1830年代の北町奉行・榊原忠之と鼠小僧次郎吉を主人公にした時代劇。
榊原忠之を演じたのが里見浩太朗。次郎吉を演じたのが風間杜夫。その前に1985年の『忠臣蔵』では。里見浩太朗が大石内蔵助を演じ、風間杜夫が浅野内匠頭を演じて共演している。

「史実」では次郎吉は1832年に処刑された。
1840年に遠山金四郎が北町奉行になったとき、すでに鼠小僧次郎吉が処刑されて8年がたっていた。
TBS『江戸を斬る』やテレ朝『名奉行遠山の金さん』で金四郎の町奉行時代を描く場合、鼠小僧を出すなら「実は生きていた」とするか、同名を名乗る別人にする以外にない。

そこで「次郎吉は生きていた」という假説を基本にしながら、時代設定を次郎吉が処刑されたとされる1832年当時に設定したのがこの『夢日記』。
次郎吉処刑のときの北町奉行・榊原忠之が主人公である。1989年から92年まで放送された。

『遠山の金さん』で定番となっている裁きの場面を省き、奉行が敵の集まる場所に乗り込むとき奉行のままの姿であるところが特徴である。金四郎が町人姿で悪事の真相を知りながら、裁きの場では最初、それを隠しているというシステムに対する不自然さが解消されている。金四郎が町人姿で戦うよりは、忠之が奉行の姿で初めから刀を使うほうがわかりやすい。

ただ、忠之がやっていることは賭場に入ったり悪の組織の用心棒になるなど、「警視総監」が暴力団などの犯罪組織に入り込むようなもので、普通なら懲戒免職もので、職務の一環としても、奉行の職を賭した非常手段である。奉行所の部下たちはこういう型破りな奉行に振り回されていた。

さらに、敵の懐に入る捜査まで奉行自身がやっていては、鼠小僧の出る幕がない。素浪人になって用心棒となるのは武士である忠之でないとできないだろうが、町人に化けるなら次郎吉にやらせたほうがよかったはず。

オープニングでは忠之と次郎吉の対決が描かれており、まるで銭形警部とルパン三世のように敵対しながら巨悪と立ち向かうという図式を期待させたが、実際は次郎吉は奉行の隠密と化しており、義賊ではなくなっていた。
また、次郎吉を演じた風間杜夫のスケジュールの都合か、次郎吉が重要な作品であっても次郎吉が登場しない回が続き、観ていてイライラしたものである。

結局、里見浩太朗扮する奉行の変装、一人芝居が目立ち、風間杜夫が演じた鼠小僧も存在がかすんでしまった。
全体として、里見浩太朗と風間杜夫、北町奉行と鼠小僧というダブル主役をうまく生かせなかったことが残念ではある。

ちなみに『江戸を斬る』では西郷輝彦のあとに里見浩太朗が遠山景元を演じた。つまり里見浩太朗は榊原と遠山の両方を演じたことになる。
また、里見浩太朗と風間杜夫が「大石内蔵助と浅野内匠頭」だったのと似ているのが、松方弘樹と東山紀之。テレ朝『名奉行遠山の金さん』では松方が遠山奉行、東山が配下の同心の役だったことがあるが、TBS『大忠臣蔵』では松方が大石、東山が浅野の役であった。


2011年5月、長門裕之が他界。『八百八町夢日記』では長門裕之と船越栄一郎が榊原忠之の部下を演じていた。

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09年12/3 12/5


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