【解説】産経エクスプレスの特集記事らしい。図書館で7月17日前後の産経新聞を調べたが、そのときは見当たらなかった。見落としているかも知れないので、機会があれば、あとでまた調べてみる。

2001年の第29部で由美かおるの役が疾風のお娟になり、2003年の第32部から助三郎役が原田龍二、格之進役が合田雅吏になった。由美かおるは2010年の第41部で卒業。2010年に始まった第42部で、助三郎を東幹久、格之進を的場浩司、新キャラクターの楓を雛形あきこが演じている。
ネットで観ると、この記事では、この第42部でのキャスト変更を「キャストの若返りと刷新を断行した」としているが若返ったのは1950年生まれの由美かおるからバトンタッチした1978年生まれの雛形あきこだけで、男2名は前任者より1歳年上になっている。東幹久と的場浩司は1969年生まれであり、前任者の原田龍二と合田雅吏は1970年生まれなので、前任者のほうが1歳若かった。産経の記者は『水戸黄門』をよくわかっていないことがわかる。

また、この記事では「助さん、格さん、八兵衛、由美かおるさんが演じる女忍者らのキャラクターの人気で1979年2月5日に関東で平均視聴率43.7%を記録した」(要旨)とあるが、由美かおるが「女忍者」役でレギュラー出演したのは1986年の第16部からであろう。由美かおるは70年代にもゲストで出ているが、有名なかげろうお銀、疾風のお娟役ではなかった。
最高視聴率を記録した1979年前後は東野英治郎シリーズの後期で、女性のお供は助三郎の妻・志乃(演:山口いづみ)と弥七の妻・霞のお新(演:宮園純子)が交代でつとめていたはずだ。由美かおるは東野シリーズでも何度かゲスト出演していたようだが、かげろうお銀としてレギュラー入りしたのは西村晃シリーズからである。

TBSのHPで調べると1978年から79年までの第9部では平均視聴率37.3%、最高視聴率が43.7%だった。

この産経エクスプレスの記事は岡田敏一氏(おそらく記者)が書いたものらしいが、『歴史ドラマの大ウソ』で『水戸黄門』を取り上げた大野敏明氏のコメントも読んでみたいものだ。
Y!Japan 水戸黄門 終了 大野敏明
Google 水戸黄門 終了 大野敏明

「家族」変容 水戸黄門に幕(2011年8月5日、読売)

【解説】実際の記事は第20面と第21面の見開きの文化面で、初代の東野、杉、横内のときの写真、そして第43部の6名の写真、歴代5名の光圀役の顔写真に加え、疾風のお娟役として由美かおる、うっかり八兵衛役の高橋元太郎の顔写真もある。柘植の飛猿、風の鬼若、アキ、よろず屋の千太、おけらの新助は忘れ去られたか。
記事の本文は、なぜか、このブログ記事にあるのと同じである。許可を取ってあるのか?

水戸黄門に幕 日本の夜明け

印籠シーンはテレビ局内では「権威主義的」として大反対されたが、やってみると好評だったらしい。『水戸黄門』の光圀は権威主義に否定的で、印籠提示など嫌うはずだが、それを理解しない視聴者が印籠の場面を求め、結果、『水戸黄門』が矛盾をかかえてしまった。印籠のないまま続けば名作になっただろう。里見浩太朗のコメントで、光圀は文武両道に長けた人物だから、葵の紋だけでなく光圀自身も手ごわいと相手に思わせる立ち回りを心がけていると言っていた。
光圀が文武ともに優れた人物だったとすると石坂浩二の知的な光圀や、里見浩太朗の助&格より強そうなな光圀のイメージはリアルで、それを昔からのファンが理解できずに視聴率が下がったとすると、視聴率低下はファンが『水戸黄門』を理解していなかったせいだということになる。
『西遊記』の三蔵法師もある程度武術が使えるほうがリアルなのだが、孫悟空を引き立たせるために、三蔵はひ弱なキャラクターにされてしまっている。

光圀が印籠で相手を平伏させるのは、ある意味で、悪の権力に対して権力で報復し、権力によってしいたげられる苦しみを味あわせる腹か。しかしこの番組は「身分の高い悪を裁くのは常にそれより上の身分の者」という原則で成り立っている。日本では天下人の交代は武士同士の戦いで成立し、明治維新も徳川と薩長による武士同士の内紛のようなもので、民衆の一揆が幕府や朝廷を倒すことはなかった。『水戸黄門』が既存の身分を絶対化した上での権威主義に満ちているのはそのためか。

2011年10月5日付の読売新聞では鈴木嘉一氏が「『水戸黄門』年内終了 時代劇 民放撤退で窮地」と題して「テレビ史を彩ってきた時代劇がこのまま絶えてしまっていいのか」と民放各局に問いかけていた。
皮肉なことに読売と同系列の日テレは、里見浩太朗主演の時代劇を数多く作ってきた局でありながら、個人視聴率判明後、すぐに時代劇から撤退した。

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