.~いつくもの苦しみを超えて⑤…~






いつの間にか5話目になってしまいました( ̄▽ ̄;)






フランス革命

バスティーユ戦争の後の、2人を

(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)


私なりの物語を妄想してみました。

当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、この際無し(笑)
で、行きます(._.)

ごめんなさい!

パラレルです(笑)

日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!


また、南プロバンスのアンドレの生まれ故郷の話は、
以前書いた

Fils du destin André  ~運命の子~

から、アンドレの両親、親友等の名前をそのまま使い、連動させています。
合わせて読んで頂けましたら幸いです。


~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨

















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大草原を

馬に乗って、ゆっくり歩いている。

あの森のような大木の下に、アンドレの両親の墓地で出会ったラサーヌの家がある。


「プロヴァンスではね、結構風が吹くんだ。
ミストラルと言って、時には大木もなぎ倒すんだ。それくらい強い風。でもあの大木は昔からビクともしなかった。…どんどん昔ここにいた時の事を思い出すよ」
「そうだな…小さかったアンドレの事を覚えている人たちもいるだろうな。話を聞きたい」
「…よし…ほら着いたよ」
アンドレが馬から先に降りると、オスカルは両手を広げた。

その仕草が愛らしく、即、抱き締めたい位だ。

オスカルを抱いて降ろし
ラサーヌの家のドアをノックしようとした先に

ラサーヌの妻。
カリンヌが現れた。
「アンドレ?…アンドレかい?」
「ラサーヌさんの奥さんって、カリンヌさんだったんですか?」
カリンヌもこのジャルジェ家の元領地に住む娘だった。小さかったアンドレをよく世話してくれた記憶がある。

ひとしきり、自己紹介と、
パリの話をしながら、カリンヌが作ったプロバンスの田舎料理を2人は堪能し、
まるで家族のように4人で楽しいティータイムが始まった。



その最中。
ドアをノックし、入ってきたのはこの領地の長老。
村長だった。

最初に気づいたオスカルは
スッと立ち上がると、長老に近づき、小声で話しかける。
「アンドレ・グランディエの妻、オスカル・フランソワ・グランディエと申します」

「……オスカル・フランソワ……?オスカル・フランソワと言いますと…あの…」
オスカルはティータイムでおしゃべりをしている後ろをチラリとみると、村長に、しぃ!と口元に人差し指を当て、
「村長にだけは真実を話します。外に出ましょう」
と、促した。

家の外にある長椅子に2人は腰掛け、オスカルは静かに村長に話した。

「私は、かつてこの領地の主だった、旧姓、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェです。9歳の時に父上と視察にこちらに伺った時に、村長にお会いした記憶があります。覚えておられるか?」
「覚えております。オスカル様。ですが、ジャルジェ家に引き取られたアンドレと貴女様が何故…」
「アンドレは、私の従僕でした。いや…幼なじみのような関係…と言えば正しいかな?
小さな頃から、ずっと彼は傍にいて、私を守ってくれました。パリでの革命の時に私とアンドレは衛兵隊に所属していましたが、私達衛兵隊は市民側に付き、アンドレも私も国王派に撃たれ一時重症となりました」

「オスカル様が市民側に立って、バスティーユ牢獄を落とされた事は、話で聞いております。貴族階級を棄てて市民として戦った英雄だと。ただ、その後行方不明になられたと聞き、ずっと心配していました」

「先ほども申した通り、アンドレも私も銃で撃たれ、一時重症となり、身を隠していた。体調が回復したのは秋の始めだった。動けるようになってから、私の両親と、アンドレの希望もあり、こちらに参った。来月の私の誕生日には、アンドレと結婚式をあげる。宜しければ……村の方々も来てほしい」



「アンドレと結婚!?」



「そうです。私達は、紆余曲折を乗り越えて、愛し合った……いま、私のお腹にはアンドレと私の子がいる」

「なんと…!?そうだったのですか。よくご無事でこちらに来られました。歓迎致します」

「ありがとう、村長。ただ、この事は、村長だけの胸に収めて戴きたい。私がジャルジェの人間だと判れば、皆さんが恐縮される。私はもう貴族ではない。人間宣言の後、フランスから貴族はなくなったのだ。だが、まだ王制派と市民の部隊は小競り合いをしている。ましてや、私は王制派を裏切った謀反人だ。夫のアンドレと逃げるために、この地にやってきたのだから…」

「かしこまりました。マダム・グランディエ。…そうお呼びすればよろしいでしょうか?」

「まだ慣れていないが、頼みます」

「ではマダム。ご出産の時は、このアンドレの故郷にお戻り下さい。産婆もおりますし、村の女性達もご出産をお手伝いさせて頂きます」

「本当ですか?それはアンドレも喜ぶ!村長、感謝申し上げます」




「村長、オスカルさん、いつまで外でしゃべっているんですかい?お茶が冷めますよ」
ラサーヌが出てきて、2人に声を掛けた。

「ラサーヌ、わしは用事があるから、もう帰るよ。マダムに熱い紅茶を出しておくれ」

「村長、お帰りなさるんですか?」

「すまないな。…ではマダム。またお会いしましょう」

「ありがとう、村長」

オスカルは静かにラサーヌの家に入って行った。






夜。

アンドレとオスカルは、自分達のアパルトマンに帰って来た。

村長に自分達の話をした事を告げた。

アンドレはブロンドを撫で、


何度も何度も優しく頷いた。


今日は、色々な事があったので
オスカルは眠い、とアンドレにもたれかかり、目を閉じて次第に
うつらうつらし始めている。

暖炉の薪がパチンと爆ぜた。


「オスカル……オスカル……?もう眠い?」
「ああ、すまないアンドレ…。今日は色んな事が次々起きて…少々疲れた」
「じゃあ寝間着に着替えよう。マダムの夜着がいい?それともいつもの寝間着がいい?」
「アンドレの寝間着がいい」
「は?」
「アンドレが着ている大きな寝間着がいい。予備がないなら、アンドレと素肌で寝たい」
「予備はあるけど…。なんでまた」
「あの大きさが、いいんだ。私の身体がお前に包まれているようで」
アンドレは可笑しさに耐えられず、大笑いをした。

「なんで笑う?」
オスカルが急に膨れっ面になる。

「いや…。俺の寝間着を着て、俺の身体に包まれてるって思うんならさ、素肌でベッドの中で抱き合えばいいじゃないか?」
「……あ…やっぱりそうだな…その方が暖かいし、疲れも癒える」

そう言うと、オスカルは立ち上がり
「アンドレ、コルセットを外して」
とアンドレに近づいた。

スルリとコルセットが床に落ち、オスカルの肌着が蝋燭に浮かんだが、アンドレは抱き上げて、寝台まで運んで彼女をゆっくりと下ろした。

「今日は寒いから、毛布2枚重ねような」
オスカルは頬を赤らめながら頷く。

アンドレが寝台の横で服を全て脱ぐと、
オスカルが寝ているベッドに入り込んだ。

オスカルはすでに肌着も緩めていて、
脱がして欲しいと夫に囁く。


「俺の奥様は、とびきり可愛い甘えん坊だな」

「ばか。お前と2人きりの時だけだ」

脱がされながら、アンドレが妻の素肌を広い手で這う。

思わず

甘い吐息が漏れた。


「ア……ンドレ…」
「うん?」
「そんなに手を使われたら…お前が欲しくなる…」
「欲しいなら、欲しいと素直に言って。2人とも大怪我をしていた時は、抱き締める事も出来なかったんだから…ほら…見て……俺たちのこの傷…」


2人の素肌に残る銃弾の跡。
だが、手術のやり方が良かったのか、傷口は全て小さかった。



「私たち…傷だらけだな」
アンドレにゆっくりと愛撫されながらオスカルは囁く。



「ああ。生きているのが信じられない位だ。
そしてお前のお腹に、俺たちの可愛い子が宿っている事も…」
「ああ…」



オスカルの吐息は、やがて荒い息遣いになり、アンドレの思うがままに翻弄されてゆく。

アンドレの指使い、口づけ、肌に残す赤い跡…。

全てを互いに差し出し、愛し合う。

もう身分なんてないこの世界で。


まるで


1つに溶け合うように、寝台は軋んでいった。






⑥に続く