~いつくもの苦しみを超えて~④
フランス革命
バスティーユ戦争の後の、2人を
(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)
私なりの物語を妄想してみました。
当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、この際無し(笑)
で、行きます(._.)
ごめんなさい!
パラレルです(笑)
日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!
南方仁(みなかた じん)jin先生です!
大好きなドラマでした。
もし、先生がフランス革命前後の欧州にタイムスリップしていたら、やはり最新医療を当時の道具で作り出し、最新の技術で人助けをしたんではないかと思いながらオスカル、アンドレを託しました。
また、南プロバンスのアンドレの生まれ故郷の話は、
以前書いた
Fils du destin André ~運命の子~
から、アンドレの両親、親友等の名前をそのまま使い、連動させています。
合わせて読んで頂けましたら幸いです。
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住んでいた家の周りに点在する、お世話になった方々への挨拶と、様々なお礼の品を渡した後
アンドレが馭者になり、馬車は南プロバンスへと向かった。
「オスカル、時々休憩を挟むけど、吐き気とか来たら我慢せずに必ず言うんだぞ?」
馭者台から、大きな声がオスカルに聞こえ、小窓をトントンと叩き、返事をした。
元々、ジャルジェ家にあった一番大きな馬車。
座るとクッション性も高く、中にいればそれ程、馬車の揺れを感じない最高級の馬車を改造してくれていた。
両親からの想いが伝わる。
ありがたい。いつか子供が産まれたら、父上、母上に見て頂きたい。
そう思いながら、そっと毛布の下のお腹を撫でた。
パリ近郊の村から、南プロバンスまでおよそ700キロ。
オスカルの体調を鑑みて
約11日~12日間のゆっくりとした長旅となった。
南プロバンスに到着したのは、11月20日。
すっかり冬らしいノエルの飾りが、町のあちこちに飾られていた。
ロザリーの夫、ベルナールが南プロバンスに知り合いがいるとかで、海から1キロ位内陸にある
家々が寄り添う小さな町の3階立ての家が、2人の住まいとして用意されていた。
少し歩けば、小高く広大な草原があり、
アンドレが産まれた村がある所だった。
すなわち、ジャルジェ家の領地である。
到着して、荷物の整理や、部屋の片付けを2人であらかた済ませた3日後
アンドレに連れられて、ジャルジェ家の領地でもある、彼の故郷の小高い草原のある村へと
2人で馬に乗り、向かった。
アンドレの両親の墓参りをする為に。
市場で花束を2つ包んで貰い、オスカルとアンドレは、馬から降りると
ひとつずつそれを抱え、2人は手を繋いで共同墓地へと向かった。
「多分…あれかな…」
遠く見えてきた墓地の、一番小高い場所に、
2つの墓碑が仲良く並んでいる。
近づくと、綺麗に草刈りもされた両親の墓碑があった。
「もっと荒れてると思ってたけど…誰かが掃除をしてくれてるんだな」
アンドレは、半歩下がって墓碑を見つめていたオスカルの手を優しく引き寄せ、
「花束を手向けよう、オスカル」
と微笑む。
可愛い花束が墓碑に手向けられ、2人はゆっくりと座り、祈りを捧げた。
クロード・グランディエ
ソフィー・グランディエ
それが両親の名前。
墓碑に刻まれていた。
オスカルが目をあけると、アンドレの瞳から涙が溢れていた。
「父さん、母さん…。ただいま。…俺の美しい妻を連れて帰ってきたよ。もう2人はこの地から離れない。一生……。さあ、オスカル…」
「お義父様、お義母様…。はじめまして。オスカル・フランソワと申します。…お腹にはアンドレの子がいます。春には産まれます…」
次第とオスカルは涙声になっていた。
「お義父様、お義母様…。アンドレを産んで、育てて下さって本当にありがとうございます。私の宝物は…あなた方の息子、アンドレです」
「オスカル……」
「私の人生の中で、アンドレがいなければ、今頃どうなっていたか…。感謝申し上げます…」
涙は嗚咽となり、オスカルは両手で顔を隠した。
「ありがとう、オスカル…。今頃、喜んでると思うよ。それとも怒られてるかな、俺…」
涙をぬぐい、何故?とアンドレに振り向く。
「伯爵令嬢を妻にした事」
少しおどけて笑ってみせた。
つられて、オスカルも泣き笑いをした。
「…もう、フランスには身分はない。隔たりもない。私はそれが嬉しい」
「お前さん達、クロード達の身内かい?」
背後から声がして、振り返ると50~60歳位の白髪の男性が花を持って丘をあがってきた。
アンドレが振り返ると男性は絶句した。
「クロード……?…いや、そっくりだが、髪の色が違うな」
「はい。僕はアンドレ・グランディエと申します。隣にいるのは妻のオスカル・フランソワ・グランディエです」
「ア…アンドレ!?じゃあ、クロードとソフィーの子の!?」
驚いた顔をして2人に近づいた。
「俺はクロードと同い年のラサーヌって言う木こりだ。小さい時からの親友だった」
「父の幼なじみの方なんですね。ここでお会いするのは奇遇ですね」
「はじめまして。オスカル・フランソワ・グランディエと申します」
オスカルは質素なドレスで会釈をした。
「クロードとおんなじだ。クロードも、アンドレもべっぴんさんの嫁さんを連れてきた。今日はなあ、クロードの命日なんだよ」
ラサーヌという男性は、花輪をクロードとソフィーの並んだ墓に手向けた。
「え!?今日が…父さんの…?」
「ああ、そうさ。あいつは船乗りだった。嵐に巻き込まれてその船は沈んだんだ。あの時の、ソフィーの悲しみの顔は俺は一生忘れねえよ。遺体も戻って来なかったんだから」
「…」
オスカルは黙ったまま、クロードの墓碑を見つめた。
「どうした?オスカル?」
「………アンドレのお義父様の命日が今日……」
「ああ、俺も知らなかった」
「アンドレ、まるで私達夫婦を待ってくれていたような気がする……」
ラサーヌは、立ち上がり
「そうだよ。命日に俺がアンドレ夫婦に逢えるなんて、クロードの引き合わせだ。…で?どうしてここに?」
「おばあちゃんが亡くなって、革命後は、パリも物騒になったんで、妻と俺の故郷のこの地に戻る事にしたんです。オスカルは今、妊娠しているんで…」
「え!?そうかい!?そりゃあめでたい!!いつ産まれるんだ?」
「来年の5月です」
「そうか。クロードの孫か…。アンドレ、何か知りたい事や、困った事があったら、村にくるんだぜ?クロード達が住んでいた家は今はほかの家族が住んでるけど、あとはみんな昔のままだ。みんなお前さんが8歳でジャルジェの領主様のお屋敷に奉公に行った時のままだ。みんな元気で暮らしてる」
オスカルは、8歳のアンドレと言われて、あの日2人が出会った時の事を思い出した。
「あ、そうだ。今から俺の家でみんなと昼御飯を食べないか?うちの家内のプロバンス料理は旨いんだ」
「いいんですか?」
アンドレが困った顔をしていたが、オスカルは嬉しそうに
「プロバンス料理……食べた事がないので、ご馳走になりたいです」
と柔らかな微笑みでお願いした。
「じゃあ、すぐ家内に知らせてくるよ。あと、ここの長老も。アンドレが嫁さんを連れて帰って来たって知ったら、大喜びで来るよ」
家はあの大きな木の下だ、と指差し
ラサーヌは走って行った。
「いいのか?オスカル」
「アンドレ…、この領地は、実は私直轄の領地だったんだ。革命後は、返上したらしいが…。長老とは私が9歳の時にここに父上と視察に来た時に1度会っているんだ。長老だけには、私達の真実を話さなければならないと思う」
「そういう事だったんだ。なら、お会いして挨拶をしないとな」
「ふふ、驚くだろうな。ジャルジェ家の跡取りの私が、この地で生まれ、ジャルジェ家に引き取られたアンドレと結婚する、と知ったら…びっくりして、卒倒させるかも知れないな」
「おいおい、それはまずいだろう?脅かさないように、順序立てて説明してくれよ?」
「うん。大丈夫。ではあの大きな木を目指して、行こう」
2人は墓碑に一礼すると、馬に乗り
ゆっくりゆっくりと、丘を上がって行った。
⑤に続く