~いつくもの苦しみを超えて⑦最終回…~







Au-delà de toute la douleur...~いつくもの苦しみを超えて⑦最終回…~


いつの間にか⑦話目になってしまいました( ̄▽ ̄;)
最終回です〰️💦


今回が、このストーリーの最後かな…。

(実は書いた当時に後日ストーリーのリクエストがあり、もう少し続きます♥️)







フランス革命

バスティーユ戦争の後の、2人を

(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)


私なりの物語を妄想してみました。

当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、この際無し(笑)
で、行きます(._.)

ごめんなさい!

パラレルです(笑)

日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!


また、南プロバンスのアンドレの生まれ故郷の話は、
以前書いた

Fils du destin André  ~運命の子~

から、アンドレの両親、親友等の名前をそのまま使い、連動させています。
合わせて読んで頂けましたら幸いです。





~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨


1790年の春が来た。




南プロバンスのアンドレの生まれ故郷に程近い、港から内陸1キロあたりにある小さな街に移り住んで、もうすぐ半年近くになる。



オスカルのお腹はすっかり大きくなり、時々お腹の中で、赤ちゃんが蹴ってくるのが判り、アンドレにお腹を触らせては、2人で喜んでいた。


アンドレはこの地域の新聞社の編集を任され、仕事も順調だった。
伯爵家でオスカルと一緒に育てられた平民出身のアンドレだったが、勉強はオスカルと同じ教育を受けていたので、フランス語以外に
ラテン語、ドイツ語、英語、イタリア語が話せたので、翻訳記事も任されていた。

南プロバンスの春は早い。

海風が、2人が住むアパルトマンの窓を開けると、爽やかに潮の香りが香ってくる。
少し眼下の向こうには港町が見えた。

明るい海の輝きが美しいと、
オスカルは、この風景が好きだった。


でも、


時折、思い出す。





パリはいまどうなっているだろう…。

姉上たちは、海外に向かったと聞いた。

では。

父上、母上は…。
まだ屋敷におられるのだろうか?

私がバスティーユの英雄扱いにされているとしても、いつまでその効力が両親を守れるか?

そんなもの、この時代にわかったものではなかった。

不安がない、と言えば嘘になる。

無事でいて欲しい。
生きて、再び両親に逢いたい。

自分が身ごもってから、その思いは強くなっていた。

だが。

どうにもならない。
私は逃げたのだ。
アンドレと生きるため。

お腹の子を守るため。


私の最優先は、この2人。
グランディエ家を守る事。

それが、私の最優先。

思い巡らせては、結論はこれに辿り着く。

5月の始め。
もう少しで産まれてくる。

ちゃんと産めるだろうか?
痛みに耐えられるだろうか?

色んな不安も否めない。

なにせ、高齢出産なのだ。

アンドレにしがみついて、怖い。と呟いた時もあった。

そんな時は、必ず
「オスカルはあの戦いから生還出来たんだ。大丈夫。オスカルは強いよ」
と、優しく髪をすいて、口づけをしてくれた。

安心感で胸いっぱいになる、彼の声。


様々な不安や、苦しみから

私はきっと乗り越えられる。


愛するアンドレがいるから。




あの時

アンドレと、私を助けて下さった、jin先生の言葉。


「神様は、乗り越えられる運命しか与えない」

だから、きっと出産も、様々な不安や苛立ちや、苦しみも。


乗り越えられるから、いまがあるんだ。




潮風に当たりながら

オスカルはずっと…遠くの煌めく海を眺めた。




明日からは、出産の準備の為に、アンドレの生まれ故郷の村に行く。

あの地で、親しくなった村人達の協力の元で、
私はアンドレの子を産むんだ。

あの村人の女性達の顔を思い浮かべては、感謝の思いと、勇気が湧いて出る。


海を眺めながら、様々な思いを巡らせていると、

昼前なのに、アンドレがアパルトマンに戻ってきた。

「どうした?アンドレ。忘れ物でもしたのか?」

アンドレは窓辺にいたオスカルに近づき、そっと抱き締めた。

オスカルが顔を上げて、柔らかな笑顔で夫を見上げる。

その妻の唇に、優しく口づけを落とした。

「明日、村に行くんだろう?今日の午後から1ヶ月間、休暇をもらったんだ。荷造りもあるし、
あと、俺が村に連れていくよ」
「本当に!?ありがとう!アンドレ!」
今度はオスカルがキスを何度もした。

やはり、自分は不安だったんだ…。

アンドレの休暇を聞いて、胸高鳴る程、喜んでいる自分に驚きながらも、
昔より、自分は素直になったんだなと感じた。

「お昼ごはん作るから、それ食べたら荷造りするから。ちょっと寝てて。お腹も重いだろうし」
「うん…。重くて、腰が痛い時がある。でもあと少しだけしかこのお腹の中に、この子はいないと思うと、ちょっと淋しいな…」

キッチンで既にごそごそしているアンドレには余り聞こえてなかったのか
「ごめん!!いま何か言った?」
とキッチンで叫んでいた。

オスカルはキッチンに向かうと

「何でもない。お腹が空いた。3人分よろしく」
と、悪戯顔でおどけてみせた。




翌朝。
2人を乗せた馬車は、アンドレの故郷に向かい、
出迎えた、すっかり顔馴染みの村人達から歓迎された。

村長の家が一番大きいのと、空き部屋が数部屋あったので、そこを出産場所と、2人の居住まいとして提供された。





村に来て2日目の昼前。
オスカルが急に産気づいた。

予定では10日あたり、と言われていたが、
村の女性達は出産経験が豊富なので、すぐさま用意にかかった。

「アンドレ、あんたは夕方までちょっと外に居るか、ラサーヌの家にいて。私たちがいるから大丈夫。産婆もいるんだから」
村長の家から放り出されたアンドレは、苦しむオスカルの声を聞きながら、薔薇咲く庭園をうろうろするしかなかった。
「ラサーヌさんの家に行ける訳ないだろ。いつ産まれるかもわからないのに…」



村長は、急用で港町に出ていて、漸くは帰れないらしい。

他の男性陣も、仕事に追われて今は誰もいない。

外からでもオスカルの、痛がる声が時折聞こえてくる。







「いやはや、お久しぶりですね。アンドレさん。お元気でしたか?」

聞き覚えのある流暢なフランス語。

振り返れば、あの東洋人の医師が、草原の中、
すぐそこまで歩いて来ていた。

「先生…!jin先生…!」
「パリのベルナールさんに手紙を出したら、アンドレさんは南プロバンスのこの港町の新聞社の編集をされていると書かれていたので…。奥様もそろそろご出産の頃かなと思い、こちらに参りました…で?奥様は?」

「い、いま!陣痛が来てもうすぐ産まれそうなんです!」
「え!?今日ですか?すごいタイミングで来たなあ。何処です?」
「この村長の家の中です!」

外でアンドレが大きな声で話していると、家から女性が桶を抱えて出てきた。

「アンドレ!水を汲んできて!お湯を沸かすから!早く!」
「オスカルは!?」
「大丈夫だよ。でもかなり安産だよ。もうすぐ産まれそうなんだよ。普通、初産は丸一日掛かる人もいるのにさ。アンドレの赤ちゃんは、お母さん想いなんだろうね。さ!早く井戸から水を汲んできて!」

大きな桶を渡されると、アンドレは我に返ったような顔になった。

「アンドレさん、良かったですね!俺の出番は無さそうだ、ははは!さあ、水を汲みに行きましょう。それくらいは手伝います」
「先生…ありがとうございます!」


水桶を渡して、ずいぶんと時間がかかった。


夜10時前。

すっかり星空になった天空を、静かに2人で見上げていた時。


家の中で


大きな声で、赤ん坊の泣く声が響いた。

その声は、まるで夜空まで響く大きさだった。

慌ててアンドレは家に入ろうとするが、jinは止めた。

「慌ててはいけません。子供が産まれたら、後産と言うのがあって、処置が済んでから呼ばれますよ。大丈夫」
「そうですか…判りました…」

じっと、扉を見据えてアンドレは待った。


しばらくして。

「アンドレ!さあ!入って!可愛い女の子だよ!」

「女の子…」

「おや、この人は?」

「俺とオスカルの大怪我を治して下さった先生です。一緒にオスカルの所に行ってもいいですか?」

「もちろんだよ。綺麗な赤ちゃんだよ、見てもらいな!さあどうぞ」

「ありがとうございます。マダム」

会釈をすると、jinとアンドレは中に入って行く。






「オスカル……」

玉のような汗をかいていたオスカルが、額を拭かれていた。
アンドレの声で振り返る。

「アンドレ……お前の言った通りだった…。ブロンドの女の子………あ…先生…!」
「オスカル様、とても素晴らしいタイミングで来てしまいました。お久しぶりです」
オスカルの目から涙が溢れだした。

「お会いしたかったんです…私たちが生きているのも…赤ちゃんを授かったのも…先生のおかげです…」
「ああ、本当にそうだな。オスカル。…先生のおかげです…ありがとうございます」
アンドレはjinと握手をした。

「で?赤ちゃんは?」


「産湯に浸かって、おくるみを着せてきたよ。さあ、お父さん、お母さんに挨拶しようか」
産婆に抱かれ、真っ白な肌に薄紅が混ざる透明感のある肌で、癖毛のシルバーブロンドの小さな赤ちゃんがそこにいた。

産婆は、オスカルに赤ちゃんを抱かせた。

「この子がさっきまでお腹の中に居たんだ…」
オスカルの顔は女神のように優しく美しい微笑みで、赤ちゃんを見つめた。

アンドレはその光景を見つめながら、とても神聖な2人に思えて仕方がなかった。

jinが、
「こんなに綺麗な赤ちゃん、見たことがないですよ。さすが、美男、美女の子だなあ。お父さん、お母さんのイイとこ取りの美しい赤ちゃんだ」
と、興奮気味に褒め讃えた。

「本当だよ。目鼻立ちも生まれたてで、こんなにしっかりしてて、目が開くようになったら、どんな瞳の色か、楽しみだね」
産婆の手伝いをした、カリンヌが嬉しそうに笑う。

しばらく赤ちゃんを眺めていたオスカルは、
顔を上げて、jinに言った。


「先生、私たちは先生から生かされた命です。この子の名前を…つけて頂けませんか?」
「え!?…えええ!?」
アンドレも言う。
「オスカルの言う通りだ。先生が今日、ここに来られたのも何かのご縁です。是非、我が子にふさわしい名前をつけて頂けませんか?」

「私が?ですか?責任重大じゃないですか」
jinは、手を振って断ろうとするが、
オスカルの瞳が、じっと見つめて懇願している。

「本当に私でいいんですか?フランス語はわかっても、フランス流の名前の付け方もわからないのに」

オスカルは笑う。
「それを仰るなら、私の名前のオスカルは、男性の名前ですよ?先生が付けて下されば、この子も強運に恵まれると思うんです」


しばし

jinは、考えた。




「では、赤ちゃんの名前を発表しますよ?紙とペンはありますか?」

「紙とペン?」
「母国、日本での命名のやり方です。本当は、日本の和紙と言う紙と、イタチの毛で作った筆、と言うのが必要ですが、こちらでは無いので、紙とペンを…ああ、アンドレさん、ありがとう」

アンドレから、紙とペンを受け取ると、

サラサラと名前書いた。




「では。発表しますね…」
隠していた紙をみんなの前で広げた。


そこには。

大天使ミカエルの、女性版の名前

「 michelle   ミッシェル 」

フランス語と、日本語のカタカナで書かれていた。

「ミッシェル…」

オスカルは嬉しそうに涙をこぼした。

「先生、フランス語の横にある言葉は何ですか?」

「ああ、すみません。日本語でミッシェルと書いています」

みんなが集まり

「日本語は、こんな字なんだね〰️」
「素晴らしい!」
と、ワイワイと立ち話が始まった。


その紙を産婆に渡し、jinは、オスカルが抱いた天使をじっと見つめて、
「この子は、とても利発で優しい子になるでしょうね。2人のいいとこ取りですね」
「先生、ありがとうございます。素敵な名前を、ありがとうございます」
アンドレとオスカルが礼を述べた。


「あ、ではもう夜遅いし、私は今から港町まで降りて、ホテルに泊まりますので、またいつかお会いしましょう」

「先生、ありがとうございました。先生の事は一生忘れません」
アンドレの言葉にオスカルも頷いた。



「生まれたてのbebe(赤ちゃん)は、こんなに小さいんだな。アンドレ」
オスカルがアンドレにミッシェルを差し出すと、おっかなびっくりな表情で、ミッシェルを抱っこする。
「ああ、股に手を入れるんだ。落ちないように。そうそう。ミッシェル、見上げて。パパだよ」

ミッシェルは眠そうあくびをしながら、ウトウトし始めた。


オスカルもアンドレも、ミッシェルのあくびが伝染る。

2人は可笑しくてわらった。


「さあ。もう夜も遅い。ミッシェル、ママンと寝ましょうね」

アンドレからミッシェルを受け取ると、


オスカルは

ミッシェルとアンドレに聞こえるように、

歌うように語った。





la personne que j'aime le plus au monde


C'est toi

Amour…

Je t'aime

Toi et

avec moi



parce que c'est ma vie……






世界の中で一番愛する人


それはあなたです

愛…

愛してます

あなたと

私と一緒に



それが私の人生だから……










あの苦しみを


2人で超えて


始まる人生…。





fin