前回のお話
ici là partout…… (here there & everywhere )
 ~冬の神話~の、続きの物語になります。
ノエルの日に、突然起きた出来事の話。

つらつらと書いてましたら、こんな話になってしまいました(笑)
書きながら、えー!?こうなるか!?と自分で突っ込んでます。

アラスに行くんじゃなかったの!?と、私が驚いてます…
次に書きます!次に(笑)

オスカル、アンドレの恋人時間を長くしておきたくて、原作様はほぼ無いみたいな事になっております。二次創作小説だから許してください💦
2人の自然体の日常(甘々な)を、ただ書きたいだけなんです。










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Histoire de la nuit de Noel ~ノエル夜話~







2人は…


あれから、ずっと黙っている。



言葉が出ない程に驚き

動揺し


だが。

最終結論として

感謝…と言う思いしか浮かばなかった。


でも、本当に良いのだろうか?


否、認められたのだから「祝福」されたのだ。



2人は、深夜のオスカルの部屋で、並んで座り

ずいぶんと長い間、言葉にならなかった。





話はさかのぼる。

ノエルの日。
オスカルの誕生日の昼前、2人は、ジャルジェ夫妻に呼ばれた。
ミサに行く話かと思っていたが、違っていた。

普段、あまり機嫌の良くないジャルジェ将軍が、にこやかに2人に座るよう促し、続いて話の主旨を夫人が説明した。


「ミサには、今回、アンドレも来てもらいますね」

「え?」

口に出したのはオスカル。


今年は雪深いからと、上の5人の姉夫婦はミサの参加を取り止めたとは聞いていた。


…で、何故アンドレがジャルジェ家のミサに…?


「オスカル。貴女はジャルジェ家の次期当主になりますが、その前に、母にとっては、可愛い末娘。6人目の私の娘です」

「……はい…」
母上は、いったい何が言いたいのか、皆目見当がつかない。
変な汗がオスカルの額を伝う。
こんな改まって言われたのは、多分、
産まれて初めてだから。

アンドレを横目で見ると、オスカルと同じ顔をしていたが、アンドレの思考は、別の事を考えていた。

(もしかして…オスカルの結婚話なんだろうか?あのジェローデル大佐の件で、パーティーをぶち壊した後にも、話が持ち上がってるんだろうか…)

アンドレは、座ったまま、いたたまれなくなる。
じっと、下を向いたままだ。


「オスカル。お父上は、私の話を漸く理解してくださいました」

「何を、でございますか?」

オスカルは、母、ジョルジェットの顔をじっと見つめている。



「軍人と言えど、貴女は女性です。女性としての幸せを見つけたのなら、私は貴女の意思を、何があっても優先すべきだとお父上に話しました」

「は…、はい…」

「今夜のミサで、貴女とアンドレの結婚式を、ささやかですがしてあげたいのです」


「!?」


「奥様…」
アンドレが少し青い顔つきで、漸く口を開けた。

「わたくしは、第三身分、平民です。それにオスカル…いや、オスカル様の従僕です。結婚なんて、あり得ない事でございます」

「では、オスカルの真の幸せは、アンドレ以外の誰が共にできますか?……オスカル、最近の貴女の顔つきを見れば解ります。私も女ですもの」


「母上…」

「アンドレは、我が家で育った我が子と同じ。身分の隔てを作る事なく、引け目を思わせる事もなく、オスカルと共に育てたつもりです」

慈愛の眼差しで、ジョルジェット夫人は、アンドレを見つめた。

「貴女は男ではありません。わかりますよね?恋をすれば、女は変わるのです。どんなに軍服を着ていても。…貴女は、ここ最近、今まで以上に、とても美しくなりました。……叶えてやりたい。そう思いました。強く生きようとする貴女を、真に支える、信頼できる殿方に。…アンドレ」

「は…はい」
夫人から発せられる言葉が、頭の中で理解が追い付いていない。


父である将軍が横から、ゆっくりとアンドレに話した。

「とある流れで、貴族の身分を買う事になった。それをアンドレ、お前に譲る。そう決めた」

「旦那様!それは…!」

「軍人と言えど、私にとっても、オスカルは可愛い末娘なのだよ。今は軍人にした事を後悔している。他の娘達以上に、苦しい人生を送らせてしまった。だから、末娘だけは、親が決めた相手ではなく、この先は自由に人生を謳歌させたい。そのためには、オスカルを間近でずっと支えていたお前なら、オスカルと共に人生を紡ぐ事が出来る。娘の幸せを、私達は願って止まない…」

将軍の言葉に続き、ジョルジェット夫人がオスカルを見つめ

「異論はありませんね?」

「本当に良いのですか…?母上…。アンドレを私の夫にして下さるのをお許し頂けるのですか…?」

夫人は、にこやかに頷いた。

「私は嬉しいの。こんなに穏やかで、紳士で、誰にでも優しい殿方が、貴女の中身を女性に変えてくれて、そして相思相愛になった事が」

「母上…」
「奥様…」

「私達も、相思相愛で、身分の差がありましたから。だから、貴女には肩の力を抜いて、アンドレにふさわしい女性になって欲しいわ」



その後、


ジャルジェ家のノエルのミサの為、教会に向かい

いつの間にか用意されていた2人の正装に着替えさせられ、

厳かに、また、あたたかい結婚式があげられた。

夫人から用意された、オスカルとアンドレの結婚指輪。
細めの金のリングに、3つの小さなダイヤモンドがはめられた、華美を好まない2人にふさわしいデザインだった。

ダイヤモンドが3つなのは、オスカルとアンドレと、いずれ生まれるであろう、2人の子。
それを意味している。
と将軍は笑みを浮かべて、説明した。

近々、オスカルを退役させる事も。

もし、子が出来れば母体を危険な目には合わせられない。




「…あら…」

夫人は、オスカルの手の甲の豪華なレースの下に光る指輪を見つけた。

「まあ!美しい。これはアンドレからの?」


「はい。アンドレの母君の着けておられた指輪に、アンドレが輝石を選んで、作り替えて、この度の私の誕生日にと頂きました」

「そうだったのね!アンドレ、礼を言います。娘にぴったりですわ」

アンドレは、緊張した思いで、深々と頭を下げた。

「では、始めましょう」



祭司が現れ、夕刻迫る中、静かに、厳かに

結婚式は執り行われた。

夕刻の太陽が、教会の大きなステンドグラスを、艶やかに輝かせ2人を美しく照らした。




オスカルとアンドレは、

思いもよらないノエルに、ただただ、涙と笑顔で寄り添い、
両親に感謝を述べ、ささやかな挙式は終わった。







その夜。

冒頭に戻る。




2人は…


あれから、ずっと黙っている。

突然
新婚の夜となってしまったノエルの夜。





まだ。言葉が出ない程に驚き

動揺し


だが。

最終結論として

感謝…と言う思いしか浮かばなかった。


でも、本当に良いのだろうか?


否、認められたのだから「祝福」された。



夢ではない。




「アンドレ」

ぼうっとしている彼に漸く、オスカルは声を掛けた。

「あ。ああ」

「父上、母君には、全てお見通しだったようだな」

「オスカル、本当に良かったのか?」

「結婚、がか?」


「それもある…けど…」


アンドレは不安材料を口にした。

「俺は平民。第三身分の人間だ。今でもそれを引け目に思う事もある。お前と関係を結んで良かったのだろうかって」

「私はたまたま貴族の子として生まれた。アンドレはたまたま平民として生まれた。私達は、幼い頃からずっと一緒だった。…だけど、私はお前の愛を知りながら、フェルゼンに恋をし、恋に破れた。アンドレはずっとずっと…変わらぬ愛を、私に持っていてくれた。私は気づいて良かったと、心から思う」

「…ありがとう…オスカル」

「でも。今年のノエルは、さすがに緊張した」

オスカルは、左手にある銀と金のリングを、ゆっくりと眺めた。

「私には装飾品は似合わない。そう思っていた。でも、この二つのリングは、私の一生涯の宝物だ」

そうささやき、隣に座っていたアンドレに左手を見せて、オスカルは、まだ緊張した顔の夫の頬にキスをした。
こうなると、女の方が肝がすわる。

あ、やはり私も女だなと思ってクスリと笑った。


そして、にこやかに戸棚に向かい
極上のワインと、グラスを2つ取り出した。

「姉上の皆様からのプレゼントだそうだ」

「ジャルジェ家全員の祝福、なんだな」

涙がでる程にありがたい。

が、旦那様が言っておられた
「貴族の身分など、金で買える」
と言う言葉が気になっていた。

それをオスカルに告げると、ははっと笑いながら

「ジャルジェ家の親族に以前、子がいない一族がいたんだ。養子を取る話が出たらしいが、その直前、夫婦が流行り病で急死された。遺されたその土地、屋敷、資産、領地は父上が大切に管理されていた。どちらにしろ、誰かに譲るつもりでいたらしい」

説明しながら

オスカルは既に2杯目のワインを口にしている


「いやか?」

グラスを口にあてたまま、アンドレに顔を近づける。

「いや…いきなりで…内容が大きすぎて…結婚式だけでも驚いてるのに、そんな話もいきなりで……て、おい!」

オスカルが夫になったアンドレの股に跨がった。
両手で新郎の頭の後ろに手を回し、


おい!と驚いてる新郎の唇に、くちづけた。

口を割らせ、オスカルは口に含んだワインをアンドレの口中に流し込む。


暫くして、アンドレの喉がゴクリと鳴り、

彼の力強い腕が新婦の華奢な身体を抱きしめ、

そのまま、深く深く口づけを交わす。



角度を変え、何度も。


オスカルが、小さくささやくと、彼女の口端から、赤いワインが一滴流れた。

それを、アンドレがそっと舐める。


「アンドレ。私も驚いてる。でも、私の両親もお前を一人の人間として認めて下さった事がなにより嬉しい。あの時、私の見合いの晩餐会をぶち壊して正解だった」

「そうだな…。恐縮せずに受け止めるようにするよ。ありがとう」



何だか今夜はオスカルにエスコートされている。

色んな事が起きた日だったので、まだ頭がぼんやりした感覚だった。


「明日から、アラス行きだな」

オスカルは黒髪に腕を回して、耳元で囁いた。

「明日は旦那様の為に、私はドレスを着る」

「無理しなくていいよ。いつものオスカルでいいから」

彼女も緊張していたのだろうか。
たった2杯のワインで、酔っていた。
こんな時は、可愛らしい笑顔を絶やさない。

オスカルはアンドレの黒髪の後ろで3杯目をつぎ、
くゆらせている。


抱きつくブラウスの下に、なにも着けていないのをアンドレが気づく。


「この私が、見せたいって言ってるんだ」

「……この胸を、か?」

「ドレスを……っ…あ…」

ブラウスの上から、アンドレは胸にキスをした。

ゆっくりと。

そして、器用に、オスカルの胸元を口で広げる。




愛らしい乳房と

昨夜つけた、赤い証が現れ

アンドレに火をつけた。


「俺にもワインをくれないか」

オスカルは頷き、3杯目のワインをまず
自分の口に入れる。


そして、愛しい男の唇にワインを流し込んだ。



彼は、飲み込まず

目の前にある、白い胸に唇をあてがい、

ワインを少しずつその肌に流しながら、肌を吸い取り、新たな紅い跡を何度もつける。


オスカルは、小さく声を上げると、
耐えられなくなり

「連れてって…」


と、促した。


抱き上げる。



寝台に下ろす前に、オスカルに囁いた。

「誕生日、おめでとう。俺をお前の好きなように今夜は扱え」


「好きなように…?手加減しないからな…」

吐息からは芳醇なワインの薫りと、オスカルの香りが混ざり合い、
アンドレの背筋をぞくりとさせた。



ベッドが軋む度に


サイドテーブルに飾っている





真っ白な薔薇のブーケが






小刻みに揺れていた。










fin





続く