『水戸黄門』放送期間42年と光圀隠居10年(4分割、3分割、2分割)

2001年の第29部、石坂浩二版で光圀藩主時代から時代がリセットされている。
40年続いたのであれば、例えば、もし光圀が23歳の若者だった時代の話から始めたとしても、34歳で藩主になって63歳で隠居するまでのドラマを描くことができたはずだ。「史実」の光圀の藩主時代と隠居時代を合わせても40年近い。もしドラマが1661年の光圀の藩主就任から話を始めても、隠居時代の末期まで描くことができた。
『水戸黄門』で光圀の隠居時代だけを描いていることが、いかに偏っているかよくわかる。

10年または10シリーズごとに分けた場合、江戸時代の西暦と各シリーズの時代設定が必ずしも一致しているわけではないが、10シリーズごとに分けた場合、光圀が近畿で吉宗と会った会話と思われる第28部と第38部が表では1698年に相当し(実際は第38部は元禄丁年、1697年の設定)、同じ時代設定で一致する。

松尾芭蕉は1694年没で、石坂版では第29部に登場したようで、10年ごとの分割では1693年に相当するので問題ないが、10年シリーズごとの分割では芭蕉没後4年たった1698年になる。里見版でも第40部で芭蕉が登場するが、これは里見版初期の第31部か第32部あたりで登場したほうがよかった気がする。

第4部では格之進に妻と息子がおり、旅立つ格之進を送り出していた。休む間もなく格之進を旅に同行させる光圀にも問題があった。のちに格之進が独身の設定になったのも仕方ないことであろう。もっとも光圀の姪・密姫は鶴岡の庄内藩主・酒井忠真に嫁ぎながら江戸住まい。江戸時代の夫婦は一緒にいないことが多くても長続きしたのだろうか。

いずれにしろ、光圀が何度も全国行脚をするシステムは家臣の生活や仕事にも支障をきたす。助三郎と格之進は水戸藩でろくに仕事もできなかったことだろう。光圀が漫遊している間、水戸や江戸に戻ったらそこで騒動ということもあった。こうなると光圀の政敵が日本各地で問題を起こし、光圀を全国行脚に誘い、その間に光圀の命を狙い、あるいは「鬼のいぬ間に洗濯」とばかりに光圀の留守中の関東で問題を起こしていると考えるべきだろう。

そもそも助三郎と格之進は水戸藩士だから綱條の家臣であるはずだ。光圀の気ままな旅に付き合わされて職務に影響が出ないはずがない。東野~西村版と佐野~石坂~里見版で2分割した表は番組の20年が劇中の10年と解釋したもので、光圀一行が常に移動していたと考えた場合である。

すぐに水戸藩の頼る各地の藩士も問題で、光圀は会津でも薩摩でも何度も何度も訪れている。問題が起きるといつでも水戸光圀に頼るようでは、自浄能力が欠けていると言えよう。

それに「副将軍」などというのは役職でも何でもなく、将軍を補佐する側用人弥老中がしっかりしていれば「副将軍」など不要でる。
光圀は水戸藩士である助三郎と格之進にはゆっくり水戸で仕事をしてもらい、光圀自身も漫遊などせず、抗議隠密を各地に派遣して常駐させ、日本各地各藩の問題は地元で解決させるのが最善の策である。最大の敵が柳沢吉保で江戸城にいるなら、光圀は関東から出ないで、足元を監視することに專念すべきであった。

補足
里見版では石坂版から引き続きお娟が光圀に仕えていたので、石坂~里見版は佐野浅夫版以前とは別世界で、石坂版で光圀の隠居から作り直した路線を里見版で受け継いでいるはずだ。するとお娟はお銀と別人なのだから、第37部第10話を観る限り、お銀と弥七がどういうプロセスで知り合いになったかは、石坂~里見版では描かれていないことになる。

それに弥七は石坂~里見版では第17部が初登場で、石坂版以降で弥七がどういう過程で光圀の家来になったかもまるで描かれていない。また、石坂版では八兵衛はいなかったので、里見版第40部に登場したうっかり八兵衛は石坂版以降の『水戸黄門』では初登場になる。
第29部の石坂版で光圀隠居からドラマが作り直され、里見版がその続編(お娟の存在)なのであれば、弥七は第37部(第29部から9作目)で何の説明もなくいきなり登場し、うっかり八兵衛も厳密には第32部(第29部から4作目)の直後の1000回スペシャルと第40部(第29部から12作目)でいきなり登場したことになる。
『水戸黄門』の新作が出るとき、記者がそういうことを話題にしないのは不思議である。

第42部
9月14日付『ザテレビジョン』の電子版によると、『水戸黄門』第42部について「第1話では、光圀に仕える助さんと、藩から老公警護の命を受けた格さんの出会いから、一行が高松を目指して旅立つ姿が描かれている」とある。それで第37部から登場した弥七、第40部から登場した2代目八兵衛の設定はそのままだとすると、時間が進んでいるのか逆戻りしているのかわからない。
└→『水戸黄門』第42部制作發表

時代設定の上では、第42部では光圀が隠居してから1年くらいの時期に戻っているようだ。
└→『水戸黄門』第42部第1話

前後一覧
2009年10/21前後
2010年9月 9/11 9/15 9/18 9/19