返り討ち悲話
本放送は1987年。
ある武士と妻、中間(ちゅうげん)の3人が、妻の兄の仇討ちをしようとしていたが、夫のほうが仇討ちを諦めると言いだした。
この武士は仇討ちの相手2名と組んでいた。
また主水の上司・田中が十手を紛失し、この武士がその十手を入手し、偽同心として金をかせいでいた。

武士の息子である少年と影太郎が知り合いになり、少年は父親に十手を奉行所に返すよう求めるが、父親は無視する。

最終的に妻と中間は竹薮で返り討ちに遭う。

政と影太郎が仇討ちの相手2名を始末し、主水がその武士を仕置した。
しかし、これでは少年は父親を失ってしまうことになる。
仕事人はこの十手を悪用していた武士を気絶させて田中の十手を奪還するだけでよかったのではなかろうか。

この悪人となった武士の変心と十手悪用は武士として問題だが、仇討ちは新たな恨みを生むだけで、諦めるのも一つの選擇肢だ。

しかし中間が主人であるその武士の殺しを依頼したらしい。
仕事人がすぐ行動しなかったのは、中間が主人の仕置を依頼する不自然さと、少年が孤児になるのが気の毒だったからだろう。
この中間の依頼も不可解だ。もし彼の主人である武士が先に仕事人によって始末されたら、残るは妻と中間のみ。この2名で仇討ちをしようにも返り討ちに遭うのは目に見えている。
それなら仇討ちの相手の殺しを依頼するほうが手っ取り早いし、むしろ仕事人に助っ人を頼むほうが確実だったろう。

その後、あの少年がどうなったか気になる。
少年は父親が母の兄の仇とつるんでいたとは夢にも思わなかっただろう。
少年にとって主水が父の仇になるか。
あるいは奉行所ではこの武士が仇討ちの相手2名と戦って刺し違えたと解釋しただろう。

主水は田中の十手をドブに捨て、自分が筆頭同心になると信じて喜んで奉行所に向かったが、田中の十手はドブさらいをしていた町人によって届けられており、田中は引き続き筆頭同心の座に留まった。

時代設定
第2話「将軍の初恋騒動!」では大御所・家斉の死去が描かれているので1841年。
一方、主水が十手を盗まれたエピソードが描かれた『春雨じゃ、悪人退治』は1990年の放送で、時代設定は1828年から翌年までのシーボルト事件なので、『風雲竜虎編』第2話から12年以上前の話。
また、『風雲竜虎編』と同年の1987年に放送された『大老殺し』では、影太郎と政も登場し、お玉に代わって『激闘編』以来の加代が復帰しており、『風雲竜虎編』の続編と思われるが、1858年の安政の大獄から話が始まっており、『風雲竜虎編』第2話の家斉死去から16年後の話。『春雨』のシーボルト事件から30年後の話になる。

放送時期の他局の時代劇
1987年当時、TBS『水戸黄門』では西村晃主演シリーズになって4年、野村将希扮する飛猿が登場し、前年から登場したお銀と共に『水戸黄門』の第2次黄金時代を牽引していた。NHKでは『独眼竜政宗』で時代劇が復活し、高視聴率を得る。
一方の必殺は1987年以降、金曜より10時の連続ドラマ枠から撤退し、季節ごとの2時間スペシャルに移行した。21世紀の時代劇の状況を先取りしていた感がある。

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2011年10/2