à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~③





原作無視の、現代版オスカル、アンドレたちの物語その③です。

2023年1月から16年以上ぶりに絵の復帰をした時に、前々から描きたかった
オスカルがスーパーモデルだったら…
あちこちの女性誌の表紙を飾り、ヨーロッパだけでなく、世界中にファンがいるようなスーパーモデルだったら…と、描きためたオスカルの絵をモチーフに、春前から少しずつ構想をしていました。

そして
アンドレの職業は…
実は、私の個人事業の内容です(笑)
一番今、私が詳しく知っている職業であり、大好きな作業、夢のある事業だと確信しているから。
アンドレに、この仕事をやってもらおうと思いました。
なので、アンドレが仕事の説明をしているセリフは、私が言っている事と全く同じです(笑)

私も、石鹸のオリンピックと呼ばれる
ソーパーズ カップで、2度優勝しています。
ただ、コロナ禍になってから出店を控えて、tweetでオーダーを受けています。

ああでも。
石鹸の他に、ハンドメイドアクセサリーを作ったり、客寄せの為に占い師もしているトコは小説のアンドレとは違うかな(笑)

そして

少し長編にしたいなと思います。

今の私だから、書ける所まで
気長に書いてみようと思います。

そして!

いいね。や、
嬉しい、楽しいコメント頂き、本当にありがとうございます!
尻尾振って喜びます♥️

どうぞよろしくお願いいたします♥️


こちらの小説は2023年5月14日にpixivにて掲載しました。
アメブロでは一部、訂正、修正を加えております♥️

ではどうぞ♥️






~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨






石畳を2人



手をしっかり握りながら走った。

次第に雨は本降りになる。



アンドレがオスカルの手を離し、息を弾ませながら立ち止まった。

オスカルも肩で息をしていた。

2人ともびしょ濡れだ。

「ここです。俺のアパート。ここなら見つからないです」

そう言い、オスカルの足元を見ると、
暗がりでも判るほど、彼女のストッキングが破れ、両足が血だらけだった。

「オスカルさん!足…靴は!?」

「あんなもの履いて、走れるか。ダッシュした時に脱いだ……あ、痛ッ…」

アンドレは周りを見渡し、誰も後を付けてない事を確認すると、アパートの鍵を素早く開け、
足を怪我しているオスカルを抱き上げた。

「うわっ!…アンドレ…」

「パパラッチは巻いたから、とりあえず足の治療をしよう。このアパート、古いから階段しかないんだ。この怪我じゃ、上がれない」

そう言って、階段を駆け上がる。

オスカルは、アンドレの首に両腕を絡ませて、顔を真っ赤にしながら、身を任せた。



5階は、アンドレの部屋しかない。
広い1LDK。

部屋に入ると、アンドレは長椅子に彼女を座らせた。
「足は大丈夫?」
アンドレは足元を見つめた。




タイトスカートから伸びる長い足のストッキングは、無惨に破れ、濡れた石畳を走った足から血が流れていた。
そして、全身ずぶ濡れ。
自分もずぶ濡れだけど、ああ、可哀想に…。



「足は痛む。でも、ありがとう。いつもならボディーガードを付けてるんだが、今日は夕方から私用だったから1人でいたんだ…迂闊だった…痛ッ…」

アンドレは温かいお湯を入れた洗面器を持ってくると、オスカルの足指をゆっくり洗い
消毒液を丹念に付けて、防水加工の絆創膏を片足に数枚貼り、包帯を巻く。
もう片足も同じようにした。
手慣れた処置にオスカルは驚き、アンドレの指先の動きを眺めていた。



「用意がいいんだな。ありがとうアンドレ。でもアンドレもずぶ濡れだけど、大丈夫か?」
大丈夫、と答えると

「俺もよく怪我するから、必需品なんだ。職人は指の怪我は致命傷だからね。それより…」

アンドレは、濡れたオスカルの髪の毛に触れた。

心なしか彼女が、ビクンとしたが、蒼い目はずっとアンドレを見つめている。

「綺麗な髪が台無しだ。服もずぶ濡れだし…。シャワー使う?怪我した足はビニール袋に入れて、ゴムで止めておけば水は入らない」

オスカルは、コクンと頷くと
「でも、着替えがない」
と呟いた。

「とりあえず、俺のパジャマで良ければ…」

「…そうさせてもらう」

と返答した時に、濡れたオスカルのジャケットから着信音が鳴った。

すぐさま携帯を出すと、

「ああ、丁度良かった。明日の撮影と、しばらくランウェイは無理だ。…え?なんでって…さっきパパラッチに追われて、走って逃げたら怪我をしたんだ。今、治療を受けた。…ああ、大丈夫。傷が治れば仕事は再開する。クライアントとボスにも伝えといてくれ。…じゃあ。あ、明日また連絡する」

そう言って携帯を切った。

「エージェントのスタッフからだった。明日の取材と撮影の時間の確認で電話してきたんだ」

オスカルはそう言い、自分の携帯をテーブルに投げた。

「アンドレ、ありがとう。助かった。シャワー借りたい」

「ああ、どうぞ。あのドアを開けたら廊下があるから、一番奥にシャワールームがあるから。着替えは後からシャワールームの前に置いておくね」

「すまない…」
立ち上がったが、両足の痛みで座りこんだ。

「いたた…」
痛がるオスカルを見ると、またアンドレはオスカルを軽々と抱き上げた。

「少しでも歩くと痛いだろう?あそこまで連れていくよ?」




しばらくして。

シャワーを終えたオスカルは
廊下からアンドレに声をかけた。

「すまないが、連れてってくれないか?着替えたから」

「了解」

すぐさまアンドレが廊下に往くと、ブカブカの濃紺のシルクパジャマを着たオスカルが膝を抱えて座り込んでいた。




可愛い…。




ドキドキと不純にも胸が鳴る。
それを抑えて、アンドレはオスカルを抱き上げ、長椅子に横たわらせた。

「君の服、アイロン掛けといたから」
「え…?…ありがとう…」

「足、痛む?」

「まだ痛い。当分仕事は出来ないな…」

「そうだよね…。あ、俺の家、ドライヤーがないんだ。住んでるの俺だけだから。…オスカルさん、髪が濡れてるから…ちょっと待ってて」

アンドレはバスルームの向かいの扉を開けて、上質なコットンのバスタオルを2~3枚持ってきた。

「ありがとう」
と、オスカルは受け取ろうとしたが、アンドレが
「俺がやってあげるよ。走って、身体中痛いだろう?」
濡れた長いブロンドが、柔らかなバスタオルに包まれ、優しく水分を取ってくれる。

「アンドレ、上手いな」

「昔、バイトで美容院で、シャンプー担当してたんだ」

アンドレの手の動きが、頭をマッサージされているようで、気持ちがいい。

「そういえば…」
と、オスカルは目を開けた。
「バスルームに、ズラリとsavonが並んでたが、あれは全部アンドレが作ったのか?」

「うん、そう。使ってくれた?」

「…薔薇の形をしたsavonを使ってみた。ツルツルになって気持ち良かった」

「それは光栄です。そういえば、この前買ってくれたsavonは?」

「あれも、すごく良かった。泡立ちも柔らかで、ほんのりいい香りがして」

「ありがとう。嬉しいよ」





アンドレはバスタオルを頭から離すと、
乾いたよ、と笑い、洗濯機にそれを入れる。

「オスカルさん」

「オスカル、でいい」

(まだ会って二度目なんだけど…。しかも世界的スーパーモデルなんだろう?なんでこうなったのかな…まだ信じられないんだけど…俺の家に彼女が居る事が…)

アンドレは1つ咳払いをすると

「わかりました。…じゃあ。オスカル」

「なんだ?」

「………お腹空いてない?」

「空いた。ペコペコだ!」
長椅子に寝そべっていたオスカルが半身をあげた。

「わかった。ちょっと待ってて」

と、先ほどまでいたプロヴァンス田舎料理レストランに電話をし、テイクアウト用に色々注文し、電話を切った。

「20分待ってくれたら、俺の田舎のプロヴァンス料理が食べられるから。今、近くのレストランにオーダーしたよ。20分後に取りに行ってくる」

「アンドレはもう食べたのか?晩御飯…」

「さっき、そのレストランで打ち合わせしてたんだ。その時食べ……どうした?オスカル」

「1人で食べるのは嫌だ。一緒に食べてくれ」

ウソ!?マジか!?


とは、紳士のアンドレはおくびにも出さず、再度電話して
「さっきの、2人分でお願いします」
と伝えた。

その時。

またオスカルの携帯がブルルと震えた。
嫌そうな顔でオスカルは、アンドレから携帯を受け取った。
「はい。ああ、大丈夫だ。…迎え?今夜はもうホテルに入った。さっきパパラッチに追われてたんだぞ、私は。今夜も明日も、しばらくは私のアパルトマン全て、張り込まれてる筈だ。そんな状態で帰れるか!?」



(アパルトマン…全て…?って、どういう意味だ?
て、言うか…ホテルに入った!?って!?ここ、俺ん家だぞ!?)

聞いてない振りをしながら、耳だけはオスカルの声をしっかり聞いている。

「足の怪我か?最悪だ。ハイヒールが脱げて、石畳を裸足で走ったんだ。両足皮が剥けてる。ああ、治療は済んだ。…は?ホテルの場所?…いつも言ってるよな。私のプライベートな時間にエージェントの人間とは一切関わらないと。それが契約条件だ。じゃあ治ったら、事務所に顔を出す。それまではそっちから連絡は不要だ。以上」

オスカルは苦々しい顔で携帯を切り、アンドレに渡した。
「うるさいマネージャーだ」

アンドレは、呆然とオスカルを見つめている。

「アンドレ、どうした?」

「いや…。電話で、ホテルに入ったって言ってたけど…」
「今更、ホテルに行けるか?私は歩けないんだぞ。今夜はここに泊まらせてもらう」




「……………えーっっ!!」

嘘だろ!?超スーパーモデルのオスカル・フランソワが今夜、俺ん家に泊まるだと!?

まだ会って二度目だぞ!?

「電話の内容聞けば、私の仕事がなにかわかっただろう?」
とオスカルは少し睨むような目付きでアンドレを見る。
まるで、好きでやってる仕事なんかじゃない。と顔が言っている。

「ええ。なんとなく…」

「パパラッチに追われて、身動き取れないモデルがここにいる。泊まらせてくれ」

目が点になって、突っ立っているアンドレに、
「プロヴァンス料理たべたい。もう時間だろう?」

と、電話の声色とは全く違う、甘いささやきをアンドレに告げた。

「……行ってきます…」
そう言って、アンドレは部屋を出た。



テイクアウトを2人分持って帰って、レストランでクラフトビールを3本追加で持ち帰り、帰宅すると
オスカルは、先ほどの状態で肘当てに足を乗せて、壁にかかったとある物をじっと見つめていた。

テーブルにテイクアウトの料理を盛り付け、アンドレは、用意が出来たよ、とオスカルに伝えた。

でも彼女は、それをじっと見ている。

「どうしたの?」

「うん…あれ…」

「ああ、フェンシングの フルーレ 剣ね。俺、昔、選手だったんだ。弱かったけど、まあ記念に飾ってるんだ」

(これで、フェンシングの話が出きるかも知れない)
そう思った。


が、オスカルの反応は薄い。

あれ?なんでだろう?
彼女、オリンピックで金メダル取ったんだよな。

「フェンシングのフルーレ…というのか…」

「オスカル?」
というのか…って、どういう意味だ?

まあ、いいか。
またいつか話をしよう。


アンドレは長椅子まで折り畳み式のテーブルを近づけ、料理を指差し

「食べよう。オスカル。ビールもあるよ」

「ん…ああ。ありがとう」

オスカルは、複雑な表情で、何かを思いだそうとしているような顔だった。



アンドレは二度目の晩御飯でお腹がキツかった。
オスカルの方は、美味しそうに全ての料理を平らげていた。

「そんなに食べて大丈夫?モデルだろう?」

「私は太らない体質なんだ」

そうだろうな。
背は高いけど、華奢で、でも筋肉はしなやかな身体にちゃんと付いていて、まさにモデルって感じだもんな。

「アンドレ」
オスカルはビール2本目を空にしていた。
全くしらふの顔で。

グラス二杯のアンドレは少し酔ってきた。
昔から好んでは酒を飲まない。
ハーブティーの方が好きだった。
「なに?」

「私は何処で寝たらいい?」
「…あ…」

忘れてた。

「長椅子は身長的に無理。あ、そうだ。アンドレ、お前のベッドで寝る」

「はあ!?」
本気で言ってるのか?
酔ってるのか?

余りにも無防備だぞ、この男言葉のスーパーモデルは!!

「いいか?」

「…わかった。俺は工房の仮眠用のベッドで寝るよ」

テーブルの上のものを片付けながら、アンドレはぶつぶつ呟く。

「アンドレ、お前のベッドに連れてってくれ。私は歩けない」

あ、そうだった。

キッチンに片付けたものを置き、長椅子に近づいて、オスカルを抱き上げた。

今夜、俺、何回
このスーパーモデルを抱き上げてんだろ?

初めて会った時は、憂いを含む少女のような感じがしたけど、今夜はやけに気が強い、というか、
気を張ってるように見えた。

あの
フェンシング のフルーレ 剣を見つめていた時以外は。


寝室のドアを開け、明かりのスイッチを肘で付けると、アンドレは自分のベッドにオスカルを下ろした。

「キングサイズベッドなんだ」
オスカルはアンドレを見上げた。

「俺、大きいからね。あ、明日は一階の診療所で怪我を看てもらおう。それが済んだら自宅に帰る事。タクシー呼ぶから」

「………」
返事が、ない。



「オスカル?」

見ると、もうスヤスヤと寝息を立てていた。

やれやれ。
これじゃあ、事務所も振り回されてる訳だ。

世界のトップに君臨するスーパーモデル、と言う

お姫様。だな。

俺とは全く世界が違う人。

(素顔は可愛いんだけどなあ)


アンドレは電気を消し

「おやすみ、オスカル」

と囁き、ドアを閉めた。









アンドレは、工房の仮眠用ベッドで横たわり、寝よう寝ようと努力している。

なんで寝れないんだろう。

オスカルがこの家にいるから?

まあ、それもあるけど…。



寝返りをしようとした時。

オスカルが寝ている寝室から、悲鳴が上がった。

ビックリして跳ね起きたアンドレが、寝室に駆け込み、明かりを付ける。

オスカルが、キツく目を閉じて、
うわごとのようにこう言った。


「お父様!いやだ!」
「私を何故、自由にさせてくれないんですか!?」
「いやです!…誰か……誰か、助けて…」

次第に涙声に変わる。

「オスカル?…おい!オスカル!大丈夫か!?」

「誰か助けて…」

力なく細い腕を空にあがきながら助けを乞うていたオスカルの、その腕を掴み、

アンドレは無意識に、オスカルを抱きしめていた。




まるで、

大丈夫だ。
大丈夫だよ。

とあやすように。


オスカルが落ち着くまで、アンドレはこうしていようと、オスカルの細い背中をさすりながら


そう、思った。




雨はまた振りだした。











④に続く