前に「殿馬一人外伝」という副題が添えられている。
山田太郎と殿馬一人が鷹丘中学に轉校してきたのは中学2年のときであることが確認できた。

山田と殿馬が中学3年になったときにサチ子が小学校に入学している。
殿馬が音楽室でピアノを弾いているとき、野球部の岩鬼、山田たちがランニング。

殿馬は山田の遅い走りからスローテンポのリズムを思いつく。
そしてある日、殿馬は山田が打ったホームランを見て白鳥を連想。練習相手の投手は長島。
この時点で山田はすでにユニフォーム姿で野球の練習をしていた。

東郷学園との試合で殿馬は「秘打・白鳥の湖」を披露、小林真司の球を打った。

まるで山田の練習を観た殿馬が音楽部から野球部に移ったように見えるが、山田が鷹丘中学で柔道部から野球部に移ったとき、キャプテンは岩鬼で、山田はまだ普通の野球の練習をせず(させてもらえずに)に新入部員を集めようと校内を駆け回っており、殿馬はそのときに登場した。

初期『ドカベン』では鷹丘中学3年の山田が本格的に野球の練習に参加するようになったのは、殿馬に続いて猛司が入って部員が9人そろったときで、山田がユニフォーム姿で練習するようになったのは景浦監督が就任してからである。

すると、この「誕生秘話」は殿馬が野球部に入る前か後(あと)かが問題になる。
前とすれば、山田は早いうちから野球の練習をしていたことになり、後(あと)であれば殿馬は野球部と音楽部を兼ねていたか、殿馬だけ野球の練習からはずれてピアノを弾くこともあったことになる。

『ドカベン』中学編に登場した山田世代は1958年度生まれ(岩鬼は1959年4月1日生まれ)、1972年度で中2、1973年度で中3、1974年度で高1だった世代である。
『ドカベン』中学編では岩鬼が鷹丘中学3年のとき、巨人は川上監督の時代で、王と長嶋が現役であった。川上が監督で長嶋が現役だったのは1974年まで。

一方、『ドカベン・プロ野球編』と『ドカベン・スーパースターズ編』の山田世代は1976年度生まれ(岩鬼は1977年4月1日生まれ)。スーパースターズの山田が生まれたのは長嶋監督時代の2年目、1976年である。
中学2年だったのは1990年度、翌1991年度で中3、1992年度で高1の世代であり、1972年当時は生まれていなかったわけだ。

「秘打『白鳥の湖』誕生秘話」は『ドカベン・スーパースターズ編』の山田世代の中学時代を描いている。したがって、それは1990年代初めの話である。1972年、1973年当時を描いた『ドカベン』中学編と少し設定が異なるのは当然であろう。

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2010年3/19