これは猛烈な批判を受けたようだが、再選を目指す石原都知事は「不幸にして」優勢のようである。
石原慎太郎の息子である自民党幹事長は「幹事長としては出てほしい。家族としては休ませたい」としている。
石原都知事を落選させたい人たちは批判の市民運動や署名や署名活動だけでは無理で、石原氏に勝てる候補に票を集めるような運動をすべきである。
そのまんま東、ワタミ元会長、共産党の小池氏やその他の候補に票が分散し、石原氏に漁夫の利を与える結果になるだろう。

石原氏の「天罰」發言は意外ではある。
普通なら中国や韓国の反日主義者が「日本にバチが当たった」とでも言いそうなもので、阪神・淡路大震災でもそういうことを言った人がいたようで、おそらくは反体制の日本人であろう。

本来、石原氏は他国の反日主義者が「地震は天罰」と言ったときにそれに反論すべきところ、自ら「天罰」を言ってしまった。
これで反石原派の攻撃材料になってしまったが、新聞報道では石原氏がリードして、次が東氏ということで、鈴木都知事のあとが青島幸男、次が石原慎太郎だったことを考えると、東氏が青島氏や横山ノックのようなタレント知事であることを考えると対して代わりばえがしない。

地震について「天罰」という言い方の正否を冷静に考えると、地震は自然現象であるから「天罰」などあり得ないわけで、誰かがそう言ったところで「そんなの迷信だ」と一蹴すればいい話である。
ある意味で今回の地震が「罰」だとするとそれは東京電力と日本政府または首都圏の行政に対する罪である。

強引に言えば総理大臣や東京都都知事に対する「天罰」でもあり、東北の民は完全な被害者である。
だから石原都知事は原發問題が大きくなってから「これは原發を東北や北陸に押し付けてきた我々東京の人間に対する天罰だ」と言うべきであった。それをまるで東北人に罪があるかのような言い方をしたので批判を浴びたわけだ。

今回の東日本大震災では未曽有(下注釋)の大地震と大津波の被害以上に原發の問題が長引いており、首都圏の電源確保のために新潟と福島に原發を押し付けた東京電力と行政に対する「罰」であり、東北と茨城や千葉、埼玉(液状化被害)等の人たちはそのとばっちりを受けた形である。
関東で被災しながら計画停電の影響を受けた側も東京電力の被害者であろう。

「天罰」論は今回の被災に「人間側の原因がある」という見方に属する。
冷静に考えれば「地球温暖化を防ぐ」として原發を容認してきた人類への警告が今回の地震であり、「地球温暖化」を生んだのも人類である。
福島知事が「天災でなく人災」と言ってるが「人災」であれば人間が被害を大きくしたわけで「天罰」論と相反するようでつながる部分がある。

首都圏と関東の違いは曖昧で、伊豆や山梨が入ったり入らなかったりするが、関東は茨城、栃木、群馬、千葉、東京、埼玉、神奈川であり、北陸の新潟は群馬の北隣(注釋)、東北の福島は茨城の北隣で北関東と隣接している。その新潟と北陸に東京電力が原發を作ってきたわけで、関東の人間はその恩惠に浴してきた。
こうなると原發を捨ててある程度の計画停電でも我慢する生活を続ける必要が出てくる。

診療所や自宅で治療を受けている人にとって停電は死活問題だが、東電が原發事故を想定せず、そういう場所に対する配慮をしてこなかった意味では読みが浅すぎた。

それ以外の電気は完全に物欲である。
電話は電話線だけの旧式なら停電しても使えたがファックスや留守電を入れると停電したら使えない。湯沸かし器もコンロも電気仕掛けにすると停電したら使えなくなる。そういう風にしたのは大衆の欲望でありそれに応えたのが家電メーカーであり東電であった。

今回の地震は我々(特に関東の人間)にそういう戒めを与えてくれた意味はある。
もし石原氏が落選したら真の「天罰」が下されたことになりそうだが、どうも都民の大勢は石原再選支持のようである。なお、東京都民は日本中の都道府県の人間が集まって構成されていることも忘れてはならない。

日本では戦争で日本人が受けた被害について相手国を批判せず、「日本が戦争をしたせいだ」ということで、広島や長崎の原爆でも東京大空襲でも日本人が日本政府を訴えるような傾向がある。そうなると戦争で日本人が加害者でも被害者でも日本のせいにするのが日本の「戦後」の平和主義となってしまい。これでは大震災の「天罰」論と対して違いはない。
NHKの戦争ドキュメントでも原爆を落としたアメリカ側の罪を問題視せず、日本軍部の暴走という視点で国内の敵探しに夢中になっているように見える。そうなると一般論として「戦争をした国には相手が原爆を投下していい」ということになり、日本の反戦思想は核武装否定でなく肯定になってしまう矛盾を生む。

被災した中学の卒業式で卒業生が「天が与えた試練と言うには惨すぎるものでした」という答辞をしていたようだ。

石原知事のような日本の愛国者よりは彼を常日ごろ批判している反日主義者のほうが「天罰」論に近いことをいつも言っているように思える。

前後一覧
2011年3/11前後 4/4前後 4/4 4月

関連語句
地震 大地震 震災 都知事 首都圏


注釋
未曽有(みぞう)
最近は「未曾有」という表記が多いが朝日声蘭で「未曽有」も見かけた。麻生元首相が「みぞうゆう」と読んで批判されたが「みぞう」が正しくて「みぞうゆう」が誤りという合理的な理由はなく、単に「みぞう」が慣用になっているだけだ。

北陸の新潟は群馬の北隣
最近では東京でNHKの天気予報を見ると関東甲信越が一つの区域で新潟や山梨も関東と一緒に紹介され、さらに関東地方の天気に移る。新潟(と長野)を北陸から切り離して「関東甲信越」に入れるのはどういう意図か不明。「越」は越前(福井)、越中(富山)、越後(新潟)であるから福井や富山を含めないのも妙だ。


参照
2011年4月(古代史、日本史、時代劇、世界史、藤子作品、スポーツ、近現代~未来)