~プロバンスの風に吹かれて…①





Au-delà de toute la douleur...~いつくもの苦しみを超えて
全7話で完結をしましたが、


その後の2人を少しでも書いて欲しい…と、色んな方々からXッター(笑)の方にDMを頂き、
誠にありがとうございます(._.)

別の長期連載中の小説を先日アップしましたので、

少しだけ続きを書いてみようと思います。

(1話で終われず、続きます💦)



Au-delà de toute la douleur...~いつくもの苦しみを超えて
全7話最終回から少し経過した頃のお話です。

えーと、
ベルばら2次創作現代パロも、2人に子供が出来たので、私の頭の中は結構こんがらがっています(笑)
あと、現代パロのオスカルと、18世紀のオスカルは性格が全然違いますので、その彼女の口調とか、思考とかが同時進行で書いていますと、こんがらがりました(笑)

(前に書いたノルマンディーに向かった2人の物語とはまた全然違いますし(笑))


~物語~

フランス革命

バスティーユ戦争の後の、2人を

(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)


私なりの物語を妄想してみました。

当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、この際無し(笑)
で、行きます(._.)

ごめんなさい!

パラレルです(笑)

日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!


また、南プロバンスのアンドレの生まれ故郷での話は、
以前書いた

Fils du destin André  ~運命の子~

から、アンドレの両親、親友等の名前をそのまま使い、連動させています。
合わせて読んで頂けましたら幸いです。









~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨






1792年春。3月。





南プロバンスでの生活を始めて2年になった
オスカルとアンドレ。

アンドレは、小さな港町にある街の新聞社の編集部から、編集長とスピード出世をしていた。

アンドレが海外からの最新の記事をいち早く翻訳し、新聞に連載していたのが好評となり、新聞の売れ行きが大幅増になったからだった。



そして。
相変わらず
港町の三階建てのアパルトマンで生活しながら、


オスカルはもうすぐ2歳になる愛娘ミッシェルを時々、アンドレの産まれた近くの小高い丘にある村の人々に預け、街の裕福な家庭の子供たちの家庭教師をしたり、バイオリンを教えたりしながら、アンドレの収入プラス、オスカルの収入も含めて、ようやく新しい家具や、オスカルの普段着のドレス、オスカルが一番気にかけていた、愛娘への教育資金なども貯蓄できるようになった。

両親や、姉上たちから贈られてきた資金には、まだ一切手を着けていない。
いつか、何かが起きた時の為にと、オスカルは手をつけられないでいた。




時を戻して。

前年の1791年6月20日、深夜。
国王ルイ16世と、マリーアントワネット一家が、フェルゼンや家臣の提案により実行され
オーストリアへの逃亡を図ったが、東部国境付近のヴァレンヌで発見され、パリへと強制連行された事件の記事が書かれた、
アンドレの勤める新聞社の新聞を読んだあの日。
心底、オスカルは心を痛めていた。




(フェルゼンは…命をかけてアントワネット様を逃がそうとし、失敗に終わった…どれだけ悔しかっただろうか…。きっとあのお二人はもう、2度と逢えないのだ…。)

かつてはオスカルも甘く、辛く、苦しい恋を彼にしていた。
だから、2度と逢えない、その苦しみは痛い程わかる。
(私のアンドレがもし、2度と逢えなくなったら…)

それは想像を絶する恐怖だった。




新聞社に勤めているアンドレから、パリの状況は詳しく聞いていた。

先日、母ジョルジェットが亡くなり、父はベルサイユにはもういられなくなり、着いてきてくれていた屋敷の使用人数人と、パリより一番遠いノルマンディーに向かった所までは、先日来たベルナールの手紙から知った。

母ジョルジェットが亡くなったと聞いた時は、はばからずアンドレにしがみつき、大粒の涙と、止まらぬ嗚咽で、胸が苦しくなる程に泣きあかした。

きっとアラスにある、ジャルジェ家一族の墓地にひっそりと埋葬され、父上はノルマンディーに向かったにちがいない。

南プロバンスとノルマンディーは、パリから真反対の土地だ。

これでは…手紙に書いたような、我が子を父上に逢わせる事は不可能だ。

幾度と、深夜までアンドレとその話が計画出来るかどうかを話し合ったが。

結局、現状のフランスの状況では土台むりであった。







村から帰らない宣言をした愛娘ミッシェルと別れて、1人で港町の自宅に帰ったあと、
オスカルは近所のマダム達から少しずつ教わったプロバンス料理を、夜帰宅するアンドレの為に作っていた。
慣れない作業ばかりで戸惑いを隠せなかったが、何かを作る作業は大変で…
今まで自分は、どれだけ恵まれていたのかが、痛い程わかる。



「ただいま。…あ、いい香りだ」
1階のキッチンの手前で立ち止まり、アンドレは料理中のオスカルに近づき、キスをした。

「アンドレ、お帰り。もう少し待って。料理に中々慣れなくて…」
「急がなくていいよ、オスカル。でも美味しそうな香りだ…」
「今日は、ドーブ・プロヴァンサルと、エスカベシュ。足りなかったら、他にも作るけど」
「充分だよ。それよりオスカルも料理作りが上手くなってきたなあ。あ、ミッシェルは?」
アンドレが盛り付けを手伝いながら、聞いた。

オスカルは急にむくれて、聞いてくれ、と話始める。
「どうした?」
「今日はママンは仕事があって、ミッシェルは村から迎えがくるからあちらで友達と遊んでおいで、と言ったら何て答えたと思う?」
「どういう事?」
「私は一週間ずっとあっちに居たい。友達もたくさん出来たから、あっちでお泊まりしたい!パパにもそう伝えて!…と、言われて朝からミッシェルと口喧嘩してしまった」
「…一週間は長いなあ。で?」
オスカルはカラトリーをテーブルに並べながら続ける。
「村から迎えに来てくれた村長さんに事情を話したら、ミッシェルが帰りたいと根をあげるまで村にいてくれても良いですよ、きっとママンの仕事の邪魔をしたくなかったのでしょう。ミッシェルはとても賢い娘さんです。あと、村の友達も増えたので日帰りで長く遊べないのが彼女は悲しかったのでしょうね。大丈夫です。しっかり見守りは皆で致します。…と言われたから、ミッシェルは今日から多分一週間は帰らない」
「…一週間帰らない?…こうと決めたらすぐ行動して、頑なに変えない所は、昔のオスカルにそっくりだな、ははは」
「なんだ?アンドレまで。私はあんな我が儘ではなかったぞ」
「ああ、ごめん。違うよ、我が儘とかじゃなくて…」
「アンドレ!食事をする前のお祈り!」
オスカルは不機嫌そうに手を組んだ。
「…はいはい。わかりました」




夕食の食器洗いはアンドレの担当だ。
1階のキッチンで洗いを済ませると、アンドレは
多分まだ不機嫌なオスカルをなだめようと、3階の海が見える部屋に向かった。

オスカルは大概、時間が取れるとその窓辺から海を眺めている。

向かうと確かに其処に立って、静かに夜の街明かりと、黒く波打つ海を眺めていた。


アンドレが後ろから、そっと抱きしめる。
「オスカル…もう怒らないで」
「怒ってなどいない」
アンドレの指が束ねられたブロンドの下に見える、白く絹のようなうなじに軽く口づけた。
何度も、ゆっくりと。

くすぐったいのか、オスカルはクルリと反転しアンドレに何か言おうと息を吸ったが、その唇を夫に奪われてしまった。



アンドレはずるい。

オスカルはいつも思う。

そのお前の唇は、私の身体も心も痺れさせ、とろけさせる。
なんて甘いキスなんだ。
本当にずるい。



唇が離れたあと、オスカルの瞳は落ち着いていた。

「機嫌なおった?」
「…うん…」
「不機嫌だった理由は、ママンより村の友達と一緒の方がいい、と言われたと思ったからだろう?」
「………うん………なんでわかる?」
アンドレはオスカルの額の髪をかきあげ、口づけた。
「大丈夫だよ。ミッシェルはいつも、ママンはなんでも出来る素敵なママンだねと俺に言ってる」
「お前に?私はミッシェルから聞いた事がない」
「ママンに言うのは照れるからじゃないか?でも彼女はちゃんとお前が日々やっている事をちゃんと理解しているし、尊敬もしている。きっと仕事の邪魔になりたくないから一週間、村に居たいと言ったんだろうな。…でもきっと途中でオスカルが恋しくなって戻ってくるよ」

アンドレは夜景の見える窓を閉じると、深緑色のドレスのオスカルを抱き上げた。

「アンドレ…」
「ミッシェルが居ないなら、一緒に湯浴みをして、久しぶりに……」

「久しぶりに……?」

わざと聞いてみる。

「互いに、パパとママンと呼び合うんじゃなくてさ…昔の様に、オスカルとアンドレ…そう呼び合う時間にしよう」

アンドレの首もとに腕を絡ませていたオスカルの顔が赤くなっていくのを、夫は微笑み
妻の唇を吸い取った。



湯浴みを済ませ、2人はろうそくの灯りの下、寝台にアンドレは横たわる。
暖炉の温もりが少し暑く感じた。

背中をむけていた妻の右肩の銃弾の跡も少し薄くなっていた。
オスカルの背中には、左肩に古い刺し傷もある。

かつて軍人として生きていた証しの傷…。

アンドレは、その傷、ひとつひとつに口づけながら言う。
「オスカル……もうお前の身体には傷ひとつも付けさせないよ…」
「それはお前も同じだ…アンドレ…お前の身体にもこれから先、傷ひとつも付けさせない…それに…」
「それに?」

「私の傷だらけの身体を、綺麗だと言ってくれるのは、アンドレ…お前だけだ…」
「jin先生の手術のおかげかもしれないけど、傷はかなり薄くなっているよ。オスカルの身体は、女神のように綺麗だよ…」
アンドレは、左肩の古い傷にも、ゆっくりと愛撫し、口づけた。

オスカルは甘い吐息を吐きながら応える。
「アンドレ…私は、二度と軍人にはならない。
……私には愛するお前と可愛い娘がいる…普通のマダムだ……私がお前と一緒になって…一番憧れていた生活だ…アンドレ…」

オスカルはアンドレの方を向いた。

伸ばしたブロンドが一束

彼女の胸を美しく覆い隠している。

「オスカル、お喋りはもう終わりだ」





アンドレは身体を寄せると、一束の煌めくブロンドに口づけ、指で背中に回し
露になったオスカルのまあるい乳房を、片方ずつ口づけ、舌を這わせ、
甘い声を小さくあげるオスカルを目で追いながら、暖かな乳房を彼女がよがるまで愛撫を続けた。




次第に息が荒くなる2人。





ろうそくがひとつ消え、少しほの暗くなった寝台の上で、オスカルとアンドレの身体がひとつになる。




軋む寝台の音と、
アンドレの熱のある荒い息と、
甘く、泣くように、声をしぼるオスカルの吐息。


窓の外からは瞬く星が、2人の美しい愛の姿を見つめていた。










アンドレ…

なに?

私は、お前の妻らしくなったか…?
お前にふさわしい、女になっているか…?

アンドレ…何故笑ってる?

何故って…

なに?

オスカルはね、オスカルのままでいいんだよ?
俺にふさわしい、とか考えなくていいんだよ。

どうして?私はこんなに不完全な女なのに…

オスカルは小さな頃から、姉妹で一番美しいと言われてただろう?

知らない、そんな話


お前は男として育てられた。でも、誰よりも美しい女性だったよ。俺は気が気じゃなかった。

本当に?

本当。結婚相手を見つける為にと、晩餐会が開かれた時、お前がドレスを着たらどうしようとヒヤヒヤしてた。晩餐会には結構な数の男達が来てたからな。

ふふ、あの時、私は言っただろう?
私はそう簡単には嫁には行かない、と。
今思えば
多分、もうその時にはアンドレ…お前を愛していたんだと思う。

うん…ありがとう…。
オスカルは、俺にとっての女神だよ。
そして、俺の大切な大切な美しい妻。
オスカルがオスカルのままで飾らず、優しい
昔から何も変わらない、素敵な奥様だよ。





アンドレはベッドでオスカルを胸の上に乗せて、そう話し、

艶のある可愛いオスカルの唇に口づけた。





「オスカル、明日もしミッシェルが帰って来なかったら、村に行ってこっそり様子を見てこようか」

その提案に、オスカルも賛成した。










続く