à la recherche de l'amour ~愛を探すひと~②

原作無視の、現代版オスカル、アンドレたちの物語その②です。
今年、2023年1月から16年以上ぶりに絵の復帰をした時に、前々から描きたかった
オスカルがスーパーモデルだったら…
あちこちの女性誌の表紙を飾り、ヨーロッパだけでなく、世界中にファンがいるようなスーパーモデルだったら…と、描きためたオスカルの絵をモチーフに、春前から少しずつ構想をしていました。

そして
アンドレの職業は…
実は、私の個人事業の内容です(笑)
一番今、私が詳しく知っている職業であり、大好きな作業、夢のある事業だと確信しているから。
アンドレに、この仕事をやってもらおうと思いました。
なので、アンドレが仕事の説明をしているセリフは、私が言っている事と全く同じです(笑)

私も、石鹸のオリンピックと呼ばれる
ソーパーズ カップで、2度優勝しています。
ただ、コロナ禍になってから出店を控えて、tweetでオーダーを受けています。
石鹸の他に、ハンドメイドアクセサリーを作ったり、客寄せの為に占い師もしているトコは小説のアンドレとは違うかな(笑)

そして

少し長編にしたいなと思います。

今の私だから、書ける所まで
気長に書いてみようと思います。


追記(2024年2月6日)


こちらの小説は2023年5月14日にpixivにて掲載致しました。
結構人気を頂きまして、
半年間連載させていただきました。

番外編もございます。

では、どうぞ♥️










~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨






パリの6月は、天気の移り変わりが結構ある。

急に雨が降ったかと思えば、少し雨宿りしていれば、すんなりと止む場合も。

また、逆にどしゃ降りが一日中続く日も。




今年の6月は、雨が多い。

少しひんやり感じる位だ。



savon職人のアンドレは、
自宅兼、工房で、オーダーの石鹸を作っている。

クライアントのレシピをカルテのようにデータ化して、管理し、また季節に合わせて、このオイルを配合したらどうでしょうか?とメールで提案もする。

一日中、製造作業する場合もあるし、

savonの配達や、納品をして1日が終わる日もある。



アンドレが住んでいるアパート

パリ10区にある、 広めの1LDK の古い5階建ての最上階のワンフロアに住まいと工房がある。

この5階建てのアパートは、大学教授の叔父の所有する建物で、今、叔父はスイスに住んでいる為、
甥っ子のアンドレが大学生時代から、この建物の管理人も兼ねて、タダ同然で住まわせてもらっている。

パリは普通に家賃が高い。
叔父の所有するこの五階建てのアパートがなければ、パリなんか住めたものじゃない。






今日は、ずっと雨か…。

窓の外を眺め、作業を終えたアンドレは、
「今日の晩飯、外で食べようかな…」とふと思いついた。

歩いて10分位の所にプロヴァンスの家庭料理のレストランが最近できたので、故郷が懐かしくて、よく通うようになっていた。

出かける準備をしていた所に、テーブルの上に置いていた携帯がブルルと震えた。



「Bonjour(もしもし?)」

(先日は取材を受けて頂いてありがとう。この前の記者のベルナールです)

「あ、どうも。何かありましたか?」

(先日取材した記事がラフで上がったので、見て欲しくて。今からとか駄目でしょうか?)

「大丈夫ですよ。あ、そうだ。今から晩飯に行くんで、一緒に食べませんか?」

(え?いいんですか?)

「どうせ俺、一人ですし。ラフ見ながらメシでも食いましょう。奢りますよ」

そう言い、場所と時間を伝えて携帯を切った。

一人で食べるより、誰かと話しながら食べた方が楽しいもんな。


外を見ると、雨は上がっていた。

「よし。傘は要らないな。行くか」

ジャケットに、携帯と財布を入れて、ドアを開けた。





「へえ。アンドレさん、プロヴァンス生まれなんですか。景色が綺麗なんでしょうね」

ベルナールと、このプロヴァンス田舎料理店に入って、軽く原稿の話をした後は、ワインで乾杯し、色々楽しい話をした。

「たまに帰りますけど、帰るとパリには戻りたくなくなる感じになりますね。空気もいいし、空も鮮やかだし」

「田舎があるって、いいですね。俺はパリ生まれだから、田舎がなくて…。それに、ここのプロヴァンス田舎料理も、旨い。なんだか昔、おふくろが作ってくれたような懐かしい味で」
と、ベルナールが料理を食べる。

「気に入ってくれて良かったです」

「ああ、そうだ。先日、取材した時、まだ朝早くてお客さんがいなかったでしょう?だから、昼前にちょっと立ち寄って、お客さんと接客している写真も追加で載せようと思ったんで、数枚撮らせてもらったんです。良かったでしょうか?」
ベルナールは、写真を4枚出してきた。


「ああ、いいですよ。見せて下さい」
差し出された写真を見る。

……あっ……この人…

一枚の写真には、キャンピングカーで接客している自分と、その前に置いた丸テーブルに座る彼女の後ろ姿が写っていた。

ベルナールは、ちらりとアンドレを見る。
凝視しているその目を。

「後ろ姿だけど……。このブロンドの女性、例のトップモデルのオスカル・フランソワですよね」

「トップモデル…?ですか?彼女が?」

「そう。超スーパーモデルのオスカル・フランソワ。ご存知ですか?」

「い、いやあの…」
どう答えたらいいんだ?
アンドレはしどろもどろになっていた。

「ここで、楽しそうにサンドイッチを食べてましたけど」と、ベルナールは言う。

「見てたんですか?」

「ええ、まあ。…世界のトップクラスの頂点にいる超スーパーモデルですから。なんでここに…あ、失礼。アンドレさんの店にいるんだ?と」

「友達から、俺のsavonの事を紹介されて、来てみたって言ってました。俺、彼女の事を全然知らなくて。ははは、世界が違いますし。だから後で知って、ビックリしたんです」

「知らないんですか!?色んな雑誌の表紙になったり、色んなブランドのモデルで、あちこちにポスターとか、看板があるのに?」

「俺、ファッション雑誌とか見ないですし、忙しいから街の上を見上げるタイミングもないから。知らなくて当然で…。確かに素顔でも美しい人だな、と思いながら、話しはしましたけど」

「すごいな。素顔を見たんですか?」
とベルナールは感心している。
この情報世界で、あのオスカル・フランソワを知らなくて、彼女と話しをしていたとは。

「それで?savonを買われたんですか、彼女」

「そうです。説明したら購入されましたけど…。ベルナールさん。俺、なんかマズイ事をしました?」


いや、とベルナールは首を振った。
「むしろ、これを載せれば、貴方のsavon、
バカ売れですよ。お忍びできたオスカル・フランソワが買ったものは、世界中のファンが欲しがりますからね。いくら作っても追い付かない位に売り上げが伸びるでしょうね」

「……やめましょう。彼女はお忍びで来て、
試しに1個購入しただけです。スクープ扱いにはしないで下さいよ。俺が困ります」

「そうですか…。勿体ないなあ」
ベルナールはガックリした。

ビールをアンドレに注ぐと、またオスカルの話をした。
「あの人、10代の時にオリンピックにも出場した、フェンシングの選手だったんですよ。16歳でオリンピック金メダルも2個取り、17歳で世界大会で、3個も金メダルもった強者です。その後すぐ引退してしまったけど」

「…え…?」

(…そうか。だからか。何かの試合で、数回、学生の頃に見た記憶があったんだ。でも顔は見たことないな…)

俺も17歳までフェンシング部に所属してたけど。でもあの時、彼女はいただろうか?俺もよく大会に出てたけど…。

アンドレは、オスカルの話をもっと聞きたくて、前のめりでベルナールに尋ねた。

「俺もフェンシング部で、よく大会も出てました。17歳まででしたけど」

「じゃあ…判らないでしょうね。彼女は、試合前も後も、一切プロテクトマスクを脱がなかったですから。ブロンドの髪しか判らないミステリアスなイメージで、メダル授与もプロテクト着けたままでしたから。
当時は男じゃないか?と騒いでましたよ。名前も、オスカルって言う男性名じゃないですか?
その後、17歳で引退をあっさりしちゃって、2年間、行方知れずになったものでしたから」

「行方不明?」

「同じフェンシングしてたのに、知らなかったんですか?」

「才能なくて止めてからは、帰宅部でしたから」

ベルナールは、その答えにククッと笑う。
「とにかく、凄い選手でしたからね。オリンピックや世界大会で、何回も出場して何個もメダルを取った、パリでは(仮面の女神)って言われた」

「そうなんですか」

「そしたら19歳で彼女は、突然モデルでデビューし、あっという間に誰も寄せ付けない程の、世界トップクラスの超スーパーモデルになっていた、と言う訳です。多分、彼女の過去を知ってる人はほとんどいないんじゃないかな?選手の時は、顔を見せていなかったから」

あ、そうか…。
でも、なんでオリンピックにまで出て金メダルを勝ち取った彼女が、素顔を一切見せなかったんだろう。それと、何故逆に、スーパーモデルとなって、顔を出すようになったんだろう。

ふと、考えたが
それは彼女が、そう決めた事だから。
詮索する方が失礼だな。
と考えた。


あの時の、蚤の市で会ったオスカル・フランソワ。

ブロンドは黄金色。
完璧なスタイル。

だけど、何故か彼女は孤独に見えた。
そして、ノーメイクの素顔は、広告でみた完璧なメイクの彼女より、少し幼げのようで、妖艶さも合わせ持つ、不思議な雰囲気だった。




「アンドレさん、アンドレさん」

ぼうっと考え事をしていたアンドレは、ベルナールに呼ばれてハッとした。

「すみません!この原稿、今日入校なんで、そろそろ会社に戻ります。ご馳走さまでした!あ!これ、最新号です。1冊差し上げます!」
そういって、雑誌を置き、ベルナールは急ぎ足で店を後にした。

いつも忙しい人だなあ。
出版関係って、みなドタバタしてるよな。

俺くらいか、のんびり仕事してるの。

少し笑うと、置いていった最新号の雑誌をみた。
表紙のモデルは彼女ではなかった。

ページを開く。

………あ!

ブランドの黒い衣装。

ブロンドの髪。濃いメイク。






彼女だ。

オスカル・フランソワ…



アンドレは、そのページをじっと見つめた。

頭で考えていた。

フェンシング選手の時は一切、顔を見せず、メダルを取ったら、あっさりと17歳で引退。

その後、2年間行方不明。

19歳で、突然パリコレでモデルデビュー。

あっという間に、世界中を魅了する超スーパーモデルになった。


確か、
と、思い出す。

フェンシングの試合でちらっと聞いたのは、俺より1つ年下だったと…。

それが正解なら、今、彼女は32歳。

19歳からずっと、その地位を守って来たのか。

「モデルの世界って、厳しいんだろうな…」

残ったビールを一気に飲み干し、アンドレは会計を済ませ、レストランを出た。

8時を過ぎていたが、まだ空には明るさが残っていた。





飲みに行くかな…。
それとも、少し散歩してから帰ろうかな…。

ぶつぶつ言いながら、オレンジ色の街灯が道なりに並んで光る道を歩く。


裏道に入ろうと身体を左に向けた。


ドン!

裏道から走ってきた人とぶつかった。

「あ!大丈夫ですか!?すみません!ぼんやり下を向いて歩いてたものだから…」

と、ぶつかって、倒れ込んだ腕を支えて立ち上がらせた。


「……あ…!」

「貴方は…蚤の市の…」

立ち上がらせた時、目深にかぶっていた彼女の帽子が落ち、パサリと帽子から豊かなブロンドが流れ落ちた。

「オスカルさん…大丈夫ですか!?」
アンドレは、突然の出来事でドキドキが止まらない。
今までずっとこの女性の話をし、考えていたんだから。

落ちた帽子を彼女に渡そうとした時。





「アンドレ!」

「は、はい」

「人に追われてる!巻いてくれ!」

と、アンドレの手を握り、オスカルは駆け出した。



「え?え?…ちょっと!」

「いいから早く!」

「巻いてくれって言われても!」

「パパラッチなんだ!」



そうか。それなら何とかしなくちゃな。



「走りますよ!手を離さないで!見つからない場所に行きます!」

今度はアンドレが先導して、オスカルと走る。


「アンドレ…ちょ…早い…!」

男の駆け足に付いていくのに、ヒールは邪魔だと考えたオスカルは引っ張られながら、ヒールを脱ぎ捨てて、走った。


奇妙な2人を

すれ違う人達が、不思議な目で見ていたのを彼らは知らない。







③に続く




この小説は2023年5月14日に
pixivに掲載致しました。