Castor et Pollux ~ Vivre. Dire je t'aime... en Normandie.~カストルとポルックス~生きると言う事。愛すると言う事… ~ノルマンディーにて~



Twitterで、前回のお話の(~③~Le ciel nocturne d'Arras et ce que signifie aimer ~アラスの夜空と愛すると言う事~)
その後を書いて下さいと、沢山リクエストを頂き誠にありがとうございます。
オスカルにベビーが生まれるお話、皆様が沢山、書かれていますよね。
とても幸せそうです。

私も、ちょっと書きたいなと思いまして、番外編として、チラッと書こうかなと…。

リクエストして下さいました皆様、誠にありがとうございました♥️

今まで書いたタッチとは少し違う、最終話です。
どうぞ、ご一読くださいませ♥️





~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨





1789年7月14日

フランス革命がついに

勃発。

オスカルは、その前の1789年1月末にフランス衛兵隊を退役し、結婚したアンドレ(ジャルジェ家の親族の伯爵称号を与えられた為、正式には、アンドレ・エドゥアール・グランディエ伯爵)と、2月にエドゥアール伯爵の領地がある、ノルマンディーに、
ジャルジェ家から8人の使用人、そして執事達と向かった。

その4月に、オスカルの妊娠4ヶ月が判り、
屋敷は大喜びに満ち溢れ、本家からも沢山の祝いの品が届き、2つの広間が荷物で埋め尽くされている。



ノルマンディーでの生活は、
ベルサイユや、不穏な空気漂うパリに比べれば
慌ただしくも、穏やかな日々が続いていたが、
オスカルは、衛兵隊の事が気がかりで、ひそかにベルナール経由で、元部下のアラン・ド・ソワソンにも情勢を知らせて欲しいと、手紙のやり取りをしていた。
ベルナールにも、手紙を添えている。


そして7月になるとアランからは手紙が来なくなり、
14日に暴動から革命が起きた事を、新聞で知った。


オスカルは、あのギリシャ神話のようなマタニティードレスを身に付け、
顔は青ざめた、形容しがたい苦悶の顔で、新聞の隅々を読み漁る。


市民が勝った。

堕落した貴族の世は、終わりを告げた。


アントワネット様のせいではない。
が、すでにアントワネット様が輿入れされた時には、革命のカウントダウンは始まっていたのだ。

妊娠7ヶ月を迎えたオスカルの身体は、以前と変わらず華奢な細身だが、マタニティードレスのお腹の部分は、ふっくらと丸みが出てきた。


頭の中は軍人。

だが、自分の体内には新しい生命が宿っている。
母の身体なのだ。


アンドレから
「お願いだから、情勢の事を我が身に置き換えて、イライラするな」
と、何度も忠告された。

わかっている。

だが、革命だ。

時代がどのように変わるのか、この眼で見なければならない。

そして



父上、母上の事。

ばあやの事。

ジャルジェ家に残された使用人達。

反旗を翻した元部下達の安否。



偽名で、ベルナールに手紙を送っても、全く返信がない月が、革命から3ヶ月続き…


1789年10月始めに、漸くベルナールから返信が来た。

「ロザリーだけ、ノルマンディーに行かせたい。パリは危険過ぎる。彼女は妊娠している」

と。短い内容だった。



慌てて、オスカルはアンドレに話し、
「ロザリーに、こちらに来てもらおう」
とアンドレが馬車の手配をし、パリに向かわせたのが2週間前。

ジャルジェ家への手紙も共にパリへ。

10月も終わりになる頃、

ロザリーがノルマンディーの屋敷に漸くたどり着いた。

オスカルは11月半ばが出産予定日になっていた。


「オスカル様!」
「ロザリー…無事だったか…良かった」

マタニティードレスにコート姿のオスカルを初めてみたロザリーは、最初は驚いたが、
オスカルに抱き寄せられて、安心したのか、涙が止まらなかった。

アンドレは、2人の包容を見て、ホッとした。

ロザリーは、妊娠4ヶ月に入っていると手紙に書いてあった。

「オスカル様とアンドレ……、あ、アンドレ様のお子様と来月会えるなんて、私は幸せです」

ロザリーは、にこやかに笑って2人を見上げた。

「ロザリー、俺に、様はやめてくれよ。慣れないんだ、全く」
アンドレは長椅子に座るオスカルの横に立ち、肩をすぼめた。


「ロザリー…ベルナールは、大丈夫なのか?」

「あの人は、大丈夫です!むしろ、私の事ばかり心配していて、こちらに行ける手筈が整った時には、喜んでいました。安全な場所で、安心して子供が産めると、とてもオスカル様に感謝していました」

「そうか…」
オスカルは安堵した。

「ジャルジェ家の様子は判るか?」

「ベルナールとアランさんが、真夜中に何度かお屋敷に向かわれ、執事や、奥様と会われたそうですが、旦那様は国王陛下を御守りすると言われ、屋敷に使用人数名と残られ、奥様やばあやさん、あと、使用人6名がアラスのお屋敷に今向かわれてるそうです」

「母上と、ばあやがアラスに!?」

ノルマンディーとアラスなら、近い。

「オスカル様、奥様はアラスに荷を下ろされましたら、ノルマンディーに来られ、オスカル様がご出産されて、落ち着かれるまで一緒にいますとの仰せでした」

アンドレが

「奥様と、おばあちゃんがノルマンディーに…」

胸が熱くなった。
奥様と、おばあちゃんに俺たちの子を抱いて貰える…。
もう、会えないと思っていた。
だから、余計に胸が震え熱くなる。

「アンドレ、良かったな。私も安心した」

「ああ。だけど、旦那様は…」

「ジャルジェ家は代々王室に使えている軍人一族だ。どうなるかはまだわからない。ただ、父上の事だ。結論を出すのは当主、父上の決めた道だ。私からは、逃げろとは言えない。むしろ…」

「むしろ?」
アンドレが、オスカルの横に跪く。

「革命だ。フランス王朝はいずれ消える。貴族も消える。フランスに新しい時代がくる。父上もそれはお分かりだ。覚悟はある」

「ああ。そうだな。貴族も消えるな」

「アンドレ、2月にこちらにくる前に、2人で話した事は進んでるか?」

「手筈は整えたし、既に始めてるから大丈夫」

「オスカル様、手筈って…」

「ああ。今はまだ話せないんだ。ただ、私たちは、貴族の身分を返上しようとしていた矢先の革命だった。だけど、いつかは貴族身分も消えるだろう。その為に、どうこれから生きていくかをアンドレと話し合っていたんだ。母上がノルマンディーに来られたら全てを話すよ」

と、いい終えると、オスカルは、
うっと、小さく唸った。

「オスカルどうした?」

「お腹の子が、思い切り蹴ってきた。はは、話が長いぞ!と腹を立てたんだろう」

アンドレは、微笑むとオスカルの横にゆっくりと腰を掛け、膨らんだオスカルのお腹を撫でた。
来月を臨月に迎えた膨らみは、かなり目立つようになっていた。

「アンドレ。まだノルマンディーは平和だ。平和なうちにお前の子を産んでしまいたい。…もしここも危険となれば、外国に向かうか、偽名でここに残るか…」

「大丈夫。手筈は整えているから」

「そうか。…あ、アンドレ。少し横になっていいか?お腹がツラい」

「あ!すまん!」

アンドレは、妊娠のオスカルを抱き上げ、寝台に運んだ。

そして振り返り、

「ロザリー。君の部屋も用意してるから。荷物を運ぶよ」

そういい、寝台にオスカルを下ろし
「ちょっと失礼」
と、妻に口づけし、ロザリーと部屋を出た。


アンドレは、すっかり伯爵の衣装が身に付き、立ち振舞いも、オスカルが見ても素晴らしく良い男の姿だった。

否、前から良い男、だったけどな。

ふふ、と笑うとオスカルは目蓋を閉じて、眠気に負けたように寝息を立て始めた。









冷たい風が強く吹き始める11月のノルマンディー地方。
今年も凍てつく冬の到来が近づいた11月18日

11月始めにアラスからノルマンディーに到着した、ジャルジェ夫人とばあや、産婆が見守る中。


10時間の陣痛を耐え

オスカルは、双子を出産した。

1人はオスカルの産まれた時を思い起こさせるような、金色の柔らかな髪の毛をした女の子。
長女になる。

2人目は、美しい黒髪の男の子。
長男になる。

「オスカル様、お二人とも本当に天使のように美しく可愛い、双子でございますよ」
ばあやは、涙眼でまだ息の荒いオスカルの側に、ジョルジェット夫人と、産まれたての双子を1人ずつ抱っこし、母オスカルに見せた。

侍女から呼ばれたアンドレも、産室になっていた部屋に通された。

「ほら、アンドレ!もう、天使みたいにお可愛いお二人だよ。オスカル様は本当に頑張って…」

その後はばあやは声にならない。
鳴き声で、言葉にならなかった。
ジョルジェット夫人も、オスカルを見つめ、涙眼になっている。

「母上…。母上も、こんなに苦しまれて、私をこの世に誕生させて下さったのですね…。感謝申し上げます」
「オスカル。漸く最後の愛娘が、孫を産んでくれた喜び。父上にもお伝えしたいわ。ああ、アンドレ」

「はい。義母上様」

義母の腕で小さな寝息を立てて、寝ているブロンドの長女を、アンドレの腕に渡す。

ばあやは、長男をオスカルに抱っこさせた。

夫人が

「オスカルとアンドレの子供の時のような、不思議な光景ですね。オスカルの腕に、小さなアンドレ。アンドレの腕に、小さなオスカル…」

「私はこんなに可愛いかったのですか?」
汗に濡れた前髪を少し横に払い、オスカルは母に尋ねた。

「もちろんです。あ、でも鳴き声が元気過ぎて、旦那様がお前を男として育てる!と決めたものだから…。あの時はショックでした」

「母上、でも、私は14歳で普通に、見知らぬ男性の嫁に行っていたら、アンドレとは逢えませんでした。男として育てて下さって、今は感謝しております」
オスカルは腕の中のプチアンドレを見つめ、微笑んだ。

「オスカル…ありがとう。双子だなんて、まるでカストルとポルックスだ。最高に嬉しいよ」
そう言う涙声のアンドレに、私も嬉しいと笑うと

オスカルは、プチアンドレのピンクの頬に手をあて、幸せいっぱいの笑顔で撫でた。

双子の名前は
長女がクラウディア
長男がマリウス
と、名付けられた。



オスカルは
我が子を乳母を着けずに自分で育てる。

それが、彼女の強い意志だった。
何も知らない、出来ない女になるのは、心の底から嫌だった。
侍女や、母上、ばあやは手伝ってはくれているが、母乳を飲ませる事だけは、今後の生き方を考えて、自分だけでやりたい。
そう思っていた。

そんな風に、大忙しで我が子を育てている間にも、ベルナール宛に、情勢を知る為、手紙のやり取りは続いている。

こちらからは、
2月14日にロザリーが、男の子を出産したことも。
名前はフランソワになった事も書き記した。




アンドレと言えば。

エドゥアール伯爵領地内にある、広大な林檎農園の収穫後の作業を、そこで働いている大勢の作業員たちに、聞き、自らも汗水流しながら、
蔵の中で、林檎の酒
ノルマンディーの名産
ヴァンショーを作っていた。

また、放牧エリアもあり、そこではノルマンディーチーズや、生バターの生産もしている。

そこから、アンドレは領地の人々との強い信頼関係を作っていた。





1790年春を迎える頃

ばあやは、大往生で息を引き取った。
アンドレも、オスカルも、屋敷に住む者みな悲しみ、微笑む安らかなマロン・グラッセの葬儀をただ静かに執り行った。


そして。

生後5ヶ月を迎えた双子の天使と、ロザリーが2月に産んだ生後2ヶ月半の乳飲み子を、侍女がベビーベッドに並べて寝かせつけた後、
オスカルは、久しぶりに男装し、
使用人、屋敷に出入りしている口の固い仲間たち、皆を呼んだ。

「母上には先ほど、先に聞いて頂いたのだが…」
オスカルは、母上の顔をみやると、そこにいる皆に話した。

「いずれ貴族身分はなくなる。そうなると窮地に立たされるのは、私たちだ。領地は貴族扱いにはならないだろう。その為に、私たちは、一市民として、この領地を買い取る用意もしている。
この広大な林檎農園で、私達は、領地に住む皆さんと共に、商人として酒造りを生業とし、またこのノルマンディーの特産物を海外と取り引きする事も視野に、去年からアンドレに動いてもらっている」

アンドレはゆっくり頷く。

そして続けた
「オスカルの言う通り。伯爵の身分はこちらから返上する手筈も整えて、私達は近い将来、ノルマンディーの地域性を生かした、領地だけでなく、それ以外の人達も潤う生活が出来るよう、商社を立ち上げる事にしました。その為にはまだ人が足りない。もう少し落ち着いたら、商社で働いてくれる人たちを募るつもりです」

ジャルジェ夫人は、アンドレとオスカルを見つめ、口をあけた。
「わたくしは、主人の今後の事を考えて、アラスに戻り、頃合いをみてベルサイユに戻ります。主人がいる場所に」

オスカルは驚いた。
「お待ち下さい母上!危険過ぎます!」

ジャルジェ夫人は手でオスカルを征し、続けた。
「オスカル。貴女にアンドレが必要な様に、わたくしは、主人が必要です。わかりますね…。もう、オスカルの事は全てアンドレにお任せ致します」

ジョルジェットの決意は固い。
オスカルを産んだ母。

決めた事は、決して曲げない、静かな決意。

オスカルは座り込んでしまった。
すぐさま隣にアンドレが近寄って、彼女の背中を擦った。

「オスカル、悪い方に考えるな。神様は必ず守って下さる」
「母上、せめてもう少しだけ、アラスに留まって下さい…」
夫人は、笑顔で首を振った。


「わたくしと、主人は、貴女と同じように大恋愛だったのですよ。だから、母の我が儘を許して下さい」
「母上…」
「義母上様…」






その3ヶ月後、母、ジョルジェット夫人は、共を連れアラスに向かった。


暫くは滞在していたようだが、オスカルとの手紙のやり取りも、しばらくして不可能になってしまった。

ベルサイユに、危険を犯してまで戻られたのだ…。

辛くて、苦しくて、オスカルはアンドレの胸で、何度も泣いた。
止められなかった歯がゆさに。

アンドレは、ゆっくりとあやすように妻の背中をさすり、
「もし、旦那様が俺で、奥様がオスカルだったら、お前もベルサイユに戻るだろう…。ジャルジェ一族は、愛情深い血を、みな受け継いでいるから」

コクリと胸の中でオスカルが頷く。

「オスカル。俺たちは生きなきゃならない。もう、2人だけじゃない。ここで育まれた絆がそだって来ている。みな、仲間だ。領民じゃなく仲間だ。
信頼の置ける仲間と共にこの先、一緒に生きていく。それが今の俺たちの使命だと信じてるよ」

商社を作った時、伯爵のエドゥアールを使うのを止めた。危険が及ぶからだ。
一市民として商社を立ち上げないと、何が降りかかるかわからない。
ノルマンディーがパリから遠くても、いずれフランス全土の政治は、革命を成功させた市民政治家に掌握される。

商社の名前は
グランディエ商会
となった。
アンドレも、エドゥアールの名前は消し、オスカルも、オスカル・フランソワ・グランディエ
と名乗り、一市民として商会を夫、アンドレと、
また、領地の民や、運営に詳しい人々と切り盛りしている。

ロザリーは、ノルマンディーに来て、子を産み
一年経った頃にパリにいる夫、ベルナールの元に帰っていった。

相変わらず、ベルナールとの手紙のやり取りは続いているので、パリの情勢は把握していた。
ノルマンディーで、一市民になり、領民や、様々なスキルを持った仲間と商社を立ち上げ、海外に販売ルートを作っている事を書くと、ベルナールは、色々人材を紹介してくれた。



1893年
2人の子供
クラウディアとマリウスは、秋には4歳になる。

子供たちは、ジャルジェ一族の子供だとは知らない。
平民…いや、今は市民と呼ばれる身分の夫婦の子供として、ノルマンディーでのびのびと育っている。


子供たちを寝かせつける為、オスカルは2人のベッドに入り、色んな童話や、星座の物語、ギリシャ神話などを話して聞かせた。

「お母様」
クラウディアが少し眠そうに尋ねる
「何?クラウディア」
「お母様とお父様は、どうやって出会ったの?」

ああ、そうだ。
忙しくて、両親のなれそめなど、この地では誰にも話してない事を思い出した。
仕事の仲間は、わざわざ聞いてくる者もいない。

でも、子供達には少しは話そうか。
双子の、ブロンドで、碧(あお)い瞳の娘と、
漆黒の髪で、濃い緑がかった、アンドレそっくりの息子に話始めた。

「私と、お前たちのお父様は、幼なじみだった。小さな時から、お父様は私を守ってくれていた、優しい人だった。だから私はお父様を一生愛すると誓ったんだよ」
「お父様も?お父様もお母様を一生愛するって誓ったの?」
「そうだね。お父様の方が、私以上に愛してくれていると今でも感じるよ。だから、私はお父様への愛する気持ちに追い付こうと、いつも努力してる」
「お母様、素敵なお話ね。私もお父様のような人と結婚したいな」
クラウディアは、オスカルそっくりに笑うと、ひとつあくびをした。
マリウスはいつの間にかウトウトしている。

その時
子供部屋のドアが開いた。

「ああ、やっぱり。ここにいたのか」
アンドレが寝台に近寄り
「子供は寝る時間だよ。もう寝なさい」
にこやかに子供達の頭を撫で、ダウンケットをそっと首もとまで上げた。
「はあーい」

「クラウディア、マリウス。じゃあ、お母様も眠いみたいだから、連れていくよ。おやすみ」
双子にアンドレがキスをし、寝台から降りたオスカルも、子供達にキスをして子供部屋から出た。


「お疲れ様、オスカル」
誰もいない廊下で、2人はキスをした。

「アンドレ」
「ん?」
ひょいとオスカルを抱き上げ、頬に口づける。

「ようやく、一区切りついたと思う」
「ああ、そうだな。ここに来て4年か…。色々あったから、あっという間だったな」
アンドレは、オスカルを抱き上げ、2人の寝室へと向かった。


先日、国王陛下に続き、アントワネット様も処刑されたと知った。

お二人はお幸せだったのだろうか?
と考えては苦しくなる日々も過ごした。


1793年1月
ルイ16世は裁判にかけられたのち、ギロチン刑に処された。
そして、 ルイ16世が亡くなった同年8月。
マリー・アントワネットは、
パリのシテ島にあるコンシェルジュリ監獄に移された。そして2ヶ月後の10月に裁判が行われ、
死刑判決となり、
革命広場(現在のコンコルド広場)でギロチンにかけられ処刑された。

ブルボン王朝の歯車が狂いだしたのは
一体いつからなのだろうか?

答えはわかっていても、あの時代は戻らない。

少年のような正義感で、近衛隊を率いた昔のベルサイユの輝きも。

アンドレからずっと長い間、愛されていた若き日々も。

2度、あの時代は戻らない。

ただ、判る事はひとつ。



ここ、ノルマンディーで、2人が守るものが増えたと言う事。

仲間は家族であり、兄弟だと。

この信頼関係を真っ先に作り上げたのが、人懐っこいアンドレ。

私一人では到底、この地で生き延びれなかった。

そういうと、寝室のドアを開けたアンドレが、爽やかな笑顔で言う

「お前がいなかったら、俺もいないよ。俺たちは半分自分で、半分はお前のもの。お互いにな」

オスカルを寝台に下ろすと、アンドレも隣に入り、毛布を寄せて、2人は身体を近く近く寄せ、心臓の音が聞こえる程に密着させた。

冷えたオスカルの身体が、アンドレのぬくもりで、次第に手先まで血が通うような感覚になる。




アンドレの顔がオスカルに寄り、
ゆっくりと唇を重ねる。


オスカルは、両腕をアンドレの頭に絡めると、囁いた。

「アンドレ。良いはなしがあるんだけど…」

「仕事の話?…それなら、明日聞きたいな」

アンドレ手がオスカルの感じるラインを指で撫でながら、お腹まで達した時

「そこに」とオスカルが呟いた。

「ん?どこに?」

「だから、お前が今、手を置いてる所」

「お腹がどうした?痛いのか?」



オスカルは、ゆっくりと深呼吸をすると、
アンドレの頭を抱き寄せ、耳たぶに口づけ、
耳元でこういった。





「アンドレ。新しい生命がそこにある」






また

新しいストーリーが二人の間で始まるのだ。




fin