大野敏明氏が『歴史ドラマの大ウソ』(2010年6月、産経新聞出版)でNHK大河ドラマ『篤姫』と『龍馬伝』、さらに『新選組!』の事実誤認を批判している(下注釋)。
篤姫と小松帯刀が一対一で碁を打つ場面なども、当時はありえなかったらしい。
また、江戸時代の人は感情を表に出さないよう教育されていたので、『龍馬伝』で龍馬がやたら表情豊かなのは間違いらしい。言われてみると確かにそうで、『龍馬伝』に出てくる人たちはやたら感情を表に出して、叫んでいるように見える(下注釋)。

また、龍馬が千葉道場に着いたとき、案内した人が「大道場になります」などと言っていたようで、大野氏はこれも批判している。これはコンビニやファストフィード店やレストランの店員が「ハンバーガーになります」などと言うコンビニ接客用語で、1980年代終わりから、はやり出した言い方とのことだ(下注釋)。

この本の24ページでは、例によって『龍馬伝』で近藤正臣が演じた山内容堂が年を取りすぎている点に触れている。本によると山内容堂は1853年当時で満26歳(下注釋)。
また、同書44ページによると、『篤姫』で稲森いずみが演じた滝山が逆に若すぎたらしい。
本によると、滝山は1805年生まれで明治維新のときは60代前半。松坂慶子が演じた幾島より「10歳前後年長」とあり、ネットで調べると幾島は1808年生まれで滝山は幾島より3歳年上で、年齢差が若干違う(下注釋)。
多少の誤差はあるが、確かに大野氏が言うように大河ドラマでは配役の年齢に問題がある。
滝山と幾島は島津斉彬(1809~1858)より年上である(下注釋)。

前後一覧
2010年8月 8/25

関連語句
龍馬 [1] [2] [3] 篤姫 [1] [2] 龍馬伝 メリケン オロシヤ
歴史ドラマの大ウソ(タイトル) 歴史ドラマの大ウソ [1] [2](内容)


注釋
大河ドラマの事実誤認
この本では触れていないが、『翔ぶが如く』と『篤姫』を比べると1868年(慶応4年)の江戸開城前におこなわれた勝海舟と西郷隆盛の会談の場面で、話の内容がまるで違っている。『翔ぶが如く』では慶喜の処遇が最初から最後まで会談の話題の中心だった。一方、『篤姫』では島津斉彬が篤姫に宛てたてがみを勝海舟が持参し、西郷に読ませていた。そんな場面は『翔ぶが如く』では描かれていなかった。どちらかが嘘か両方嘘ということになるだろう。
└→『翔ぶが如く』『篤姫』『龍馬伝』の違い
└→『篤姫』第48回「無血開城」

時代劇で侍が感情を出しすぎ
└→時代劇で武家の人間が感情を出しすぎる点

「大道場になります」
作中の龍馬たちや幕臣たちがアメリカとロシアを表す場合、今と同じく「アメリカ」「ロシア」と呼ぶ場面が多かった。幕末を扱った他の時代劇ではアメリカを「メリケン」「メリケン国(こく)」と言っていたような気がするし、天明~寛政年間を描いた『おろしや国酔夢譚』ではタイトルどおり、大黒屋光太夫とその仲間、さらに松平定信といった日本人がロシアを「オロシヤ」と呼んでいた。幕末には「アメリカ」と「メリケン」、「ロシア」と「オロシヤ」の両方が使われていたのか?


滝山は1805年生まれ
「天保~嘉永の中村主水」を「1840年代で年齢が40代」とすると、この世代に近くなる。
└→天保時代の中村主水(年齢変遷と作品名)

若干
若干(ジャクカン)」は余り多くない数量。北京語で読むと ruogan である。
弱冠(ジャククワン)」は年が若いこと。北京語で ruoguan である。