必殺シリーズ時代設定変遷 

1972年にスタートした『必殺仕掛人』は朝日放送がフジテレビの『木枯し紋次郎』に対抗したものだった。
その後、フジテレビが『仕掛人藤枝梅安』を放送(最終的に藤田まことも音羽屋半右衛門役で出演)、必殺シリーズが中村敦夫を起用するという複雑な結果となった。
また、『ドカベン』の岩鬼のハッパは紋次郎の楊枝をヒントにしたものらしい。

 

1972年当時は日本も高度経済成長の真っただ中にあったようだが、1973年から石油危機(Wiki)で、このあたりが『仕留人』(1974年)や『仕業人』(1976年)で混迷の時代を描いたような作風のもとになったのかも知れない。

 

1975年にダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が大ヒットした。
『ドラえもん』ではこの時期に出た単行本第9巻で「ぼく、桃太郎のなんなのさ」がある。
『仕業人』では1976年にOPナレーションで宇崎竜童が起用された。「あんた、この世をどう思う」は「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」をヒントにしたものだろう。
のちに宇崎は「ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド」として『獅子の時代』(1980年)の音楽も担当する。

 

1977年は王貞治の756号HRで日本中が盛り上がった。この前後は王貞治の記録が日本で話題であった。
阪神ファンがこれに対抗した結果かどうかはわからないが、『新必殺仕置人』で元阪神タイガース・藤村富美男(~ふみお)が出演し、阪神時代の白黒映像も使われていた。
なお、元締め・虎のむすめという設定のお玉(かとうかず子)が登場『仕事人V旋風編』(1986~87年)で「主水バースになる」という話があり、ここでも阪神と縁がある。ただ、藤田まこと自身は近鉄ファンのようで、オリックスとの合併のときにマスコミ報道で藤田氏が怒っていたのを覚えている。

 

『必殺仕事人』(1979~81年)のときは漫才ブームであり、『恐怖の大仕事』(1981年)でのりお・よしおが獅子舞役で出演し、「ツクツクボーシ」をやっていた。エンディングでは横山やすしも出演。

 

1982年にはあの「逆噴射」で有名な日航機羽田沖墜落事故(Wiki
『クライマーズ・ハイ』で描かれた1985年に墜落事故(Wiki)から3年前であった。
この82年の事故で「逆噴射」と「心身症」が流行語になり、『新必殺仕事人』最終回(1982年)でも使われた。
『3年B組金八先生』第2作(1980~81年)で「思春期心身症」が扱われたのは、事故の少し前だったようだ。

 

1987年の『剣劇人』のときはバブル時代で、必殺の重いテーマ自体が時代に合わなくなっていたのだろう。
しかし、1990年には『勢ぞろい仕事人!春雨じゃ、悪人退治』で早くもバブル崩壊を描いている。
『横浜異人屋敷』はまさにドイツ統一の前後、世界が大きく動く時代の作品であった。
『オール江戸警察』ではOPナレーションでサダム・フセインによるクウェート侵攻を意識したような台詞がある。

 

『必殺仕事人・激突!』(1991~92年)では政治改革がテーマになったこともあり、この番組が終わった翌年、自民党が下野して細川内閣が成立した。
この時期、必殺シリーズは20年を迎え、藤田まことは一度、中村主水役から引退すると宣言した。

 

1995年になると阪神大震災、オウム事件、失われた10年の中で時代もまた混迷し、『必殺!主水死す』(1996年)の撮影終了記者会見でも「混迷した世相に必殺が復活します」という趣旨のことを製作者が言っていたが、それが「主水の最期(映画から11年後に復活したが)」を意味していたのも皮肉であった

 

1999年の『必殺!三味線屋・勇次』ではパンフレットで「この世紀末に待望の仕事人が帰ってきた」ということばがあったと想う。

 

前後一覧
09年8/25~27 9/8

参照
2009年8月26日
└→必殺シリーズの主な作品の時代設定と放送、公開年
└→必殺シリーズ時代設定変遷