『2112年ドラえもん誕生』
『ドラえもん』によるとドラえもんは2112年9月3日に生まれた。あるいは生まれる予定だと言うべきか。
2112年の未来のことを過去形で言うのは奇妙だが、これはタイムマシンによって生じる2次元の時間軸で表したように、タイムマシンの使用によってドラえもん誕生がドラえもん来訪(のび太から見た場合)より前になっているわけだ。
 
鼠に耳をかじられた設定は1976年のてんコミ第11巻でできた。
1980年初めのアニメで、ドラえもんはもとは黄色だった設定となり、耳をかじられて青ざめたことになっていた。
しかし、ロボットが青ざめるとは考えにくい。
1995年の映画『のび太の創世日記』と同時上映の『2112年ドラえもん誕生』で、ドラえもんは鼠ロボットに耳をかじられ、泣き続けた振動で黄色いメッキがはがれ、また声も横山智佐の声から大山のぶ代の声になった。
この設定は2005年春のリニューアルで一旦、白紙に戻されたようで、1980年当時のドラえもんが黄色だった設定まで戻ったようである。
ロボットが変色するならメッキが取れるほうが自然だ。
 
その後、ドラえもんが新しい耳をつけてもらえなかったことと、黄色い色を塗ってもらえなかったことが不思議だ。また、ネコ型(猫型)ロボット回収問題のときも、ネコ型かイヌ型(犬型)はほとんど外観に関することであろうから、改造を勧めればいい話だ。
 
この1995年の『2112年ドラえもん誕生』では、ドラえもんがロボット養成学校にいた(普通の時間軸ではいる予定の)数台のネコ型ロボットとして「ザ・ドラえもんズ」が設定され、中国やアメリカなど各国を代表していた。もとはドラえもんを使ったゲームのキャラクターで、それを藤子プロまたはアニメ『ドラえもん』スタッフが本編に逆輸入して採用したらしい。
映画ドラえもんはもともと、てんコミ第10巻の「のび太の恐竜」を大長編にしたものから始まったので、そのほとんどは『のび太の宇宙開拓史』『のび太の大魔境』など「のび太」を主人公とする冒険譚になっている。
映画に置いてドラミやドラえもんといったネコ型ロボットの側がメインになるのは同時上映の派生作品のみである。
 
『鉄腕アトム』『人造人間キカイダー』『がんばれロボコン』のような等身大ロボットものではロボットが主人公である。
『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』のような巨大ロボットものではロボット(またはモビルスーツ、汎用人型決戦兵器)を操縱する人間が主人公である。
『ドラえもん』の場合、ドラえもんは等身大でありながら、のび太が秘密道具を使うことで話が進む上では、人間をメインにした巨大ロボットの要素も持っている特異な作品である。『のび太と鉄人兵団』では巨大ロボットと等身大ロボットが同一作品で「共演」していた。それでもロボットとしてのドラえもんよりのび太や静香といった人間側とロボットたちとの友情や戦いが話の中心であった。
 
その意味でネコ型ロボットを中心にした『ザ・ドラえもんズ』は『ドラえもん』のタイトルどおりロボットをメインにしている意味では亜流にして本道に近い。もっとも『ドラえもんズ』でもドラえもんは脇役に近く、他のネコ型(と言うよりドラえもん型)のロボットのほうが主人公のようだ。
また、『ザ・ドラえもん』 は『映画ドラえもん』は始まって15年、原作が始まって25年たって始まったもので、ロボットたちの設定も「後付け」であるし、もとがゲームであることから『ドラえもん』の本道ではなかった。
藤子・F・不二雄がノラミャーコ、ガチャ子、ロボ子といったドラえもん以外のロボットキャラクターをもっと生かせなかった、創れなかったのも惜しいところである。
 
『ザ・ドラえもんズ』
『ザ・ドラえもんズ』は7年続き、最後は2002年の『のび太とロボット王国』『ぼくの生まれた日』と同時上映だった『ザ☆ドラえもんズ ゴール!ゴール!ゴール!!』だったらしい。
『新世紀エヴァンゲリオン』の初期と同時期の作品だった。林原めぐみがイチの声を担当して1年後、三石琴乃が野比玉子の声を担当するようになったのも奇遇である。
 
2年後、2004年の『のび太のワンニャン時空伝』で林原めぐみはイチの声を担当し、山寺宏一は『のび太と奇跡の島』で13年ぶりに『映画ドラえもん』に参加した。
2005年のリニューアルで『ザ・ドラえもんズ』の設定は「なかったこと」にされたが、そういう作品があったという歴史は決して末梢はされておらず、山寺氏も『奇跡の島』に参加したとき、かつて『ザ・ドラえもんズ』に声で出演していたことに言及していた。日テレ版がほとんど「なかったこと」にされているのとは話が違う。
 
個人的に『ザ・ドラえもんズ』は全く見ていない。
存在すらも知らなかったし、テレビや新聞で廣告を見ても印象に残らなかったのだと思う。
ちなみに『ザ・ドラえもんズ』を小学生のときにたっぷり見たのはどの世代か考えてみる。
のび太と同じ8月生まれの人であれば、7歳になる年度で6歳9箇月のときに小学校に入る。
相武紗季と同じ1985年生まれであれば、1995年当時10歳で、2002年当時は17歳。
堀北真希と同じ1988年度生まれであれば1995年当時7歳、2002年当時14歳であり、2012年で24歳。
1989年生まれだと1995年当時6歳、2002年当時13歳であり、2012年で23歳。
1990年生まれだと1995年当時5歳、2002年当時12歳であり、2012年で22歳。
このあたりの世代は『ザ・ドラえもんズ』を小学生時代にたっぷり見たことだろう。
 
2005年春以降の『ドラえもん』ではドラえもんと同期の22世紀のネコ型ロボットは、耳があったころの黄色いドラえもんと同型のロボットだけのようである。しかしドラえもんが黄色だったという設定も原作開始から10年たって追加された設定だった。その意味では今の『ドラえもん』はリニューアル前の作品を生かしていると言える。
 
ドラえもんズは服を着ているのでそれを見慣れるとドラえもんは裸に見える。
ドラえもんは『ワンニャン時空伝』で犬やネコ(ネコ)たちから裸だと指摘された。
羞恥心は着衣によって決まる(2012年5月2日『怒り新党』参照)。
ロボット刑事Kも普段はスーツを着ているのでスーツを脱ぐと全裸の男に見えてしまう。
 
『ドラえもん』とスポンサーと親友テレカ
ところでロボットアニメというのは玩具メーカーの意向で企画が出され、制作される例がほとんどのようである。
人気が出て長く放送されると途中で武器が増加するのも新たな玩具を買ってもらうためだろう。
魔法少女アニメも同様だ。魔法の道具が途中で変わったりする。
『ドラえもん』は雑誌連載→てんコミと『コロコロ』→テレビアニメ→映画というように主流が移って、毎年の映画が歴史を創るまでになった。
『ドラえもん』のスポンサーは小学館、ココス(ファミレス)、ロッテ、それからエポック社もあり、これは玩具メーカーだ。『ドラえもん』がこれらの会社の廣告に貢献する限り、テレビの『ドラえもん』は続くであろう。 
ところで2011年に終わったパナソニックドラマシアターの『水戸黄門』の場合、パナソニックの商品の廣告に何ら役に立っていなかったように思う。
  
ドラえもんズを結びつけていたのは親友テレカで、1990年代まで多くの人が世話になったテレホンカードをモデルにしたものだろうが、設定上はテレホンでなくテレパシーカードの略らしい。
tele-phoneは「遠くへ(tele-)・話す物(-phone)」という意味だ。独語でFern-sprecherになる。
tele-path-yにあるpathはsym-path-yにもあり、感情、苦しみ、病気の意味らしく、「遠くへ感情を届ける」意味か。
「テレホンカード」を「テレカ」にするのは「テレホン」と「テレパシー」の共通要素だけ残したことになる。
糸なし糸電話」を持つドラえもんにとってテレホンカードは不要で、テレパシーカードが役に立つのだろう。
 
ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』の放送は1993年であり、葉月里緒奈が出て行ったポケベルのCMで久宝留理子の歌「早くしてよ」が流れたのは1994年ごろだったようだ。『ザ・ドラえもんズ』はその次の年に始まった。
『こち亀』で1996年に日暮巡査が目覚めたとき、携帯電話の普及に驚いていた。
1997年に始まった『BAR来夢来人』では女子高生の間でポケベルがまだ必需品だった。
2002年には携帯院電話がどんどん普及していた。
もし『ドラえもんズ』が2012年の今、創られた作品なら、「親友テレカ」は「親友スマホ」になっていただろうし、あるいはテレカより以前からあった物で「親友バッジ」でもよかったかも知れない。
 
「親友テレカ」は実際のテレホンカードとしてグッズにもなっていたようだが、携帯電話の普及でテレカを使う人も減っている。『ザ☆ドラえもんズ』が2002年の作品を最後に作られていないのは、キャラクターグッズが「テレカ」では「旨味」がないからかも知れない。
 
『ザ・ドラえもんズ』の最終シリーズが2002年で、それから10年以上。上にも下にも『ドラえもんズ』を知る世代は少数派になっていくだろう。
1973年の日テレ版『ドラえもん』から10年後は1983年で、『のび太の海底鬼岩城』のときだった。このとき、日テレ版を見た世代は大方、中学生以上。1973年当時3歳だと1983年で13歳だから中1か中2。世間では日テレ版は過去のものとなり、日テレ版を知らない世代が「新しい『ドラえもん』」を支持していた。
2012年に『ザ・ドラえもんズ』を知らない世代が増えてくのは当然であろう。
 
@truekoto387 @KUSOLAB 「ザ・ドラえもんズ」は1995年から2002年まで映画ドラえもん本編の「のび太の~」「のび太と~」シリーズと同時上映で放送された作品でドラえもんと同期の猫型ロボットが複数活躍する話のようです。(く)(き)ザ・ドラえもんズはもともとはゲームのキャラクターだったんですが、それが藤子F不二雄氏によって映画ドラえもん本編に採用されたようです。ただ映画ドラえもんが始まって15年後に作られた派生作品で7年で終わったので知っている世代は限られています。(く)(き)ザ・ドラえもんズ最終作は2002年(11年前)に公開されたようです。2005年(このtweetから8年前)のリニューアル以降はドラえもんと同期の猫型ロボットは「耳があった頃の黄色いドラえもん」と同タイプのロボットだけで他のドラえもんズはまだは出てきません(く)(き)ザ・ドラえもんズを知っているのが大体どの世代か考えてみると今20代前半でしょう。例えばザ・ドラえもんズが公開された1995~2002年の7年間に小学校で6年間を過ごした人は1988~90年生まれで今年の誕生日で23~25歳になります。以上です。
青ざめた設定は1980年の特番で、黄色いメッキが取れた設定は1995年の映画以降の設定ですね。逆に青ざめた設定で覚えていた世代の多くはメッキ設定を知らないようで、その世代はザ☆ドラえもんズも知らないでしょう。年が上すぎて…。ドラえもんが青い理由(青ざめたvs塗装が取れた)などは、大山のぶ代版のドラえもんの初期と後期、しかもどちらも藤子・F・不二雄氏存命時の設定で、その世代格差の方が凄いと思いますが、大山版と水田版の世代差ばかり強調されていますね。

ドラえもんズは後付け設定で、王ドラやドラメッド三世がいるなら「パラレル西遊記」や「ドラビアンナイト」の時はどうしてたのか…という疑問が生じる。もし、わさドラでザ☆ドラえもんズが再登場したら、ドラえもんズを知らない人は「作者没後、リニューアル後の新キャラクター」と勘違いして違和感を持つだろう。自分としてはノラミャー子(2007年型)とパワえもんにもっと登場してほしいものだが。

大山のぶ代版のドラえもんを見た世代でも1980年代~90年代初めでドラえもんを卒業していた世代は1995~2002年の「ザ☆ドラえもんズ」を知らないだろう。ドラえもんが青ざめた設定を覚えた世代の多くは、メッキが取れた設定を2年前まで知らなかった。
もし、わさドラで大山版後期のザ☆ドラえもんズが「復活」しても、大山版初期~中期世代は王ドラやキッドその他を「旧キャラクターの復活」だと思わず、パワえもん同様、「新ドラえもんのオリジナルキャラクター」だと思って「ドラえもんは変わったな」と思うだろう。
 
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2012年9/8 9/8前後  
 
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