必殺シリーズは1972年に『必殺仕掛人』で始まり、1979年に始まった『必殺仕事人』が必殺の代名詞となった。
1976年の『必殺仕業人』は一般公募で決まったタイトルらしいが、場合によっては『必殺仕事人』のタイトルがこの時点で使われていた可能性もある。
1973年『必殺仕置人(しおきにん)』と1975年『必殺仕置屋(しおきや)稼業』があって、同じく1975年の『必殺必中仕事屋(しごとや)稼業』があれば、スタッフは『必殺仕事人(しごとにん)』というタイトルを考え付くのが普通であろう。
実際は『仕業人』のあと、『からくり人』『新仕置人』『商売人』『うらごろし』が続いてやっと『仕事人』がタイトルとしてお目見えとなった。
 
『必殺必中仕事屋稼業』の時点で「仕事料」という詞(ことば)が出ている。
『必殺仕置屋稼業』では市松が、『新必殺仕置人』では主水が仕置のことを「仕事」と言っている。
『新からくり人』でもお艶(演:山田五十鈴)が裏稼業を「仕事」と呼び、安藤広重へのてがみで「日坂の仕事も終わりました」などと書いていた。
また、『仕業人』の第19話「あんたこの奥の手をどう思う」で又右衛門が女占い師から仕事料を受け取って、それを「仕事料」と言っていた。
だから主水・捨三・剣之介・お歌・又右衛門のメンバーのときにタイトルが『仕事人』でもおかしくなかったはず。
一方、『仕業人』最終回「あんたこの結果をどう思う」では裏稼業が「商売人」と呼ばれており、これは『からくり人』『新仕置人』のあとに『江戸プロフェッショナル 必殺商売人』として採用された。
 
ここで必殺のタイトルの有無とメンバーチェンジを比較してみる。○はメインの仕置人(仕事人)で、△は情報係。◇はその他。
 
『必殺仕置人』→『暗闇仕留人』
主水と連絡係2名(おきん、半次)がそのままで、『仕置人』の鉄と錠が、『仕留人』の大吉と貢に交代している。
5人のうち継続が3名、交代が2名。
○中村主水
○鉄(仕置人)→大吉(仕留人)
○錠(仕置人)→糸井貢(仕留人) 
△おきん
△半次
◇天神の小六(仕置人)
 
『必殺仕置屋稼業』→『必殺仕業人』
主水と捨三が残留で、市松と印玄とおこうが抜けたあと、又右衛門と剣之介とお歌が参加。おこうは仲介人で、裏稼業の実行には参加しなかったが、仕業人ではおこうの役割(仕事の請け負う)を男4名が分担し、お歌は逆に裏の仕事の現場でサポートしていた。仕事人の何でも屋の加代はこの「おこう」と「お歌」の役割を兼ねることになる。
○中村主水
○市松(仕置屋)→又右衛門(仕業人) 
○印玄(仕置屋)→剣之介(仕業人)
△おこう(仕置屋)→お歌(仕業人)
△捨三
 
ここで市松の後継を又右衛門にしてあるが、この理由は単に針状の武器が似ているというだけである。
市松の紹介で主水グループに参加したのは剣之介である。
印玄は鉄や大吉のような怪力坊主の系統になる。市松は錠や貢のように鋭い刃物か針状の武器を使う仕置人である。市松→又右衛門の後継は『仕事人』では秀となり、印玄→剣之介の光景は『仕事人』では素浪人の左門(演:伊吹吾郎)となり、左門は途中から怪力坊主となり、『新仕事人』では刀&怪力の左門に代わって三味線の糸を使う勇次が参加している。ここで剣之介と左門はどちらも武士で、剣之介と勇次は仕置技が似ていることが注目に値する。
なお、鉄の骨はずしは梅安の針の技を按摩に応用したもので、鉄の坊主頭は設定上、梅安の坊主頭を継承したものだろう。すると針を使う技と怪力技は同根ということになる。
 
『新必殺仕置人』→『必殺商売人』
この場合、連絡係が1名(おてい)抜けて、鉄と己代松(または巳代松)の代わりに新次とおせいが参加している。己代松の名前はキャスト紹介の字幕で「己代松」であるが、各種書籍では「巳代松」が多い。
○中村主水
○鉄(新仕置人)→新次(商売人)  
○己代松(新仕置人)→おせい(商売人) 
△正八
△おてい(新仕置人)→(おせいと正八の役割に分化?)
 
次に『仕置人』を基準にして『仕置屋』『仕業人』『新仕置人』のメンバーと比較してみる。
 
『必殺仕置人』→『必殺仕置屋稼業』
○中村主水
○鉄(仕置人)→印玄(仕置屋)
○錠(仕置人)→市松(仕置屋)
△おきん(仕置人)→おこう(仕置屋)
△半次(仕置人)→捨三(仕置屋)
 
『必殺仕置人』→『必殺仕業人』
○中村主水
○鉄(仕置人)→剣之介(仕業人)
○錠(仕置人)→又右衛門(仕業人)
△おきん(仕置人)→お歌(仕業人)
△半次(仕置人)→捨三(仕業人)
 
『必殺仕置人』→『新必殺仕置人』
○中村主水
○鉄
○錠(仕置人)→己代松(新仕置人)
△おきん(仕置人)→おてい(新仕置人)
△半次(仕置人)→正八(新仕置人)
 
『必殺仕置人』→『必殺商売人』
○中村主水
○鉄(仕置人)→新次(商売人)
○錠(仕置人)→おせい(商売人)
△おきん(仕置人)→(女の連絡係なし)
△半次(仕置人)→正八(商売人)
 
次は『仕事人』以降で比較してみる。
 
『必殺仕事人』
メインの仕事人3名がそのままで元締と連絡係が交代。
○鹿蔵→おとわ→六蔵
○中村主水
○秀
○左門
△半吉(仕事人)→△加代&おしま(仕事人)
 
『必殺仕事人』→『新必殺仕事人』
メインの仕事人3名がそのままで元締と連絡係が交代。
○鹿蔵→おとわ→六蔵(仕事人)→おりく(新仕事人)
○中村主水
○秀
○左門(仕事人)→勇次(新~)
△半吉→加代&おしま(仕事人)→加代(新仕事人~)
 
『必殺仕事人』→『新必殺仕事人』→『必殺仕事人III』『IV』
メインの仕事人3名がそのままで元締と連絡係が交代。
○鹿蔵→おとわ→六蔵(仕事人)→おりく(新仕事人~)
○中村主水
○秀
○左門(仕事人)→勇次(新~)
△半吉(仕事人初期)…→○△順之助(III~)
△加代&おしま(仕事人後期)→加代(新仕事人~)
 
『必殺仕事人』と『新必殺仕事人』だけを比較すると連絡係は
△半吉→加代&おしま→加代
となるが、『III』まで含めると半吉の抜けた穴を順之助が埋めているような形になった。
 
『必殺仕事人IV』→『V』
○中村主水
○秀(IV)→政(V~)
○勇次(IV)→竜(V~)
○おりく
△順之助
△加代 
 
『必殺仕事人V』『V激闘編』
○中村主水
○政
○竜
○おりく(V)→○壱・弐・参(激闘編)
△順之助(IV)→(激闘編では登場せず)
△加代
 
 
『必殺仕事人IV』→『V』→『V激闘編』
○中村主水
○秀(IV)→政(V~)
○勇次(IV)→竜(V~)
○おりく・△順之助(IV~V)→○壱・弐・参(激闘編)
△加代 
 
こうして見ると『仕置屋』から『仕業人』までの交代と、『仕事人IV』から『仕事人V激闘編』までの交代は主水以外のメインの仕事人(連絡係でない)が2名以上後退している点で共通しているのだが、『仕事人』では裏稼業の名が変更されていない。『仕事人V』の前後には『仕事人』が主水シリーズの代名詞になっていたようだ。
 
『仕事人V』→『V激闘編』→『旋風編』
○中村主水
○政
○竜(V~激闘編)→銀平(旋風編)
△順之助(V)→○壱・弐・参(激闘編)→○順之助(旋風編)
△加代(V~激闘編)→お玉(旋風編~風雲竜虎編)
 
『仕事人V激闘編』→『旋風編』→『風雲竜虎編』
○中村主水
○政
○竜(激闘編)→銀平(旋風編)→影太郎(風雲竜虎編)
○壱・弐・参(旋風編)→順之助(旋風編)
△加代(激闘編)→お玉(旋風編~風雲竜虎編)
 
『仕事人V』→『V激闘編』→『旋風編』→『風雲竜虎編』
○中村主水
○政
○竜(V~激闘編)→銀平(旋風編)→影太郎(風雲竜虎編)
○おりく(V)→○壱・弐・参(旋風編)
△順之助(V)→(激闘編では一時脱退)→○順之助(旋風編)
△加代(V~激闘編)→お玉(旋風編~風雲竜虎編) 
 
なお、映画『必殺!4恨みはらします』では主水の仲間は秀・政・お玉・順之助という組み合わせで、秀とお玉が同時に仕事人グループに属していたのはこの『必殺!4』の映画のみである。
テレビスペシャル『大老殺し』では主水の仲間は政・影太郎・加代という布陣で、影太郎と加代が同時に主水のグループにいたのが確認できるのはこの作品のみである。
 
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2012年8月
 
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