『ドラえもん』はドラえもんというロボットが登場する意味ではロボット漫画である。
日本のロボット漫画及びその映像化(実写化、アニメ化)作品では、手塚治虫の『鉄腕アトム』のように等身大で意思を持つロボットが人間社会にどう適応するかという話があると同時に、横山光輝の『鉄人28号』や『ジャイアントロボ』のように巨大なロボットを人間がどう使うかという話の2種類がある。

 

『ドラえもん』は最終的にこの『アトム』型と『鉄人』型の2種類の中間に位置するか、あるいは両者を融合させたような作品である(タイムボカンシリーズにも似たような要素はある)。

 

『ドラえもん』をロボット漫画として観た場合、手塚治虫の『鉄腕アトム』、横山光輝の『鉄人28号』のようにロボットや未来の高度な技術を人間がどう使うかで、その力が「神」にも「悪魔」にもなるというテーマがあり、それは永井豪の『マジンガーZ』にも受け継がれている。

 

一方、魔法少女漫画というジャンルは、横山光輝と赤塚不二夫を源流としており、赤塚が手塚の弟子だったとすると、やはり横山と手塚に始まる意味でロボット漫画に近い。

 

横山光輝が作った『魔法使いサリー』は魔女が人間界に入りこむもので、人間のふりをしているとはいえ、人間にとっては場合によって恐怖にもなる魔女が紛れ込んでいる設定である。その魔女の力が人間にとって有益か有害かは魔女次第であると同時に人間次第でもある。
手塚治虫の弟子・赤塚不二夫が作った『ひみつのアッコちゃん』は生身の人間が魔法を入手する話である。
これにより、「魔女が主人公」と「魔法を借りた普通の女の子が主人公」という2大ジャンルが確立された。『魔女っ子メグちゃん』『スイートミント』は『サリー』型であり、『クリィミーマミ』は『アッコちゃん』タイプである。

 

あえて魔法少女ものとロボットものの共通項を探すと、サリーはドラえもんのような未来のロボットが人間になりすましているようなもので、アッコちゃんはのび太が四次元ポケットのスペアをもらったようなもの。つまり『秘密のアッコちゃん』は、ドラえもんがのび太に四次元ポケットのスペアを与えて、すぐ未来に帰ってしまったような話である。

 

人間が巨大な力を得た場合、どう使うかは横山光輝、手塚治虫の共通のテーマである。
藤子・F・不二雄も石森章太郎もそれを受け継いだ。
手塚治虫の『鉄腕アトム』を進化させたような作品が石森章太郎の『人造人間キカイダー』(直接のヒントになったのは『ピノキオ』らしい)である。

 

石森章太郎の弟子であった永井豪はその強い力の二面性をロボット漫画として描き、これが日本のアニメの一つのジャンルとして確立され、『エヴァンゲリオン』などに到っている。
そして、これは藤子・F・不二雄原作の『ドラえもん』の映画版『のび太の鉄人兵団』で一つの完成を観ているようにも思える。

 

『ドラえもん』では友だちロボット・ロボ子がこのテーマを体現しており、魔法を扱った作品にも「魔女っ子しずちゃん」などがある。
『ドラえもん』の初期には、ドラえもんとガチャ子がドタバタを演じ、人間社会にこの2体がいかに適応するかが問題であった。ガチャ子は原作では早く退場したが、日テレ版のアニメでは最終回でドラえもんが未来の世界へ帰ったあとも、ガチャ子は少しのび太の時代に残ったようである。

 

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2010年6月 6/28