壇浦兜軍記 阿古屋』は『出世景清』の改作。

いずれも作品が出たのは江戸時代だが、作品の舞台は平家滅亡後であるので、平安末から鎌倉時代にかけての時代となる。
壇ノ浦の合戦は1185年で、1192年は源頼朝が鎌倉幕府の将軍になった年であり、1185年から鎌倉時代とすると平家滅亡後は鎌倉時代、1192年から鎌倉時代とすると壇ノ浦の合戦後は平安時代末から鎌倉時代までの移行期になる。

この両作品は平家滅亡後、源氏への復讐を考えたとされる「悪七兵衛景清」こと藤原景清(別名が平景清らしい)の物語。
没年は1196年であるから完全に鎌倉時代である。

平家が滅んだとされるが、北条家は桓武平氏の子孫とされ、それが鎌倉幕府で源家と組んでいたのは皮肉な矛盾ではある。
そうなるとのちに鎌倉幕府で北条氏が平氏の遺恨を晴らす意図で源氏から政権を奪ったとも考えられる。
さらに室町幕府の足利氏は清和源氏の子孫を名乗っており、北条氏が平氏の子孫だから、結局、足利は「我々は源氏、平氏は敵」として北条を敵とすることになったのだろう。
『太平記』ではそのような描写があった。

なお、「源義経がジンギス・カン(チンギス・ハーン、注釋)になった」という俗説は完全にのちの創作であろうが、これはフビライ・ハーンを「義経の子孫」とすることで、元寇を源氏の末裔(それも反逆者として征伐された側)による鎌倉幕府(当時は北条時宗の時代)への復讐とする解釋である。


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2010年12/9

関連語句
壇浦兜軍記 源氏 足利 壇ノ浦 鎌倉幕府 [1] … [8]


注釋
ジンギス・カン(チンギス・ハーン)
「ヂンギス・カン」と書けば「チンギス」と「ヂンギス」の清濁の違いが明確である。


参照
一般時代劇vs必殺シリーズ(2010年12月)