『歴史ドラマの大ウソ』・その1

『遠山の金さん』(下注釋)については遠山景元の彫り物の真相について述べているが、景元が「安政の大獄の最中に死んだ」としている。景元の没年は1855年で確かに安政年間だが、安政の大獄(下注釋)は1858年からで安藤広重、島津斉彬、徳川家定が没したときからではなかろうか。

『必殺仕事人』(下注釋)に関しても、中村主水の「主水」は同心クラスが名乗る名前出ないこと、同心の家は長屋であって一軒家でないこと、男である主水が妻や姑と一緒に食事することはありえなかったこと、夜には人々は出歩くことはほとんどなかったことなど、全般的な話があるのみで、例えば『主水死す』と『仕事人2007』の前後関係などについては、さすがに触れられてはいない。

ただ、本に未収録の内容はインターネットに記載されている(下注釋)。

この本の117ページで『落日燃ゆ』の事実誤認を批判している。そこでは、実際は昭和12年は1936年なのに「ドラマでは昭和12(1946)年7月に始まった日華事変を『関東軍の暴走』として、強く非難していた」としている。そのうえで「しかし、これは、とんでもない事実誤認である」としている。これはこの本の年号の誤植であろう。
なお、原文では「関東軍の暴走」の前後のカギカッコは「」でくくられている。

『ラスト サムライ』についてはまだ言及されていない(柳田理科雄が『空想科学[映画]読本2』で言及している)。
└→『ラスト サムライ』
└→横浜I【地理】

前後一覧
2010年9月 [6] 9/5

関連語句
時代設定 時代考証 年表 [1] … [10]
歴史ドラマの大ウソ(タイトル) 歴史ドラマの ウソ


注釋
『遠山の金さん』
『江戸を斬るII』以降では西郷輝彦や里見浩太朗の演じた遠山は、桜吹雪を見せたり見せなかったりしていたが、少なくとも里見版『江戸を斬る』の後半では、他の『金さん』と同様、桜吹雪が定番となっていった。奉行が町人姿で潜入捜査をするのはあくまで非常手段で、切腹覚悟の掛けで、奉行在職中に一度やるかどうかである。本来はその緊迫感がこのシリーズの魅力だったはずだが、その桜吹雪を定番にしてしまったのは視聴者であろう。
└→『遠山の金さん』【作品】
└→遠山金四郎(景元)について補足

安政の大獄
必殺スペシャル『大老殺し』では安政の大獄から桜田門外の変までの時代が描かれている。主水が日米親善野球大会の日本代表監督を任されたが、試合は爆發事故で中断。この模様を晩年の安藤広重(歌川広重)が書いていた。

同心の家は一戸建てでなく長屋
中村主水は『仕事人V旋風編』で百軒長屋の番所勤務になったかと思うと、『仕事人2009』でも自身番勤務となっており、主水が長屋にいるほうが自然だということか。『旋風編』で主水がオランダ商館(の人)から表彰されたのは西暦1819年1月。一方、『仕事人2009』で主水が自身番で働いていたのは1821年(文政4年)の2月から4月までを含む時期である。

『必殺仕事人』
『歴史ドラマの大ウソ』はことばに関する話が多いが、この本に書かれていない関連事項を追加する。
江戸時代を舞台にした時代劇で「現代假名遣い」が使われている。
例えば『新必殺仕事人』等で勇次の家の三味線型の看板にある「はりかえどころ」、『必殺仕事人2009』で「商い税」の取り立てを示す看板の文字が「現代假名遣い」である(江戸時代はすでに假名遣いが混乱していた可能性はある)。
└→江戸時代における假名遣いと漢字の字体の問題

『必殺仕事人』の時代設定について追加すると、1996年公開の『必殺!主水死す』で主水の入った小屋が爆發、主水が行方不明になったが、これは主水が水野忠邦を暗殺した直後で、1851年ごろの話。『仕事人2007』の時代設定は1820年2月14日なので、時代が30年ほどさかのぼっている。問題は1853年、黒船来航のときに北町奉行所同心だった『仕留人』の中村主水が1851年以前の主水と同一人物なのか、それとも別人なのかということである。幕末の主水は1858年以降の安政の大獄のとき、さらに1863年に清河八郎が浪士隊を結成したときには南町奉行所の定廻り同心になって(戻って)いる。
└→『必殺!主水死す』と『必殺仕事人2007』『2009』『2010』の前後関係

インターネットに記載
大野氏は引き続き『必殺仕事人2010』における時代考証を検証しているようで、ネット上でも読むことができた。その後、ネットでは削除され、『坂本龍馬は笑わなかった』に収録されている
└→【歴史ドラマのウソホント】「必殺仕事人2010」 旗本は老中になれない 2010/08/23 17:31

このHPでは武士が刀に袋をかぶせるかどうか、傘をかぶるかどうか、旗本が老中になれるかどうか、老中が大奥の年寄に頭を下げるか、家紋の形といった風俗、礼儀作法に関する話が多く、やはりシリーズでの個別の話の前後関係、平賀源内や千葉周作、井伊直弼などの実在の人物と仕事人たちの関係については言及していない。


参照
◎キャラクター年齢変遷
『水戸黄門』に関する論評、検証
『歴史ドラマの大ウソ』で言及されている「『水戸黄門』で日本全国、ことばが江戸風である不思議」
歴史ドラマのウソホント『必殺仕事人2010』
歴史ドラマのウソホント『落日燃ゆ』
一般時代劇vs必殺シリーズ(2010年8月~)
一般時代劇vs必殺シリーズ(2010年9月~)