大岡忠相と遠山景元・その1

江戸時代は文化が進んだ時代と、倹約が進んだ改革の時代が交互に来ている。
元禄文化→享保の改革→田沼時代→寛政の改革→文化・文政時代→天保の改革という具合で、バブル経済と引き締め政策の繰り返しのようなものだ。

それでは黒船以降の幕末は文化が進んだ時代か、改革による引き締めの時代か、それははっきりしない。
井伊大老の安政の大獄は第4の改革を目指したのであろうが、これは天保の改革以上に評判が悪い。

必殺シリーズでは鳥居耀蔵と水野忠邦に続いて井伊直弼も中村主水によって暗殺されている。

黒船後の日本において最大の改革は明治維新であろうが、すると幕末はやはり元禄や田沼時代、化政時代のように改革の合間に文化が解放された時代であろうか。
では杉田玄白や葛飾北斎のような文化人は幕末ではそういう人がいたか。

幕末というと武士たちの政治的な駆け引きばかりが注目されるが、幕末文化に注目してもよさそうなものだ。
もっとも文化の面では明治維新後の文明開化のときの文化のほうが、日本の歴史では革新的ではあったが。

『仕事人vsオール江戸警察』では、天保の改革が始まったとき、中村家でせんとりつが三味線をバックに踊っていたところ、主水が制止。せんとりつは人情本や装飾品などが規制される改革に不満を訴えていた。終盤で主水が鳥居を暗殺したあと、また中村家でせんとりつが三味線をバックに踊っていて、そこに主水が帰宅すると、今度は三味線弾きは自主的に演奏を止め、せんとりつも踊りをやめた。しかし、主水は「なんでやめるんですか。おやんなさい。改革は終わったんですから」。
これが必殺シリーズのメッセージだったのかも知れない。

カゴ直利が描いた日本史の漫画では、天保の改革は団十郎追放など、庶民の間では不評で、改革が終わると庶民は喜び、ある物が木魚を手に「水野はたたくに(ただくに)持って来いの木魚だ」として、周りの人々が「ぶったたけ、ぶったたけ」とはやしていた。

___改革派__反改革派~改革前のバブル推進派
元禄___________徳川綱吉 …元禄時代
享保_徳川吉宗_徳川宗春_____ …享保の改革
___大岡忠相__________ 
天明前後_________田沼意次 …田沼時代
寛政_松平定信__________ …寛政の改革
化政___________徳川家斉 …文化・文政時代
天保_水野忠邦__________ …天保の改革
___鳥居耀蔵_遠山景元_____

享保と天保だけを比較してみる。

___改革派__反改革派
享保_徳川吉宗_徳川宗春_ …享保の改革
___大岡忠相______ 
天保_水野忠邦______ …天保の改革
___鳥居耀蔵_遠山景元_

こうして見ると大岡忠相と遠山景元は立場が正反対である。大岡は改革派、遠山は反改革派であった。

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