『暴れん坊将軍』第10部の第4話「隠し子発覚!陰謀に巻き込まれた女スリ」(210年5月10日再放送)では、どうも悪役のほうに少し分があるように見えた。

 

小橋めぐみが演じた山猫お京が大岡越前の財布をすり、奉行所に連行された。
お京は仲間の尼に財布を預けていたがそれを吉宗が見抜いていた。
遠島になりそうなところでお京は自分が将軍御側御用取次・有馬彦右衛門(演;名古屋章)の隠し子だと名乗る。

 

しかし、そうだとしても罪は罪で、幕府の重役のむすめだからスリをしても釋放同然というのは不公平で、こんな世の中だったから悪人が頻出したのだろう。

 

お京は有馬と結婚寸前に身分の違いから結婚をあきらめた「おふさ」という女が育てた娘で、おふさが生んだ有馬の子(確か女の子)はすぐ亡くなり、お京の母もお京が生まれたときに他界、確かお京の父はおけ屋とのこと。お京はおふさ没後、常磐津の師匠に育てられていた。
しかしお京は有馬のむすめと名乗り、有馬も吉宗も最初はそれを信じた。

 

しかし、元北町奉行・黒河能登守(演;内田勝正)が知り合いの商人からこの話を聴き、江戸城で将軍の御前におもむき、有馬、大岡の前でこの件を指摘、スリ犯を投獄せず、幕府重役の屋敷にいるのは違法だと言う。有馬はお京が自分のむすめだと言わざるをえなくなった。

 

ここまでは黒河のしたことは正しいのである。
有馬は吉宗に辞表を提出。
お京は吉宗に自分は実は有馬のむすめでないと真実を述べる。

 

吉宗はお京の前では有馬の甥を名乗っており、要するに吉宗もお京も自分の素姓を偽っていたのである。
吉宗の隠密行動自体が「旗本の三男・徳田新之介」を名乗った嘘を前提にしている。
第9部最終回、宗春が放った刺客によって吉宗が襲撃されたときなど、有馬は吉宗に市中徘徊をやめるよう何度も言っていたが、吉宗の外出を阻止できなかった有馬と大岡に責任がある。

 

だから第8部で吉宗の許嫁として登場した鶴姫(演;中村あずさ)も吉宗でなく新之助に心が傾き、江戸城で新之助が吉宗だと知って「人の気持ちをもてあそんで許せない」と激怒し、一度は吉宗との婚姻を拒否したのだ。

 

お京は商人が黒河からもらった書類をすった。理由はどうあれ窃盗再犯である。
お京は自分と仲の良い町人の男とともに黒河一派から追われる。当然である。

 

黒河一派がやった悪事は、お京を追う段階でお京の二人目の養母だった常磐津の師匠を斬ってしまったことだ。これは批判されてしかたがないが、黒河の部下があそこで刀を抜いて人を斬る必要があるか疑問だ。
こういう場面を入れないと吉宗が黒河を成敗する大義名分が視聴者に説明できないのだろう。

 

黒河はお京と町人の男を斬ろうとするが、その寸前で吉宗が現れる。当然、黒河は吉宗に反論するが、吉宗は黒河一派が常磐津の師匠を斬ったこと、お京たちを斬ろうとしたことを攻めていつもの立ち回り。
こうなると北町奉行を含めた部下から抵抗勢力が出るのは吉宗自身に原因がある。

 

お京はその町人と祝言を挙げ、有馬、大岡、吉宗も出席。奉行所はもとより、江戸城も留守でいいのか。
政治は実質、老中たちがやっていたのだろう。
これなら宗春が政権を奪おうとしたのも当然。
宗春が江戸城にいて、吉宗が松平長七郎のように将軍家として立ち回りをしてもよかった気がする。

 

お庭番は十文字隼人と渚。
番組で目立たないが江戸城の老中たちのほうがきちんと天下を治めているのではなかろうか。

 

泥棒と嘘つきを善玉に仕立てた妙な時代劇であった。

 

5月12日の再放送では、有馬が城の石灯篭(石燈籠)に隠してあったへそくりを吉宗の外出費にしていたことが判明、これを越前に預けた。将軍家の隠密行動にどれだけの税金が使われたか考える必要がある。

 

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