~①~Le ciel nocturne d'Arras et ce que signifie aimer ~アラスの夜空と愛すると言う事~
#R-18 #ベルサイユのばら
#オスカル #アンドレ #AO #ladyOscar #2次創作
#ラブラブ新婚旅行
前回の小説
Histoire de la nuit de Noel ~ノエル夜話~の、続きになります。
ドタバタ仕事をしていて、中々書けず…。
あと、当時のアラスを調べたりしてました。行った事がないので、資料を探すしかないですものね💦
急遽、ジャルジェ夫妻の取り計らいで、オスカルの誕生日(ノエル)にささやかな結婚式をあげた、オスカルとアンドレ。翌日からはアラスに視察と名目上の2人きりの旅行だった筈が、いきなり新婚旅行となりました(笑)
どうなるんでしょうね?
甘々だけではないような(笑)
で、終わりそうにないのです!
話が長くなりそうなので、①、②、③?
と続けさせて頂きます。
すみません!
宜しくお願い致します(._.)
~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨~✨
1788年12月26日
ノエルの翌朝。
日の出前にオスカルとアンドレは馬車でアラスに向かった。
ジャルジェ夫人の計らいで、お供は一人も着けず、見送りもなかった。
アンドレが分厚いコートを纏い、馬車を走らせている。
出発の時は寒さの方が勝っていたが、陽が昇り始めると、次第に真冬とは思えない程、太陽が暖かく感じてきた。
時折、小休止をはさみつつ、夕方迄にはアラスに着く予定。
途中、小さな町があると、必ず止まり、2人は土地のお酒や、食材等を買い込み、
そして、お互いが気になる物を見つけては、見せ合い、買ったり、笑い合ったりした。
「あ…」
小さな町には珍しく、オートクチュールの洋服の店があり、オスカルは気になって立ち止まる。
店先のガラスから奥に飾られている淡い紫のグラデーションの、ラインが珍しいドレスを見つけた。
(美しい……)
「オスカル?どうした?」
荷物を抱え、先を歩いていたアンドレが振り返り、オートクチュールの店先まで戻った。
「アンドレ、入っていいか?」
「ああ。どうぞ、マダム」
オスカルは扉を開けた。
店内に見本品として飾られているドレス。
その全てが、ベルサイユでは見たこともない
まるでギリシャ神話に出てくるような流線形のシルエットの美しいドレスたち。
「これは、すごいな…」
アンドレが見たこともないデザインのドレス達を、見つめている。
「特にこの紫のグラデーションのドレス…」
と、アンドレが指差す先の奥から、オーナーらしき夫人が出てきた。
「お探しでしょうか?ムッシュー」
オスカルも、普段の通りの男装をしていたから、男2人が入店したとオーナーは勘違いしていた。
アンドレが
「勝手に入ってしまい、申し訳ありません。…その…妻が…ドレスを気に入ったようで…」
と、黙っている隣の彼女を見た。
「まあ!これは失礼!美しい殿方がおられるとばかり…」
「はじめまして。わたくしはオスカル・フランソワと申します。隣はわたくしの夫、アンドレと申します。…あの…」
と、オスカルが指を指す。
「美しいドレスですね」
「メルシー。全て、私のインスピレーションで製作しております。ギリシャ神話をテーマに」
「やはり…」
「あら。気に入られましたか?あちらのドレス」
「え?あ、はい。美しいグラデーションで、ベルサイユでも見たことがありません」
「あら、貴女、貴族のご令嬢?…男装の?」
紅いドレスを纏ったオーナー夫人が、しげしげとオスカルを見つめた。だが問い詰めはしない。
それが夫人の鉄則であり、マナーでもある。
「この店は、貴族の方もよくいらっしゃいます。舞踏会用ではなく、趣味のお芝居の衣装としてや、部屋着、ギリシャ神話風マタニティドレスとして…などね」
「部屋着……。マタニティドレス…?」
「どこも身体を締め付ける所がないのが私のドレスの特徴です。まさにギリシャ神話に出てくるお洋服ね。…ああ、マダム。その紫のグラデーションドレスは、花から手染めした珍しいドレスですの。二度と作れないものです。宜しければご試着なさる?」
はい!
と、返事をしたのはアンドレ。
いいのか?とオスカルは見上げた。
「似合うと思うよ」
じゃあ…。
と、オーナーとオスカルは、奥に入って行った。
しばらくして。
「旦那様。奥様をどうぞ、ご覧になって」
奥から、美しいグラデーションの
ギリシャ神話に出てくるようなドレスを身に付け、
ブロンドの髪には、オリーブの葉の冠をつけて出てきた。
オスカルのブロンドが、よりいっそう輝いて見える。
「どう……?アンドレ」
美しすぎて、言葉もないアンドレ。
「部屋着にしてはもったいないな」
オスカルは笑った。
「いや…。とても似合うよ。きれいだよ、びっくりしたんだ」
目の前に現れた
アフロディーテ
「そうでしょう?オリーブの冠は、私の趣味で着けて頂いたのですが、本当にお似合いです。マダムが女神に見えますわ」
アンドレにずっと見つめられ、
オスカルは、恥ずかしくて下を向いた。
オーナーは、
これはきっと貴女に出逢う為に作らされた作品だわ。本当は、オートクチュールで製作日数を頂くのだけれと、もし、これで宜しければお売りさせて頂きますわ。
と、にこやかにオスカルを見つめ、頷いた。
「ありがとうございます」
2人は礼を言うと、買う事に決めた。
アンドレの薦めもあり、あと数着オーダーもした。
途中、あの店で長居をしたが、馬車は馬を走らせ、定刻より少しだけ遅く別荘に到着した。
馬車の中には荷物と共に、2人が選んだあのドレスも美しい箱に収められている。
別荘には、管理人の夫婦のみがおり、既に晩餐も用意されていた。
途中で買い込んだ食材と、ささやかなプレゼントを渡すと、恐縮されながらも喜んでくれた。
久しぶりだね。息災だったか?
とオスカルが笑顔で夫婦に話しかけると、恭しく頭を下げ、晩餐が終わりましたら片付けに参ります。と言うので、アンドレは
「もう遅いから、お休み下さい。片付けは俺がやりますよ」
と、にこやかに笑う彼をみて、オスカルは
こういうさりげない優しさが、愛おしいんだ。
と、心で思う。
久しぶりのアラスの別荘。
久しぶりの部屋。
綺麗に片付けてあり、あちこちに薔薇が飾られている。
部屋中、甘く清々しい香りで満たされていた。
晩餐も終わり、寛いでいると、アンドレが
「長旅疲れただろう?湯浴みの用意が出来たから、冷めないうちに入っておいで」
と、手を差し出す。
その手をそっと握り、立ち上がると
「アンドレ、…2人で入らないか?」
とオスカルは下を見つめながら呟く
ドキリとしたアンドレの表情。
屋敷では、侍女達がオスカルの湯浴みの世話をする。
今日からアラスだ。
侍女はいない。
その役目をしないといけないな、と頭で考える。
「アンドレ、考えている事がわかるぞ。侍女の代わりをして欲しいんじゃない。2人で…そう、夫婦で長旅の疲れを取りたい……んだ」
「ああ。わかったよ、オスカル。そうさせてもらうよ。一緒に入ろう」
バスタオルを用意してくる。
と、アンドレは部屋から出ようとした。
ふと、振り返り
「オスカル。俺が洗ってやる。後からおいで」
ウインクをすると、部屋を出た。
言われた方の顔は、ピンク色に染まっていた。
総大理石の広いバスルームに、大振りの猫足バスタブが中央に置かれ、近くには真っ白な寝椅子も置かれている。
最高級のリネンシルクで作られたジャルジェ家の紋章入りの真珠色のバスタオルや、ゆったりデザインされたローブ等が二人分、寝椅子に置かれていた。
バスタブの湯には、アンドレが散らばせた白と淡いピンクの薔薇の花びらが浮かんで、揺れている。
オスカルがバスルームに入ると、にこやかアンドレが手まねいた。
「丁度いい湯加減だよ。身体が冷えただろう?」
そう言い、オスカルの服をゆっくりと一枚ずつ脱がし、抱き上げると、薔薇の湯船に下ろした。
1人入るのには、かなり大きなサイズ。
ああ、そうだ。
小さな頃、母上の考案で、姉上たちと一緒に入れるようにと、特注で作らせたんだった。
「オスカル、湯加減はどう?」
「ありがとう。温まるよ。薔薇の香りも。お前がやったのか?」
「俺が、と言うか、管理人のご夫婦は、奥様から花の管理も任されてるとかで、今では温室で薔薇や、色んな花を年中育てて、アラスで販売の許可も頂いてるそうだよ。だから、冬でも薔薇の湯船が楽しめる。良かったな、オスカル」
「ア…アンドレ」
「ん?…ああ、俺も入るよ。オスカル、ちょっと前に行って」
と、促すと、アンドレは彼女の目の前で、するりと衣服を脱ぎ、寝椅子に置くと、オスカルの後ろにある湯船のスペースに滑りこんだ。
オスカルが、すっぽりアンドレに包まれている。
「き、気持ちいいか?」
ドキドキしながらオスカルは、背後にいる夫に振り向いた。
すると、湯船の中で、アンドレの両手が妻のお腹周りを抱き寄せ、ブロンドの髪に顔を埋める。
「いい香りだ。お前と薔薇の香り。このまま眠りそうだよ」
「ばか。湯船で寝たら溺れるぞ」
「既にお前に溺れてるよ」
オスカルの顔は真っ赤になっていた。
湯船の中で、背後からオスカルの身体を抱き締めている大きな掌が、柔らかな乳房を包み込む。
小さく声を上げ、
「ここでは…」と、夫の掌の上に白い手を重ねた。
「うん。そのつもり。お前が湯冷めしたらいけないからな」
その声は優しい。
が、掌は、両の乳房を揉みし抱く。
「オスカル……少しだけ…」
「……あ……」
背後のオスカルの丸いお尻に当たるそれ。
固くなり、オスカルの中にスルリと入った。
「……ああっ…アンドレ……!」
そこからは、2人は記憶がなくなる程、
薔薇の湯船の中で水が跳ねるように、情を交わしあった。
寝台の中で。
まだ眠りに付くのはもったいなくて、2人は
暖炉の柔らかな火を眺めながら、毛足長い毛布にくるまり、お喋りを楽しんでいる。
サイドテーブルにはアラス産の白ワインが注がれたグラスが2つ。
オスカルは、例のギリシャ神話のドレスを着ていた。
どこも締め付け感がなく、着心地がとても良い。
「似合うよ。オスカル」
「うん…ありがとう。本当は、これを着て昼間の丘を歩いてみたいけど…」
「今は冬だから、春になったら…また来よう。その時は草原を歩けるよ」
肘を付き、腕枕をしたアンドレが、オスカルの間近にある顔にかかるブロンドの
ひとすじの髪を指に絡ませて、そう言い笑った。
「アンドレ…少し話をしていいか?」
「何?」
「私は近いうちに、軍人を辞める」
「うん…。でも本当にいいのか?」
「母上から言われて気が付いた。愛する人が私を女に戻す。それは私が、男として育てられた時から、ずっと願っていた夢だったそうだ。もし…私に愛する人が出来たら…、もし、子供が出来たら、
軍人はもう出来ない。母上もずっと案じておられた。その話を母上から聞かされた時…私の中でも優先順位が変わった」
「オスカル…」
「父上も、母上からずっと言われていたそうだ。末娘だけは、軍人として生きてきた分、自由にして欲しい、と」
「奥様が……?」
「もう充分だと。14で近衛に配属され、ずっと男として育てられ、自分も男として生きようと血のにじむ程に努力してきたつもりだ」
「ああ」
「本当ならその14歳で、普通、女は嫁ぐ。親の選んだ男と。子を生み、育て…。私には想像が出来ないし、もしそんな人生だったら、世間知らずの人間になっていた。そう思うとぞっとした」
「それは言い過ぎだよ、オスカル」
「でも…。軍人となり、世間と社会と、蠢く人間の有り様を学べた。それは両親に感謝したい。
が…私は選んだ。いや、決めた。
自分の愛する人を。そして、その人との子が欲しい…。それが私の優先順位になった」
「オスカル…」
潤む彼女のサファイアの瞳に吸い込まれるように、アンドレは隣にいる妻を抱き締めた。
軍服を脱げば、ずっと華奢な細い身体を。
「オスカル…」
ブロンドの豊かな髪を撫でながら、アンドレは囁く。
「俺たちは、出逢う為に生まれたんだと思う」
「うん…」
「愛し合う為に、俺たちは生まれ、出逢ったんだよ…」
オスカルは、何度も頷いた。
きっと
前世でも、私達は、何度も出逢い、愛し合っていたはずだ。
そう確信している。
本気で。
優しく抱き締めるアンドレの腕の中で、ふと思い立ったオスカルが顔を上げた。
「なあ、アンドレ」
「ん?」
「もし……。もし、生まれ変わって、私達たちが出逢うとして…」
「来世の話?あはは。当然、お前を見つけて、また一緒になるよ?」
「うん…。出逢う前に、自分は何をしたい?どんな…そうだな、仕事とか、色々」
オスカルは想像しながら、問うた。
「俺?……急に言われても…はは。…そうだなあ。戦争のない未来に生まれ変わって」
「戦争?」
「争いは嫌だからな」
「アンドレらしいな。…それで?」
「俺、本が好きだろう?小さい時はおふくろと2人暮らしだったから、近所の子から本を借りたり、教会の神父様から本を借りて読んでたんだ」
「初耳だな。それで、私の書庫にも幼い時からよく来て、本を貸してくれと言っていたのか」
「ああ。だから、生まれ変わったら…俺は、平和な時代の国で、大人になったら、本を扱う仕事がしたいかな」
オスカルは、饒舌になっているアンドレの顔を見つめ、微笑む。
「可笑しいか?」
「ううん。可笑しくない。アンドレらしいと思って。それ本屋か?」
「なんでもいいんだけど…。本屋もいいな」
「だったら、私は本屋の嫁になる」
ぷっと、アンドレは吹き出した。
「何が可笑しい。真面目に言ってるんだぞ」
「ああ、ごめんごめん。お前が本屋の店先でじっとしていられるかなあと思って…」
「笑うなアンドレ。生まれ変わって、私の境遇や、性格がこのままな訳がないじゃないか。若い内に私達は出逢って…アンドレの可愛いお嫁さんになるかもしれないのに!」
オスカルの両手が、旦那様の頬を挟み、変な顔にさせた。
「参ったか!」
「参りました!来世も可愛い、このままのオスカルで出逢うよ、きっと」
「本当だな?」
「本当」
「………私を可愛い、と言ってくれるのは、今生も、来世も、アンドレ、お前だけだ。覚えておけ」
アンドレは、オスカルの額に口づけると、
ずっと覚えてるよ。
と、ささやき
「もう今日は、寝よう。明日疲れが残ってたら、視察にも行けないから」
あたたかい毛布をオスカルに掛け直し、吐息をはくと、おやすみ、と軽くキスをして身体を近づけ、互いのぬくもりを感じながら、目を閉じた。
「あ!アンドレ…」
「どうした?」
「今夜、オリオン座を眺めるのを忘れてた」
「大丈夫。明日も明後日も、アラスにもオリオン座は輝くから。俺のアルテミス」
もう一度、口づけてオスカルを納得させた。
アルテミスと呼ばれたオスカルは、微笑み、アンドレの隣で彼の首筋に顔を埋め、寝息を立て始めた。
「おやすみ、オスカル」
アンドレは、テーブルの上の残りのワインを飲み干し、優しくオスカルを抱き締めた。
アラス初日の深夜である。
続く