時代設定順
放送順

この2つを比べると、必殺シリーズが同じ時代を何度も描いていることがよくわかる。
『必殺仕事人2009公式ガイドブック』で『必殺仕置人』が文政時代の話だと書かれてあり、そうだとすると、『必殺仕事人2009』が文政であるのは主水編のスタートであった『仕置人』の原点に戻ったように見える。

中期になると天保が多くなり、ところどころで文政と幕末にずれている。
『仕業人』は『仕置屋』の天保と『新仕置人』の文化・文政のどちらにするかで、スタッフも悩んだのではなかろうか。

中村主水の経歴を歴史の中で考える場合、放送順の流れではなく、あくまで時代設定の順序で時間の流れを考えるべきである。

そこで、放送順を無視して江戸時代の歴史の中に当てはめると、町方同心・中村主水は文政の初めに裏稼業を始めたあと、すぐに書庫番に異動、次に自身番に異動になり、天保末期から天保時代にはまた定町廻り同心。天保の改革で仕事人狩りが強化されたときに、むしろ主水は多くの仲間と組んでおり、また、文政時代に「死んだ」はずの組紐屋の竜が23年ぶりに復活し主水と組んだ(1843~1844年)。

そして、天保の改革も終わり、黒船来航を目前にした嘉永年間になって年老いた主水が「死んだ」はずが、黒船来航では若返った主水が出現し、「仕留人」を結成。慶喜が将軍になった時期、組紐屋の竜が天保時代(1844年)から数えて22年ぶりに主水と組み、文政時代の竜の殉職(1820年か)から36年後であり、もはや、同名でそっくりの2代目と呼んでいい。

なお、天保の改革の時代、仕事人・主水が組んだ『仕事人vs江戸警察』『アヘン戦争へ行く』『意外伝』の3種類のグループでは、いずれも何でも屋の加代がいた。加代は安政の大獄以降の幕末(『大老殺し』『横浜異人屋敷』『ブラウン館』)にも主水と組んでいたが、もちろん、天保の加代がいた時代とは20年も時が流れており、やはり同名の別人であろう。
加代は文政時代にも出現しており(『裏か表か』『春雨じゃ、悪人退治』)、その加代も、そのときの主水と組んでいる。

また、寛政時代を扱っていると想われるのが『仕掛人』と『仕事人vs三日殺し軍団』で、『三日殺し軍団』で長谷川平蔵が登場するところが池波文学との関連を想い起させる。もっとも、『三日殺し軍団』の長谷川平蔵は2代目、3代目の可能性もある。

天保が終わって黒船が来るまでの過渡期、弘化から嘉永の初めまでは『必殺からくり人・富嶽百景』と『主水死す』で扱っているだけのようである。
1849年の葛飾北斎の死没が1978年の非主水で一度描かれ、その後、18年たって20世紀最後の主水シリーズで再び採用されたのは奇遇である。