルトマンにもって、オスカル、お前さ、部屋をいくつ持ってるんだ?」

「マレ4区、1区 のサントノーレ通り沿い、5区 ムフタール通り 。あと、サン・ルイ島」

どこもめちゃめちゃ家賃の高いセレブが住むエリアだ。

マレ4区は、昔、貴族の屋敷がたくさんあった場所だし、1区 サントノーレ通り沿いは高級ブティックが並ぶエリア。5区 は、パリに住む人なら誰でも憧れるムフタール通り がある。
サン・ルイ島は、もう本当に金持ちしか住めない。

そのどこにも、メイドも雇わず、1人で暮らしている。と言う訳か。

「3週間…駄目か?アンドレ」

「足が治らないと歩けないしな…。ワガママ言わないと約束をしてくれるんなら」

「ワガママ言わない!ホントか!?アンドレ!」

ベッドから起き上がり、ベッド脇に座っていたアンドレに抱きついた。

それをした自分にオスカルがビックリしている。

「あ、ごめん」
オスカルは身体を離した。
その手を優しくアンドレは握る。

「いいよ。気持ちは押し込んだらダメだ。自然体が一番だから」

「…その言葉、どこかで聞いた事がある」

「そう?」

「何処だったかな…どこか外国の…」
そういうと、頭がキリキリ痛むと言い出した。




「オスカル、君は今、患者なの。無理はしない。約束して」

「無理と、ワガママは言わない約束か?仕方ない。…足が治るまで、わかった」

オスカルは少し不機嫌な顔をして、リネンシーツを被った。




俺…大丈夫かなあ。

こんなワガママで、可愛くて、美しいスーパーモデルと1つ屋根の下、いきなり3週間の同居だなんて…。

ため息を付いて、アンドレはベッド脇から立ち上がろうとした。

とっさにシーツから、オスカルの白い手が、アンドレの手を掴む。

「なに?ど、どうした?」
アンドレはドキリとして、振り返った。




「私がいま何を着てるかわかるか?」

「タイトスーツ」

「これで安静に寝てろと言われても」

「あ!ごめん!パジャマ持ってくるよ」

「アンドレ、それと私の携帯を。エージェントスタッフに伝える。1ヶ月の安静と言われたからと、その後に事務所に行くと伝えたい」

「ちょっと待って。一週間増えてないか?」

「予備の一週間だ」

やっぱりワガママ放題だ…。

セレブだから仕方ないか。
うちのsavonのお客様だし…。

でも、その間ずっと俺、工房の仮眠ベッドに寝るのか…
キツイなあ…。

アンドレは、オスカルに言った。

「毎週末、俺、蚤の市に出るから、留守になるけど」
「私も行く」
「駄目。その足じゃ無理」
そういうとオスカルは離していた彼の手を取った。
「1人になるのは嫌だ」

「安静にしとかないとって先生に言われたろう?」

「キャンピングカーの中でおとなしくしとくから。それに、蚤の市…楽しいし…」


蚤の市が楽しい…か。それは判る。

独りが好きな癖に、1人になるのは嫌だとか、色々矛盾もあるけど、仕方ないか。
1人で部屋にいても、歩きにくいんだから。

「判りました。連れていくよ。でも変装はしてくれよ?オスカル・フランソワだとわからないように」

「はい」

ん?しおらしくなった。
約束を守るつもりだな。
良かった…

「アンドレ。その変装する為に一階のブティックで色んな服と、もし頼めたらウィッグも調達してくれ。私の携帯のケースの中にカードがあるから」

「カードは他人は使えないの」

「……そうなのか?じゃあ、私が買いに行くから、下ろしてくれ」


駄目だ。
やっぱりワガママだ…

アンドレは肩をがっくりさせた。

でも、本当に少女みたいだな。
だからワガママを許せるんだろうな、俺。

ぶつぶつ言っている。


そのアンドレを見て、オスカルは楽しそうに笑う。


(こんなに笑うの、久しぶりだ。週末も蚤の市に行けるなんて、嬉し過ぎる)

アンドレに、顧客からの電話が掛かり、背を向けて話始めた姿を、ベッドの中から、にこやかに眺めていた。


アンドレが


「畏まりました。オーダーオッケーです。また完成したらご連絡いたします。いつもありがとうございます」
と言い、携帯を切る。

そのタイミングを見計らって
オスカルは言った。





「1ヶ月、アンドレの隣で寝るから」


振り返った彼の顔が、ものすごい表情になり、
オスカルは大笑いを始めた。





嵐の1ヶ月の始まり


である。








⑤に続く