TBS以外で『水戸黄門』をやったらどうなるか。

日テレは1980年代から90年代まで『松平右近事件帳』『長七郎江戸日記』『銭形平次』(風間杜夫版)、『八百八町夢日記』『半七捕物帳』『闇を斬る!大江戸犯科帳』と続き、1985年の『忠臣蔵』以降、大晦日時代劇の時代を創った。
1990年代半ばになると『父子鷹』(勝海舟とその父親が主人公)、『江戸の用心棒』(第2シリーズ第2話で「将軍吉宗の古証文」とある)と続き、個人視聴率が導入された1996年から97年の『さむらい探偵事件簿』を最後に時代劇枠から撤退している。

長七郎シリーズはテレ朝(『長七郎天下ご免!』)から日テレの『長七郎江戸日記』に移った。
また、朝日放送の『必殺仕掛人』とフジテレビの『仕掛人・藤枝梅安』の例もある。
『銭形平次』はフジテレビの大川橋蔵版、日テレの風間杜夫版、フジテレビの北大路欣也版、テレ朝の村上弘明版と、民放を渡る旅烏のようであった。

『大岡越前』はTBSで放送されたがテレ朝も『暴れん坊将軍』(大岡越前:横内正→田村亮→大和田伸也)と『名奉行!大岡越前』(大岡越前:北大路欣也)をやっている。
『暴れん坊将軍』(徳川吉宗:松平健)に対しNHKが『八代将軍吉宗』(吉宗:西田敏行)、テレビ東京が『徳川風雲録 八代将軍吉宗』(吉宗:中村雅俊)を放送した。

子連れ狼』は日テレとフジで萬屋錦之介版、テレ朝で高橋英樹版北大路欣也版という具合である。

『遠山の金さん』はテレ朝で杉良太郎、高橋英樹、松方弘樹、松平健が演じたが、TBS『江戸を斬る』第2部以降では西郷輝彦と里見浩太朗が金四郎を演じており、ナショナル劇場の『金さん』であった。

テレビ東京では『天下の副将軍水戸光圀 徳川御三家の激闘』の例がある。

『宮本武蔵』『風林火山』『おんな太閤記』『忠臣蔵』などは複数のテレビ局で映像化されている好例である。

『水戸黄門』が第43部で終了するのは、1969年から始まったTBSナショナル劇場の『水戸黄門』の終了であり、他局が他のスポンサーで放送しても不思議はない。
ただ、それは講談の『水戸黄門漫遊記』の映像化としての共通性があるのみで、TBS『水戸黄門』のオリジナルのキャラクターである八兵衛、弥七、飛猿、お銀、お娟、鬼若、アキ、千太、新助などは他局の作品では登場しないだろう。出てくるとすれば松之草村小八兵衛であろう。
印籠シーンもTBS『水戸黄門』からであるから、他局でこれをやるとは限らない。

光圀の少年時代から描くのであれば、家光、家綱の治世が舞台になる。島原の乱、由比正雪(由井~)の乱、伊達騒動、さらに綱吉の治世に移るときに越後騒動が描かれるであろう。

「印籠」と「由美かおるの風呂」の定番化で『水戸黄門』は余計な垢に汚された。『水戸黄門』という番組自身は去年、その垢の中の「由美かおるの入浴シーン」のほうを洗い流したが、世間はその垢が『水戸黄門』その物だと思い込んでいる。今回の終了はTBSのナショナル劇場になって『水戸黄門』についた垢を洗い流すいい機会だ。石坂浩二主演のときにそのチャンスがあったが、中途半端に終わり、昔からのファンは大きな変化に拒否反応を示し、ファンでない人には『水戸黄門』が変化したようには見えずに終わった。『水戸黄門』の話の筋やテーマ、作り手のメッセージでなく出演者や個別のシーンばかりが話題になるようではドラマとしては正当に評価されなくなっていることは明らかで、一度、終わらせたほうがいい。