一筆啓上、市松と星一徹から考える教育論

秀は『仕事人大集合』で『必殺仕置人』の錠と組んでいるが、錠と市松がともに沖雅也の演じる仕置人であったためか、秀と市松の共演はない。

『仕置屋』第10話で市松が少年を堅気に育てようとして、少年が市松の「裏の仕事の準備」を「学習」しているのを知って愕然となり、手放した。さて、この少年は堅気になったか、または「不幸」にして仕事人になったのか。
例えばこの少年がのちの秀や政である可能性はあるかどうか。

もし、秀だとすると、少年は「仕置屋」時代の中村主水と会っているので、『仕事人』で主水の裏稼業を知った大人の秀が驚くはずがなく、そうでなければ秀が少年時代に合った主水を忘れていたことになる。

また、主水の年齢で考えると、主水が市松、印玄と組んでいた時期から秀、左門または勇次と組む時期までは1年ほどしか経過していないことになる。

1975年から1976年まで放送された『必殺仕置屋稼業』第10話で主水は42歳だったようで、この時点で主水は藤田まことの実年齢とほぼ同い年だったようだが、6年後に放送された『新必殺仕事人』では主水は43歳で、この時点では主水は藤田まことの実年齢より5歳年下になっている。

時代設定の上では『新仕事人』は『仕置屋』の翌年の話になる。

『仕置屋』は鳥居耀蔵が南町奉行になった直後の話で、1842年(天保13年)初めとすると、『仕事人IV』のスペシャル版『仕事人アヘン戦争へ行く』の時代と重なるので、むしろ市松が秀とほぼ同世代である。
ただ、中村主水が文化・文政、天保、幕末の各時代に分散しているように、錠、市松、秀、政、竜といった仲間も特定の時代だけにいたわけではないだろう。天保の改革の時代の少年が大人になった嘉永、安政年間以降でも、別の秀や政がいた可能性があるのだ。

秀は『仕事人IV』最終回の人相書きで30歳くらいとされている(もっとも南町奉行が鳥居耀蔵でなく山岡銀二郎で、主水によって暗殺されており、これは主水が鳥居を暗殺した『仕事人vsオール江戸警察』と別の話なので、『仕事人IV』の時代設定は最終回に限ってはアヘン戦争や天保の改革の時期ではない)。

1841年から10年後の1851年、『主水死す』の主水が水野忠邦を暗殺。『仕置屋』第10話の少年が10歳だったとしても『主水死す』の時代で20歳で、秀はやはり30以上だから、まだ合わない。さらに10年後だと30歳で、時代は文久年間の1861年になり、『大老殺し』と『横浜異人屋敷』の間になる。すると鍛冶屋の政とも考えられるが、『仕事人・激突!』の時代設定が幕末、それも1860年前後とすると秀がその世代だった可能性もある。

つまり、もし市松が育てようとした少年が秀だったとしても、その秀が仕事人として現役になるのは幕末の話ということになる。
ちなみに坂本龍馬は1835年(陽暦で翌年)生まれで、『龍馬伝』の第1話で描かれた1843年当時はまだ小学生くらいの少年だった。龍馬は安政の大獄から桜田門外の変の時期に25歳くらいになっていたことになる。

秀の年齢が三田村邦彦と同じ年だったと假定した場合は、仕事人・秀の年齢【弐掛】のようになるが、ここでは『裏か表か』『まっしぐら!』『アヘン戦争』『香港・マカオ』『主水死す』のデータのみなので、1842年前後の秀は大人になってしまう。幕末の主水は1854年まで「仕留人」で、1858年には「仕事人」になっていて、しかもすでに鍛冶屋の政と組んでおり、主水は秀と組んだあとに政と組んだわけだから、「幕末の主水」は仕留人解散から4年以内に「幕末の秀」と組んでいた可能性がある。
假に「幕末の秀」が1860年で30歳であれば、1840年当時は10歳であるから、天保の改革のときには少年時代だったとしても不思議はない。

秀の代わりに「幕末の政」の年齢を考えてみる。花屋の政が24歳で鍛冶屋の政が25歳の場合で書いたように、『大老殺し』の政がちょうど1840年代半ばで少年時代を迎えていたことになる。
組紐屋の竜も政とほぼ同世代であろう。

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2010年9月 9/10前後 9/11