『巨人の星』の無印は原作が5年(1966~1971年)、アニメが3年(1968~1971年)続いたが、星飛雄馬が実際に登板した試合、イニングはそう多くはない。

 

ライバルとの勝負で1試合に数話要することもあったし、星飛雄馬の場合、ライバルに敗るなどの原因で精神的に落ち込み、再び這い上がるまでの話が長い場合が多い。監督命令を無視して勝手に失踪、二軍に落ちる悪癖も影響していた。

 

1969年の前半戦、阪神の花形はオズマの打法をまねて大リーグボール1号を打った。花形はバットを水平に出し、ボールがど真ん中に来た状態でバックスイングして打った。森は星がサインを無視したと思って激怒。星は伴に「あれは大リーグボールだった」と言ったが伴は信じなかった。しかしあとで中日の水原監督が記者団に説明したように細かく説明すればよかった。

 

この時期、飛雄馬と左門の対戦が描かれなかったのも妙である。
左門が大リーグボール1号と対戦したのは1969年前半戦の1打席のみ。
花形は1969年前半戦、後半戦、1970年前半戦と3回は対戦の機会に惠まれていた。

 

1969年の球宴直前の前半戦、大リーグボール1号がオズマに打たれた巨人×中日戦の直前、星は川上監督に「メンバー表に俺の名を書かんで下さい」と頼んだ。川上は堀内を先發にしたが、この時点では星はオズマの打法のついて監督に説明しなかった。そこで川上はオズマの作戦を見極めるため星を起用。

 

ことここに至ってやっと飛雄馬は川上監督に「大リーグボールが打たれる危険性」について節飯いようとしたが、川上監督は無視して「投げればわかる」。
どうせ説明するなら花形に投げる前に星がタイムをかけて森捕手を読んで「花形がバットを水平に出そうとしている。あれがオズマの作戦かも知れない」と説明すればよかったのである。

 

大リーグボール1号がオズマに打たれたとき、オズマは飛雄馬がボールを投げたあと、バットを本塁上に水平にかざした。オズマがバットの向きを変えたのは飛雄馬がボールを話したあと、ボールがバッテリー間を移動しているときである。

 

これを観た飛雄馬は「は、花形そのまま」と驚いていた。

 

大リーグボール1号は予測の魔球である。星飛雄馬がボールを投げたとき、オズマは普通にバットを構えていた。飛雄馬はオズマがバットを水平にすることを予測して、そこを狙ってボールを投げたはずだ。

 

するとボールが飛雄馬の手から離れたあと、オズマがバットを水平にしても、それはボールを投げる直前から飛雄馬が予測していたことのはずだ。
それを見た飛雄馬は何を驚いていたのか。オズマが次に見えないスイングをすることに改めて気付いたのか。
それなら、飛雄馬は大リーグボール1号を投げる前に「む、オズマはバットを水平にするつもりだ。これでは大リーグボールはど真ん中に行ってしまう」と察してタイムをかけ、捕手・森に相談すべきであった。

 

1970年の開幕第1戦、星飛雄馬は中日の伴に対して大リーグボールを連投、伴の背面スイングでことごとくファウルにされた。
ここで飛雄馬は「なぜゲッツーコースに跳ね返ってくれんのか」という疑問を持っていたが、これも飛雄馬が伴の背面スイングを予測してボールを変化させたから。ボールが伴のバットの近くでUターンするのも飛雄馬による制球の結果のはずだ。
そもそもこのときこそ、川上監督が前年の1969年夏に飛雄馬に提案した「内角高めぎりぎりのストライク」を試すべきではなかったか。

 

花形に2号を打たれたときも、飛雄馬は花形の一本足打法を予測できず、逆に花形は飛雄馬が消える魔球を投げるかどうかを完全に読んでいた。花形は消える魔球を打つ前、ボールを2球見送っている。花形の選球眼もあるが、もしここで花形が一本足打法をやっていたら、作戦がばれて、花形が打ち取られていたところだ。

 

1970年の球宴、2号が野村とアルトマンによって連打され、飛雄馬は森捕手の指示によって大リーグボール1号を長池に投げるが、飛雄馬が集中力を欠いていたため失敗。
飛雄馬は「絶望だっ。大リーグボール2号敗れ、1号もすでにさびついていた」と嘆いていたが、それは自分が集中していないからである。
飛雄馬の魔球が一度打たれると、次に通用しなくなるのは、彼自身の性格に原因がある。

 

もし星飛雄馬が速球、1号、2号を混ぜてうまく使い分けていれば、もっと勝ち数を稼げたし、彼の現役活動期間ももっと長くなっていたはずだ。

 

なお、アニメでは1969年夏、川上監督が飛雄馬に登板を命じたとき、飛雄馬は「大リーグボール1号の予測は無意識」という話をしていた。
それなら飛雄馬は「無意識に打者の動きを予測してボールをバットに当てる」方向に練習をしていたわけで、それを「無意識に予測して打者を空振りに打ち取る」という方向にすればよかったわけだ。

 

前後一覧
2010年8/6

 

関連語句
大リーグボール1号(タイトル検索) 大リーグボール(野球カテゴリ内)

参照
梶原作品vs水島作品(2010年8月~)