譜読みってどこからどこまでのことを指すのでしょうか。
まずは楽譜に書かれている音とリズムを読むこと
だと思っている人が結構いるような気がします。
が、これは楽譜にある情報のうちの10%くらいでしかない。
楽譜の中に書いてあるものを読むこと
という意味なら、音とリズムだけではなく、ほぼ必ず書いてある楽語やテンポ表示、曲名、ペダル、指使い、アーティキュレーション…これだけでも膨大な情報です。
でもこれらは、まず読むべきものではなかったりするのです。
楽譜は私たちにとって外国語の本です。それを読もうとする時、本の題名も、何語なのかも、どんな内容かも知る前から、最初の単語の発音の仕方に取り掛かったりするでしょうか?逆にそれらを知らないままで正しい発音が見つかるでしょうか?
まず音とリズムだけ読む、というのはこれに等しいです。作曲者が誰なのか、その人がどこの国の人でどの時代に生きたのか、曲はどの形式で書かれているのか、どんな雰囲気の内容なのか、知ってれば格段に読みやすいけど、知らないまま文字だけ追ってもちんぷんかんぷんだし、しまいには何だかめんどくさくなっちゃいます。
つまり非常に遠回り。かつ音楽にそぐわない変な癖だけが身についちゃったり。
教え始めてから、これ書いたのどこの国の人?この人について知ってること教えて?て聞いて答えられなかった人に沢山出会いました。その中には音大生もいました。正直なところ衝撃でした。
先生が教えてくれる情報でしょ?
教えられますよ?でも勿体無くないですか。
なんのためにスマホがあるのか、Googleがあるのか?
これらの基本情報はもはや、わざわざお金を払って得る情報ではないのです。自分で知った方が、へー!て思った方が楽しいし、心に残ります。
一番問題なのは、知りたい、と思えないこと。
作曲家や曲の背景、時代について、好奇心を持つように普段のレッスンで促してこなかったとしたら、それは指導側の責任です。
なので私はなるべく、まだ頭が柔らかい子供のうちから、いかに音楽と作曲家について、外国の文化について、興味を持ってもらえるか、親近感や好奇心を持ってもらえるように、彼らについての他愛ない話を沢山するようにしてます。自分が住んだり旅してきたことで感じた異国の空気感についても。
音楽室に並んでるあの厳しい、現実味のない絵の中の人たちも、私たちと変わらない生身の人間で、変なところも可愛いところも沢山ある、そういう人たちが生み出したものなんだよ、ナマモノなんだよ、てことを。無機質なものを扱うように譜読みして欲しくないから。
つづく