『必殺仕事人』は1979年に始まった必殺シリーズ第15作であり、必殺シリーズそのものは1972年に『必殺仕掛人』として始まった。

 

シリーズで裏稼業の名前が最初に登場した年を列挙するとこうなる。なお、「始末人」は除外する。

 

「仕掛人」(1972年)

「仕置人」(1973年)

「助け人」(1973年)

「仕留人」(1974年)

仕事屋」(1975年)→「仕事料」ということばが使われている。

「仕置屋」(1975年)

「仕業人」(1976年)→「仕事料」のほかに最終回で「商売人」という言い方も。

「からくり人」(1976年)

(1977年には「仕置人」「からくり人」が『新~』で登場)

「商売人」(1978年)

(1978年の「うらごろし」は裏稼業名と言えるか微妙)

「仕事人」(1979年)

「仕舞人」(1981年)

「渡し人」(1983年)

「仕切人」(1984年)

「橋掛人」(1985年)

(1986年の『必殺まっしぐら!』では秀たちは仕事人)

「剣劇人」(1987年)

 

『仕掛人』では梅安も左内も裏の仕事を「仕掛」と呼んでいた。しかし梅安は時々、裏の稼業を「仕事」と呼ぶこともあった。
『助け人』では中山文十郎が裏の稼業を「仕事」と呼んだことがある。
『必殺必中仕事屋稼業』では裏稼業が「仕事屋」で、「仕事料」という言い方もここで出ている。
主水シリーズの中で初期の『仕留人』『仕置屋』『仕業人』『新仕置人』『商売人』は『仕置人』の続編のような作品である。『仕置屋』の第1話でも裏稼業は「仕置人」で、『商売人』でも主水は最初、「仕置人」を名乗っていた。なお、「商売人」という言い方は『仕業人』最終回で出ている。『仕業人』における「商売人」は今で言う「プロ」の意味だろう。

 

『仕置屋稼業』では市松が仕置を「仕事」と言っており、また『必殺仕業人』では又右衛門が仕置料を「仕事料」と言っている。
『新必殺仕置人』の第1話では主水が鉄に「俺は仕事はしねえぞ」と言っている。
『新必殺からくり人』ではお艶(演:山田五十鈴)が安藤広重に宛てたてがみで「広重さん、府中の仕事も終わりました」「日坂の仕事も終わりました」(下注釋)と書いており、「からくり人」も裏稼業を「仕事」と呼んでいたことがわかる。
必殺のスタッフが1979年に到るまで「仕事人」という名を思いつかなかったか、あるいは採用しなかったのも不思議ではある。
「仕舞人」の京山も主水たちと組んだときは「仕事人はお金が命」と言っていた。

 

なお、必殺シリーズの時代設定順で考えると元禄時代に「助け人」と「仕事人」がいたらしい。

 

1694 高田馬場の決闘「助け人」活動
1701┬元禄赤穂事件
1702│主水たちが「仕事人」(『必殺忠臣蔵』)
1703┘

1787┬長谷川平蔵が火付盗賊改方長官
1795┘主水たちが「仕事人」(『仕事人vs三日殺し軍団』)

1798前後 梅安が「仕掛人」

1818前後 文化~文政、主水たちが「仕置人」
1819 「助け人」活動。主水が「仕事人」(『旋風編』)
1820~1821 主水たちが「仕事人」(『2007』『2009』)
1823 河内山宗春没、「商売人」活動?
1828~1829 主水たちが「仕事人」(『春雨』)
1832~1839 「からくり人」活動
1833 秀が出張仕事(『まっしぐら!』)
1835 主水たちが「仕事人」(『激闘編』←ハレー彗星が天保の場合)
1837~1841 家斉大御所時代、主水たちが「仕事人」(『春日野局』)
1841 家斉死去、主水たちが「仕事人」(『風雲竜虎編』)
1841~1844 主水たちが「仕事人」(『江戸警察』)
1842 主水たちが「仕事人」(『アヘン戦争』)
1843~1844 主水たちが「仕事人」(『意外伝』)
1843 玉屋の火災(「渡し人」が活動?)
1844 高野長英が「からくり人」に(『新からくり人』)
1849 「からくり人」活動(『富嶽百景』)。
1849~1851 主水たちが「仕事人」(『主水死す』)
1852前後? 勇次たちが「仕事人」(映画『勇次』?)
1853 主水たちが「仕留人」
1858~1868 主水たちが「仕事人」(『大老殺し』『横浜異人屋敷』『ブラウン館』)
1868 「からくり人」活動(『血風編』)

 

一方、「仕置人」の始まりは文化・文政より前の可能性もある。
『新必殺仕置人』の「王手無用」で伊藤宗看が登場し、彼を演じたのはプロ棋士の伊藤果(いとうはたす)であった。何代目の伊藤宗看かが問題だ。
3代目伊藤宗看は元禄から享保、宝暦までの将棋士で、藤田まこと主演『丹下左膳』で丹下左膳の知り合いだった享保の主水の時代になるだろう。
6代目伊藤宗看(1768~1843)は葛飾北斎より8歳年下で、文政の初めで50歳前後である。
└→『新必殺仕置人』の時代設定💻

 

令和5年の初め、「仕掛人・藤枝梅安」の新作映画が公開され、BS朝日では「仕事人V激闘編」(1985~86)のあと、「新仕置人」(1977)が再放送されている。

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『仕掛人』(1972年)から『仕事人』(1979)まで6年。 

『仮面ライダー』から『スカイライダー』まで。

 『ウルトラマンA』から『ザ☆ウルトラマン』まで。 

『マジンガーZ』から『ガンダム』まで。 

『侍ジャイアンツ』の2年目から『新巨人の星』終了まで。 

『ドカベン』原作開始からアニメ終了まで。

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前後一覧
2011年5/8 5月

 

関連語句
仕置人 [1] [2] 「仕事人」
「仕事人」(江戸時代全般) 時代設定(〃)
2011年5月(作者、作品、ジャンル別年月順)
注釋
「広重さん~」
江戸時代なので「廣重さん」だった可能性があるが、字体は確認できない。なお「広」の略字が江戸時代から手書きで使われていたと假定すると「広重さん」だった可能性もある。なお「終わりました」も江戸時代の假名遣いなら「終はりました」になるはず。
もっとも『必殺仕事人2009』では商い税(消費税)の立て札にあった「商い税」が現代假名遣いであった。すると江戸時代には假名遣いが混乱していたようで、歴史的假名遣いは明治、大正時代に確立された可能性がある。
参照
「仕置人」と「仕事人」
2011年5月(古代史、日本史、時代劇、世界史、藤子作品、スポーツ、近現代~未来)