共産圏における書記長が国のトップであることが多く、ゴルバチョフ元大統領もソ連(下注釋)の大統領になる前は書記長だった。
以前から書記というと会議の記録がかりで、幹事長というと宴会の幹事の偉い人かと思ったものだ。

 

書記は英語で a secretary であるが、「書記長」は a chief secretary,a secretary-general である。
secretary-general は国連の事務総長も意味する。

 

国連のパン・ギムン事務総長は英語で Secretary-General Ban Ki-moon である。
これはシナ語で「联合国秘书长潘基文(聯合國秘書長潘基文)」になる。
「潘基文」は北京語で Pan Jiwen になる。
朝鮮語では「반기문 UN사무총장(潘基文 UN事務總長)」になるようだ。
朝鮮語による發音は Pan Gi-mun Yu-En Sa-mu-chong-jang になるであろう。
Y!Korea 潘基文 UN

 

また、日本の政党の幹事長も英語では secretary general である。

 

一方、general を先にした general secretary という肩書きもある。

 

1922年から1991年まで存在したソ連の書記長の場合、英語では General Secretary だったようだ。
英語の Wikipedia で Mikhail Gorbachev を調べると、
General Secretary of the Communist Party of the Soviet Union from 1985 until 1991
という肩書きがある。

 

1982年に没したブレジネフ書記長(Leonid Brezhnev)も同様だ。

 

彼は
the General Secretary of the Central Committee (CC) of the Communist Party
of the Soviet Union (CPSU),
という肩書きである。

 

ちなみにアメリカの国務長官は英語で United States Secretary of State であり、この職務も Secretary で、「秘書」や「書記」のお仲間だ。

 

一方、「大統領」は英語で President であるが、これは「前に座る人」の意味で、「議長」も意味する。
ゴルバチョフが General Secretary から President になったとすると、これは当時のソ連の「事務総長(幹事長)」から「大統領」になったとも解釋できるし、「書記長」から「議長」になったとも解釋できる。
ロシア語では「大統領」は prezident または pred-sedatel' である。
pred-sedatel' は「前に座る人」であり、president がドイツ語で Vorsitzender となり、それをモデルにした翻譯借用の可能性があるようだ(田中克彦・Harald Haarmann『現代ヨーロッパの言語』)。
西洋の大統領は中国で「總統(=總統、总统)」zongtong である。
中国で「総統」は台湾の指導者で、大陸のそれは「国家主席」であり、中国の国家主席は「中国共産党総書記」を兼ねているのが普通だ。
英語の新聞では中国の国家主席も President と譯され、例えば胡錦濤国家主席は President Hu Jintao である。

 

なお、中国では国連を「聯合國(=联合国)」Lianheguo と呼び、その事務総長を「秘書長」Mishuzhang と呼ぶ。
国際連合は the United Nations であり、これは第2次大戦当時の「連合国」だからである。

 

ブレジネフがシナ語で「勃列日涅夫」と書かれるのは露語の zh がシナ語の r に相当する例である。
Brezhnev

Bolieriniefu

 

 

前後一覧
2011年2/23 2/24 2/27 2月

 

関連語句
secretary 幹事長 secretary secretary 事務総長
事務総長 幹事長 secretary 現代ヨーロッパの言語
近現代

注釋
ソ連
1922年から1991年まで約70年(69年)存在した国だが、帝政ロシアがロシア革命で倒れたのが1917年であるから、ロシア革命からソ連成立までの5年間、ロシアは帝国でもなくソ連でもない中間的な存在だったことになる。
ロシア革命の1917年からソ連崩壊の1991年までは74年である。
また、ソ連は結果としてロシア帝国とロシア連邦の間の「つなぎ」として、ロシア連邦周辺の国々をロシア帝国から独立させる役割を果たしたことになった。

参照
「事務総長」と「書記長」と「幹事長」
近現代~未来(2011年2月1日~)