由美かおるは東野黄門時代に何度かゲスト出演していた。
第16部から第28部まで「かげろうお銀」としてレギュラー入りし、第29部から第43部まで「疾風(はやて)のお娟(えん)」の役。
「疾風」は「はやて」だと今にしてわかった。

ちなみに家重の時代を舞台にした『逃亡者おりん』の「逃亡者」は「のがれもの」と読む。
おりんを演じた青山倫子は「のりこ」らしい。青山倫子は『水戸黄門』第41部第11話「大坂」で「お松」を演じた。

オリコン電子版の記事で「かげろうお銀(第16部~29部)」「疾風のお娟(第29部~41部)」となっているが、「お銀」を第29部までにしているのは誤りで、「かげろうお銀」は第28部までである。
由美かおるが「お銀」を演じていたのは、佐野浅夫が光圀を演じていた第28部までで、第29部で光圀訳が石坂浩二になったとき、由美かおるの役が「お娟」になったわけだ。

デイリースポーツではこの点は正しく書かれてある(それが当然だが)。

由美かおるは光圀に仕える女忍者を25年演じたようだが、初出場はもっと前だった。
ネットで調べると初出場は35年前。1975年4月7日放送の第6部第2話「哀愁稗搗節」で、当時の光圀役は東野英治郎、佐佐木助三郎が里見浩太朗、渥美格之進を演じていたのが横内正であった。

かげろうお銀が初登場した第16部は1986年4月28日から1987年1月19日まで放送され、当時の光圀は西村晃だったようだ。

光圀が隠居していたのは1690年から1700年までの10年間なので、由美かおる初登場のころから数えても、作品は1690年代の10年間を3回余り繰り返し描いていただけである。
特に第40部のように松尾芭蕉(第40部では堺正章が演じた)が登場したシリーズでは、芭蕉の没年が1694年なので、1690年の光圀隠居から4年以内のできごとである。

由美かおるが演じたかげろうお銀は光圀の命を狙いながら、一方で各地の悪い権力者にも怒る第三者的な立場であった。それが光圀の從者になったわけだ。
『水戸黄門』では権力者や金持ちの中から悪人が出ても、それを取り締まる者も権力の側から出る以外にないという世界であり、庶民は身近な問題を自分で解決することをせず、権力者の中から庶民の味方が出るのを待つしかないという他力本願である。そういう民衆は自己責任を自覚せず、不満があると体制批判と政府への陳情に走る。

『大日本史』を編纂した水戸光圀、その光圀を主人公にした作品は徳川幕府中心の歴史観を庶民に植えつけるだけである。
『暴れん坊将軍』も本来は『吉宗評判記・暴れん坊将軍』であり、将軍の功績を強調したもの。
日本に真の民主主義が根付くのはまだ先であろうか。

4月6日、朝日新聞朝刊では社会面のど真ん中でこのニュース。
2004年11月22日、大山のぶ代がドラえもんの声を降板(2005年3月)することが毎日新聞で報道されたときも、社会面で報道されたようだ。

由美かおるは第41部で卒業したはずだが、なぜか由美かおるの「嫁入り」は時間軸がリセットされた第42部で描かれ、ここで初めて格之進が光圀の部下になったことになった。これではお娟は第42部で卒業したのではなく、「お娟は光圀の部下になって間もない時期に、実は商人の嫁になっていた」という設定が追加されただけである。

お娟が登場した回の時代設定を調べると、2007年放送、助三郎役が原田龍二、格之進役が合田雅吏、更におけらの新助(演:松井天斗)が登場していた第37部では、鬼若(演:照英)とアキ(演:斉藤晶)が退場。また、2003年の1000回記念3時間スペシャル(第32部の直後)を最後に登場していなかった弥七(演:中谷一郎)に代わって弥七(演:内藤剛志)が登場。最終話「江戸」は吉孚(1685~1709)が14歳の時なので、劇中の時代は1698年。
2008年に放送された第38部では、お娟、弥七、おけらの新助、山内志保(演:小沢真珠)が同行し、桃の節句に放送された第9話「敦賀」では勅命が元禄丁丑年のものなので、劇中の時代は1697年。前のシリーズの翌年に放送されたが、劇中の時代は逆に前の年に戻っている。
2009年放送の第40部では、新助が既に退場しており、お娟、弥七に加えて、ちゃっかり八兵衛が参加。このシリーズでは堺正章が演じた松尾芭蕉が登場。芭蕉は1694年没なので、第40部の劇中の時代は第38部から更に3年以上戻って1694年より前。
2010年放送の第42部では、お娟が翁屋与右衛門(演:前川清)に嫁いだ。このシリーズから助三郎役が東幹久、格之進役が的場浩司となったが、第1話では松平頼常の養子(劇中で実子)・軽千代こと頼豊(1680~1735)が12歳なので1691年の設定と思われ、またまた時間が逆戻り。
2011年12月12日放送の第43部第21話藤井紋太夫が存命だったので劇中の時代は1694年以前。
同年12月19日の『水戸黄門』最終回SP(下注釋)では綱吉が護国寺に参拝。1681年に創建されたらしいが、本堂は1697年に建てられ、本堂があった時なら1697年以降。
時代順にまとめると1691年にお娟が翁屋に嫁ぎ、1694年までに助・格・弥七・お娟の同行者としてちゃっかり八兵衛が参加し、やはし1694年までに柳沢吉保と藤井紋太夫が光圀に刺客を放ち、助・格・弥七・楓が苦戦、1697年におけらの新助が参加しており、この年に護国寺の本堂が建てられ、1698年に光圀・助・格・お娟・新助一行から鬼若とアキが一行から脱退し、弥七が復帰したことになる。

2015年放送の月曜ゴールデン特別企画の『水戸黄門』スペシャルでは助:原田龍二、格:合田雅吏という配役に戻っていた。お銀もお娟も登場しなかったのは当然だが、助格が先代に戻されたせいで、楓(演:雛形あきこ)は登場せず、助三郎の妻も登場しなかった。助三郎の妻は2010年放送の第41部の美加なのか、2011年の第43部の後の最終回SPの志乃なのか、それとも助三郎は第18部~第41部の時の独身に戻ったのか不明。弥七の配下に「お恋(れん)」「お雪」という女忍者がいた。コスチュームは20年前の『水戸黄門外伝 かげろう忍法帖』のくノ一軍団を思い出させた。大坂の荷上場の女親方・お美津の役で大場久美子が出演し、ストーリー上、あってもなくてもいい、申しわけ程度の「入浴シーン」が披露された。

2015年の月曜ゴールデン特別企画の『水戸黄門』スペシャルでは、助三郎(演:原田龍二)、格之進(演:合田雅吏)、柘植の飛猿【つげのとびざる】(演:野村将希【のむら まさき】)が登場したが、お娟は登場しなかった。由美かおるは『水戸黄門』に出ると入浴シーンを強要され、それは還暦を迎えた2010年の時点で卒業、2011年のスペシャルはナショナル劇場としての最後だから特別だったのだろう。
なお、『水戸黄門』での由美かおるの入浴シーンの200回目は2009年の第40部第14話。201回目が2011年12月19日のSPだったので、第42部、第43部では入浴シーンがなかったことになる。それはそれでいい。中尾幸男(なかおゆきお)が『NHK大河ドラマ大全』で語ったように、『水戸黄門』で印籠は毎回出るとは限らないし、由美かおるは毎回お風呂に入るわけではなかったのに、定番だと思われているだけだ。
由美かおる、『水戸黄門』で入浴シーン200回を達成 2009/11/09(月) 10:23:10 [サーチナ]

2014年10月09日(木)
里見浩太朗主演の時期の末期、第41部終了の時点で、原田龍二と合田雅吏の助格コンビの降板より、疾風のお娟役の由美かおるのレギュラー卒業の方が世間では大きく話題になっていた。光圀助格が「看板」にならなくなった「水戸黄門」など既に存在価値はなかった。
posted at 03:08:48

@kyojitsurekishi 由美かおるが「かげろうお銀」(西村~佐野黄門時代)または「疾風のお娟(はやてのおえん)」(石坂~里見黄門時代)としてレギュラー出演していた時の水戸黄門は「文化」でなく「ブーム」と化していた。「ブーム」は廃れるのが宿命。
2015年7月8日2:36


前後一覧
2010年4月 4/5

関連語句
お娟
由美かおる 光圀 お銀 紋太夫
原田 合田 由美かおる(twilog)


注釋
同年(2011年)12月19日の『水戸黄門』最終回SP
TBS放送、C.A.L制作(製作?)の『水戸黄門』の最終回として作られたが、2015年のスペシャルが放送されたので、2011年版は「ナショナル劇場~パナソニックドラマシアターとしての『水戸黄門』」の(現時点における)最終作となった。
2015年6月29日に助三郎:原田龍二、格之進:合田雅吏のスペシャル時代劇として復活したので、2011年師走中旬の助・東幹久、格:的場浩司のスペシャルはシリーズ全体の「最終回」でなくなったが、パナソニックドラマシアターの『水戸黄門』は(現時点では)2011年師走が最後である。また2011年師走のSP(助:東幹久、格:的場浩司)は夜7時から9時までだったので、レギュラー時代の8時台が放送時間に含まれていたが、2015年6月末のSP(助:原田龍二、格:合田雅吏)は夜9時からで、月曜ゴールデン特別企画だった。すると月曜夜8時台にパナソニック1社提供で放送されていた『水戸黄門』としては2011年師走のスペシャル(助三郎:東幹久、格之進:的場浩司)が現時点で最終回となる。


参照
『水戸黄門』第42部第1話における「お娟の縁談」と「格之進参加」による前後関係の謎
『NHK大河ドラマ大全50作品徹底ガイド完全保存版』『NHK大河ドラマ50作パーフェクトガイド』
一般時代劇vs必殺シリーズ(2010年4月~)