○『「巨人の星」の謎』(1993)/河崎実(1958~)
『巨人の星』の原作とアニメ、『新巨人の星』の原作のみを主な題材としている。アニメの『新巨人の星』2作は基本的に除外。
左門と京子の結婚について河崎実氏は「左門は飛雄馬のてがみのことを秘密にして、京子に求婚しまくったのだろう」としているが、『新巨人の星』のアニメ第7話「影の友情・左門メモ」で左門が京子に求婚する場面がきちんと描かれており、左門は京子に飛雄馬からのてがみを見せていた。

○『水原勇気0勝3敗11S』(1992)/豊福きこう(1963~)
豊福氏は2000年に『水原勇気1勝3敗12S』を出している。
『水原勇気0勝3敗11S』で豊福氏は『巨人の星』に関しては原作の『巨人の星』と『新巨人の星』と『巨人のサムライ炎』までを対象にしており、アニメは除外。
星飛雄馬の背番号16について豊福氏は「いかに(野球の)神様の背番号とはいえ所詮は打者のもの」としており、しかも川上が投手としては失格の烙印を押された身であることを指摘、飛雄馬は16番をもらったときから茨の道を歩んでいたとしている。これについてアニメ第121話「泥まみれの背番号16」で明子が語っており、川上が投手として果たせなかった夢を飛雄馬にたくしたということになっている。

○『「巨人の星」に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ。』(1998)/堀井憲一郎(1958~)
この本は2003年に文庫化された。
原作の『巨人の星』だけを深く掘り下げているが、アニメについては触れていない。花形の年齢の矛盾について書かれてあっても明子のそれについては書いておらず、河崎実氏が『「巨人の星」の謎』で明子の年齢の問題を扱っている。堀井氏は『巨人の星』において星飛雄馬の左腕の筋肉が壊れて指を動かせなくなった現象を医者に推理してもらっており、『新巨人の星』に関しては飛雄馬が「左肩を壊した」という設定であることなどから別の時間軸の話としている。
また、堀井氏は飛雄馬が一徹を一貫して「とうちゃん」と呼んでいると書いている。これに対し『新』の原作で飛雄馬は「親父」と呼ぶようになっている。しかしアニメの『新』ではやはり「とうちゃん」である。
さらに堀井氏は一徹が「飛雄馬が巨人の星座の明星になる日」まで禁酒をしたことについて「生涯禁酒していた可能性がある」としているが、『新』では冒頭から一徹が屋台で酒を飲んでおり、『新巨人の星II』の最終回で一徹は息を引き取っている。

○『空想科学[漫画]読本』(2001)/柳田理科雄(1961~)
花形が大リーグボール養成ギプスを絶賛した件について柳田氏は「ならば満くんにいてやりたい。そんなに効果があるんだったら、お前もやれよ!」(21ページ)としていたが、柳田氏が大リーグボール養成ギプスもどきを作って実験したところ、漫画どおりのギプスにはバネが触れる身体の一部をはさんでしまう難点があり、柳田氏は「実験もせずにこの欠陥を見抜いていたとしたら、花形は賢い!」(26ページ欄外)としている。確かにそうだが、アニメ『新巨人の星II』の終盤では花形が蜃気楼ボールを打つために大リーグボール打倒ギプスをつけていた。これは用途の上では打倒ギプスだが、オズマがつけたような50本近いバネで身体を締め付けるタイプではなかった。『新~II』で花形のつけたギプスは画面で見ると飛雄馬が少年時代につけていた養成ギプスと同じでバネが4本くらいであった。

花形が星飛雄馬の大リーグボール養成ギプスを見たのは1958年、オズマが大リーグボール打倒ギプスで特訓したのは11年後の1969年、花形が大リーグボール打倒ギプスで特訓をしたのはさらに約10年経過した1977~79年ごろであった。
└→『新巨人の星II』の時代設定

柳田理科雄氏は『巨人の星』を何度も取り上げ、『侍ジャイアンツ』も『[漫画]読本』で扱っているが、梶原作品では『巨人の星』以外では格闘技漫画の話に偏っており、水島作品の『ドカベン』については柳田氏は岩鬼の打球と葉っぱなどについて取り上げたくらいで言及は少ない。
『空想歴史読本』の円道祥之氏(1960~)は1960年代、70年代の空想歴史に関して怪獣、ヒーローものに偏っており、スポーツアニメ関係について何も触れていない。
ここれこの作者たちの世代を野球漫画やアニメの変遷と比較してみる。

___┌──────1958年生まれ(河崎実、堀井憲一郎)
___│_┌────1960年生まれ(円道祥之)
1958_00_│_┌──1961年生まれ(柳田理科雄、石橋貴明)  
1959_01_│_│_┌1963年生まれ(豊福きこう)  
1960_02_00_│_│  
1961_03_01_00_│  『ちかいの魔球』(~62)
1962_04_02_01_│  
1963_05_03_02_00  『黒い秘密兵器』(~65)
1964_06_04_03_01  
1965_07_05_04_02  
1966_08_06_05_03  『巨人の星』(~70年12/25發賣、71年1/17号)
1967_09_07_06_04  
1968_10_08_07_05  『巨人の星』(アニメ、~71)
1969_11_09_08_06  
1970_12_10_09_07  
1971_13_11_10_08  『侍ジャイアンツ』(~74)
1972_14_12_11_09  『ドカベン』(~81)
1973_15_13_12_10  『侍ジャイアンツ』(アニメ)
1974_16_14_13_11  
1975_17_15_14_12  
1976_18_16_15_13  『新巨人の星』(~79)、『ドカベン』(アニメ、~79)
1977_19_17_16_14  『新巨人の星』(アニメ、~78)
1978_20_18_17_15  
1979_21_19_18_16  『新巨人の星II』(アニメ)、『巨人のサムライ炎』(~80)
1980_22_20_19_17  
1981_23_21_20_18  
1982_24_22_21_19  
1983_25_23_22_20  『大甲子園』(~87)
1984_26_24_23_21  
1985_27_25_24_22  
1986_28_26_25_23  
1987_29_27_26_24  
1988_30_28_27_25  
1989_31_29_28_26  『ミラクルジャイアンツ童夢くん』(~90)
1990_32_30_29_27  
1991_33_31_30_28  
1992_34_32_31_29  
1993_35_33_32_30  
1994_36_34_33_31  
1995_37_35_35_32  『ドカベン プロ野球編』(~03)
1996_38_36_36_33  
1997_39_37_37_35  
1998_40_38_38_36  
1999_41_39_39_37  

石橋貴明は1961年生まれで『巨人の星』の大ファンであるが、『ドカベン』もよく読んでいたようで文庫にコメントを寄せている。
太田光は1965年生まれで『巨人の星』と『ドカベン』両方のファンらしい。


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