水島新司の野球漫画で言うと、『野球狂の詩』の新潟西高校の面々、日下部了、富樫平八郎の家族や友人も東京風のことばを使っている。

北海道生まれで九州で育ったはずの王島大介のことばは東京風で、養父母や恩師も同じ。いわき東の緒方も初登場当時は少し東北方言が入っていたが、すぐ東京語を話すようになっている。

青森のりんご園農業高校もそうで、星王のことばは東京語である。

関東の場合、神奈川明訓の岩鬼が関西辯、殿馬は語尾に「~づら」がつき、東海高校の雲竜が九州辯風なのだが、それ以外は東京以外でも東京風のことばで、千葉のクリーン・ハイスクールの影丸、青田高校の中西球道、栃木の中二美夫もそうである。神奈川では東郷学院の小林真司も白新高校の雲竜も東京語を使う。

大阪の通天閣高校の坂田三吉、南波高校出身の藤村甲子園、岩風、球二、球三、東京の巨人学園の堀田が大阪辯らしきことばを使うくらいである。

真田一球が対戦した高校の中で、水島新司そっくりの監督が率いるチームがあったが、その監督は「~だべえ」ということばで、『大甲子園』第1巻で一球が言っていた「がんばんべえ」はもともとこの監督の決め台詞であった。『一球さん』は東京の地区予選を重点的に描いた作品で、対戦相手は東京の高校のはずだ。

全体として見ると、東北から西日本も含めて、関東以外の各地方で廣く東京風のことばが浸透し、東京を含めた関東では逆に日本全国の方言が集まっているという、逆轉現象が見られる。