バスティーユ戦争の後の、2人を

(もしオスカル、アンドレが生き残ったとして)


私なりの物語を妄想してみました。

当時のフランス社会は無視してください。
オスカルの結核も、アンドレの右目が見えないのも、この際無し(笑)
で、行きます(._.)

ごめんなさい!

パラレルです(笑)

日本人医師は、あのドラマから来て頂きました!


第2話目です😌💓

この作品は、2023年9月に書きました。
一部訂正あり。



~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨



Au-delà de toute la douleur...~いつくもの苦しみを超えて②…~








1789年


9月の終わりになり、外はまるで梅雨のような雨の日が続いていた。


オスカルと、アンドレ。


パリの治安を考え、
先日まで暮らしていたパリのアパルトマンを出て、パリ郊外の自然豊かな戸建ての家を借りて、暮らしている。


先生たちも、同じ理由でパリ中心地を出て
2人の治療のために、オスカル達が住まう家の近くの空き家を拠点に変え、
毎日パリへと向かい、怪我人の治療を無償でしているそうだ。





オスカルはまだなかなか動かせない右腕を縛り、
アンドレの歩行訓練の為に、少しずつ外に出るようになった。
が、最近は雨の日が多い…。

じめじめとした空気が、アンドレの体調を少しだけ悪くしていた。

なので、
jinと名乗った医師から、東洋医学で漢方薬と言う植物を煎じた薬があるので、それを体調に合わせて飲んで下さい、と言われていて
ロザリーが、2人の為に煎じ薬を作っていた。

最初飲んだ時、あまりの苦さに飲み込めなくなり、医師に相談して、蜂蜜を混ぜて甘さを入れて飲んでみて下さい。と
ロザリーは高価な蜂蜜を何処で手に入れたのか、煎じ薬に混ぜて、
一人ずつ違う処方薬の漢方薬を飲んでいた。

「最初は甘いが…後口が、苦すぎる。飲めたものではないな…」
オスカルは、アンドレの寝台に座り、彼の目の前で無理やり飲んだ。

「俺も我慢して飲むよ。オスカルとの約束の為に」
そういって、平然とした顔で飲むアンドレ。

「では私も飲む」
苦々しい顔でオスカルは飲んだ。
「オスカル…顔が、苦いって言ってるよ」
アンドレは、笑いながらオスカルに口づけた。

「ホントだな。苦い」
オスカルの唇を舐めると笑いながらそう言った。

「アンドレ」
「ん?」
「怪我はどうだ?痛むか?」
「痛い時と、そうじゃない時が出てきた。治っていってるな、とか感じるよ。あと、散歩も辛くはなくなったし…オスカルは?右肩と腹部」
「腹部はもうあまり…。右肩は、そろそろ動かすリハビリをしないといけない、と先生から言われている。リハビリしないと腕が動かなくなるそうだ…それは嫌だから…」
「俺も。腕が動かなくなったら、オスカルを抱けない」
「ばっ……!バカ!昼間から何をッ…」
「俺がお前を抱けなくなるのは…嫌だろう?」
オスカルは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「夫婦、だからな。私たちは。嫌に決まってる」
「じゃあ、2人とも頑張ってリハビリだな」
「……うん…」


久しぶりの秋の青空の下。

2人は、家の近くを、リハビリも兼ねて散策していた。



「リハビリ、頑張って下さいね」
そう、後ろから声がしたので、2人は振り返った。
jin先生だった。

「先生…。リハビリを続けて、どのくらいで治りますか?」
アンドレが、先生に聞きたかった事を口にした。

「そうですね…。アンドレさんは11月の終わり位かな。マダムは来月10月の終わり位かと思いますよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「私たちは11月の半ばまでフランスにいます。アンドレさんの完治をみる事は出来なくなりそうですが、知り合いのパリの外科医にリハビリ方法と、処方を頼んでいますので、ご安心下さい」
「先生…本当に…ありがとうございます」
オスカルはすっかり慣れた女性の服で、女性らしい美しいお辞儀をした。

「先生の手術の技術は素晴らしいと伺いました。どちらで学ばれたのですか?」
「ああ…それは…」
jin先生は、口ごもり
「私のオリジナルがたまたま技術的に良かった、と言う事になるのかな?これからも色んな国の外科医に伝えないといけない、そう思っています。命ある限りにね」
頭をかき、照れながら話す。

「では、私は今からパリに行き、怪我人の治療がありますので、失礼致します。アンドレさんの散歩はそろそろ引き上げて、安静の時間を取ってあげて下さいね、マダム」
軽く2人に頭を下げると、jinは走って行った。


「日本人は…会釈が挨拶なのだな。東洋人と私たちは、挨拶の仕方も違う。不思議な人だ…。屈託のない笑顔で、誠心誠意私達に尽くして下さる。他の方々にもそうなんだろう…。よくあんな遠い国からこちらまで…大変だったであろうな」
「そうだな…」
オスカルが振り返るとアンドレは倒された木の幹に腰かけていた。
「アンドレ、疲れた?」
「少し…ああ、でも大丈夫だよ」
「帰ろう、アンドレ。帰って、苦~い、お薬を飲んで、2人で休もう。夕方にはロザリーが夕食を持ってきてくれる」
「ああ…」

アンドレはゆっくりと立ち上がり、オスカルの左手と手を繋いで、パリ郊外の緑豊かな道を歩いた。







「隊長とアンドレはどうしてる?」

アランは、オスカルの居る郊外へと向かう辻馬車に乗り込もうとしたロザリーに声を掛けた。

「まあ!!アランさん!傷は大丈夫ですか?」
「ああ、もうすっかり。…で?2人の様子は?」
「オスカル様もアンドレも、本当に良くなられて…。お2人ともリハビリの最中です」
「そうか…良かった…」
「オスカル様は10月の終わり位にはリハビリも終わるそうです。アンドレも11月の終わりには、と先生から伺いました」
「あんな大怪我だった2人が…!?あの先生たち、すごいな!」
「かなりの名医だそうです。その技術を世界中に伝える為に外遊をなされているとかで…。あ、私、今からオスカル様の所に向かいますので…」
「あ!引き留めて悪かった。実はこの手紙を隊長に渡して欲しいんだ。パリの今の状況が書いてある。まあ…もう行方不明扱いになった隊長には、関係ないんだけどな」
アランは、ロザリーに少し厚みのある封筒を渡した。
「判りました。オスカル様にお渡ししますね。アランさん、どうぞお気をつけて」
「おう、ありがとよ」


辻馬車が見えなくなるまで

アランは見送った。


「パリは、これからも落ち着かねえぜ、隊長。傷が癒えたら、もっと遠くに逃げてくれよ、アンドレと一緒に…」

そう呟き、アランは元の道を走って行った。








「アランからの手紙?」
夕食を持ってきたロザリーから手渡されたアランからの手紙を受けとると、封を切って中身を開けた。
「オスカル様、料理の支度が出来ましたらお声をお掛け致しますね」
「ああ。ありがとう、ロザリー」




便箋10枚にびっしりと書かれた、パリの状況。

テーブルに座り、オスカルは何度も何度も読み返した。

「オスカル…。パリは。お屋敷はどうなっている?」
「パリは、今は大きな戦闘はなくなったが、深刻な食料不足だそうだ。パリ市民たちの飢えは、また新たな火種を生むだろうと…。あと、革命そのものに対抗する為に新たな軍隊がベルサイユに向かっているらしい。そうなれば、ラ・ファイエット将軍が率いる3万人の国民衛兵隊が動いて、また大きな戦闘になるやも知れぬと…」
「アランのいる国民衛兵隊…」
アンドレはため息をついた。
「アランも病み上がりだ。無理をしなければいいんだけど……」
アンドレはオスカルから渡された手紙を読む。

「オスカル、最後まで読んだか?」
「あ…いや…すまない…私はもう除隊した人間だ…読む必要もない」
「リハビリが終わって、体力が戻ったら、ここよりもっと遠くに行った方がいい、と書かれてる」
「どうして?」
「アランは心配しているんだ。お前は貴族の身分を棄てて、市民側に付いた、言わば、国王派から見れば謀反人扱いだからだよ。いつまた狙われるか判らない。アランはそれを心配しているんだ」
「謀反人…か…確かにな」
オスカルは、ふふっと笑い、怪我した右腕を擦った。
「これでは、狙われてもおかしくないな」
「冗談じゃない、オスカル。俺たちはどんな手を使っても生き延びるんだ。お前のご両親からもそう言われただろう?」
「…そうだな…」
「俺の家族は、もうお前しかいない」

オスカルは、その言葉で
ハッと胸に痛みが刺し、アンドレを見上げた。

そうだ。ばあやは私達が死んだと思って…心弱くなり、亡くなったんだ。
アンドレの家族は、もう私しかいない…。

オスカルは動かせる左腕を伸ばし、アンドレを抱き寄せた。

その時

「オスカル様、アンドレ。晩御飯を御用意しました」

ロザリーの明るい声で、2人はパッと離れた。

離れる必要はないのだけど…。
私達は夫婦なのだから…。

だが、まだ結婚式は挙げられない。
怪我が完治してからだと決めていた。

「パリ中心地は食材も乏しいので、途中の小さな村や町で食材を沢山買って来ました。しばらくは買わなくても大丈夫です。だから作りに来ますね」

「ロザリー…」
「はい、オスカル様」
「お前…お腹が…」

少し膨らんでいるのに気づいたオスカルは、ロザリーの腕を引き寄せ、お腹に手を当てた。

「こんな騒々しいのに、妊娠6ヶ月なんです」
「そうなのか!?おめでとう!ロザリー」
オスカルは立ち上がると、ロザリーの額に口づけた。

「こことパリの往復も、大変だろう…。無理をしなくてよい」
「ダメです!オスカル様もアンドレも、腕が使えないじゃありませんか。それに私が来たくて、ここに通っています。ベルナールにも、お二人のリハビリが終わって、何処かへ行ける時まで、そばについていなさいと言われています」
「ベルナールが…?…ベルナールにも申し訳ないと伝えてくれ」
「大丈夫です!さあ、お料理、冷めますから、食べましょう!」
明るく朗らかな声でロザリーは、テキパキと配膳をするのであった。



陽が暮れる前に、ロザリーは待たせていた辻馬車で帰って行った。

ロザリーが帰ると、入れ替えに、jin先生がパリから戻ってきて、2人の傷口の消毒と、新しい包帯を巻き直し、ロザリーの料理を食べるのが日課になっていた。

jin先生は、特にシチューが大好きで、シチューのある日は、ロザリーに多めに作って欲しい、と照れながら話していた。

マールテン・ホッタイン医師は、最近は教会に泊まり込み、ずっと怪我人の治療にあたっていた。





「jin先生は、ヴァンショーはお好きですか?」
オスカルは、あれなら片手でも作れる、と思い、咄嗟に口にした。
「ヴァンショー…って、ホットワインの事ですよね?大好きです」
「良かった。今日、材料が来たので是非とも先生に飲んで頂きたくて…」
オスカルは立ち上がるとキッチンに向かった。
アンドレが
「俺も手伝うよ」
と席を立った。


幸せそうな2人を見ながら、jinも嬉しそうに笑う。

(18世紀の医療体制では、あの2人はとうに命を落としていた…。あの2人で、歴史が変わるとは思わないけど…生き延びて、幸せな暮らしをして欲しいと思うな…)




そう、ぼんやり考えていた時




キッチンから、アンドレの大きな声が聞こえた。

あわててjinはキッチンに駆け寄る。

見ればオスカルが
「吐き気がする…」
と、青い顔をしてアンドレに必死に捕まっていた。






「とにかく、オスカル様をベッドへ運びます」
jinは、軽々とオスカルを抱き上げ、ベッドへと運んだ。


アンドレは、何がなんだか判らず

ただオロオロとするばかりであった。








③へ続く