時代劇では人が刀で人を斬っても服は切れていないし血も出ない。
だから設定上、斬っているのか峰打ちになのか、慣れないとわからないことがある。

『水戸黄門』の助三郎は脇差しで峰打ちの場合が多く(初期は斬っていたが)、由美かおるが演じていた女忍者・かげろうお銀、疾風(はやて)のお娟は刀で相手を斬っている。
『暴れん坊将軍』の吉宗は峰打ちだが、お庭番2名は相手を斬っており、『将軍家光忍び旅』の徳川家光と柳生十兵衛、『殿さま風来坊隠れ旅』の徳川治貞は相手を斬っている。

大野敏明氏は『歴史ドラマの大ウソ』で「刀で人を2、3人斬ったら刀身はグラグラになり、手は血糊ですべる」としている。
大野氏はこの本で『暴れん坊将軍』の吉宗が相手を斬り捨てていると書いているが、実際は峰打ちである。逆に斬っている設定でも血が出ないから、こういう誤解が出る。

『水戸黄門』の場合、光圀は相手の刀を木の杖で拂ったりして、杖が刀で切られることはなく、格之進が印籠を出すと、斬られたはずの人間も無傷で平伏している。

『必殺仕掛人』で西村左内が他の武士を斬ったとき、血が出る場面があったが、他の場面では出血はない。
『必殺仕業人』で中村主水が相手を背後から刺したとき、相手は設定上は死んだと思われるが、その場を通った人は「なんでえ、こんな所で」と笑っており、酔っ拂って寝ていると勘違いしたようだ。
つまり、演出上、主水に刀で刺された人間から血は出ていないのだが、作品での展開もそれが前提になっているようだ。

『暗闇仕留人』で大吉(演:近藤洋介)が「心臓つかみ」をやって、レントゲン画面と心電図まで出たが、あの大吉の手は相手の体内に入っているのかわからない。一度、相手の心臓が普通と逆で、右(向かって左)にある場合があって、相手は一度、大吉の手を胸に受けながら平気で、服も破れていなかった。すると大吉の「心臓つかみ」は服の上から胸を圧迫するものであったか。

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2010年8月 8/31