必殺シリーズ時代設定変遷 

『必殺仕事人2009公式ガイドブック』によると、『必殺仕置人』(1973年放送)の時代設定は文政年間(1818~1830年)らしい。その後、必殺シリーズでは天保、幕末の話もいくつか作られたが、『必殺仕事人2007』の時代設定は文政3年(1820年)、『必殺仕事人2009』のそれは文政4年(1821年)であり、『仕置人』と『仕事人2009』がいずれも文政時代を描いているところは原点回帰と言うべきか。
『助け人走る』(1973~74年)と『仕事人V旋風編』(1987年)については、元禄(1688~1703年)はあくまでお遊びの例外と見なし、文政時代を採用したほうがいい。

『暗闇仕留人』(1974年)では時代がいきなり幕末に飛んでいる。黒船の最初の来航は1853年(嘉永6年)であり、文政末年である1830年(文政13年→天保元年)から数えても23年経過している。
『仕留人』の放送は2度目の黒船(1854年)から120年後の番組だ。

この時期、おそらく必殺シリーズのスタッフは、主水の出るシリーズを『仕置人』『仕留人』の2作で終わらせようと考えていたのだろう。だから2回目に幕末を選んだと考えれば納得できる。
ところが、よく知られているように『必殺必中仕事屋稼業』での朝日放送のネット局がTBSから今のテレビ朝日になったことによる視聴率低下により、スタッフは『必殺仕置屋稼業』で主水を復活させた。

ここでスタッフは時代設定の辻褄(つじつま)を放棄したものと想われる。
『仕置屋稼業』で主水が北町奉行所から南町奉行所に移ったとき、時代は鳥居耀蔵が奉行になったときだったようである。もはや『仕留人』の黒船の話は「なかったこと」にされたかのようである。
さらに、その続編である『必殺仕業人』では脚本段階で時代が「文政時代」になっていた。
主水シリーズとしてはその次の『新必殺仕置人』では解説書などで「江戸時代が成熟した文化・文政時代」としているものがあったと想う。時代はまたさかのぼっている。

『必殺仕舞人』が放送された1983年は1843年の玉屋の失火から140年であった。
『必殺仕事人V』と『必殺仕事人V激闘編』では、テレビの本編やSPと劇場版では時代設定がずれており、『仕事人V』は『意外伝』で天保時代(1843~1844年らしい)を描いて始まり、映画『ブラウン館』では25年近い未来に移って1866年の慶喜の時代になっている。『激闘編』では本編ではハレー彗星が描かれ、これが江戸後期なら天保時代の1835年だが、組紐屋の竜と壱と参の殉職を描いた『裏か表か』では1820年の文政時代が舞台だったようである。1820年と1835年の時間的な差は15年で、もし、本編から続編から15年なら同じ世界だが、『激闘編』では本編の15年前が続編になっており、時間が逆行しているところを観ると別世界と見なすべきだろう。
ちなみに、文政より前のハレー彗星接近は1759年で、家重の時代であり、『裏か表か』で描かれたらしい1820年から60年余りの開きがある。

1986年のハレー彗星を前に、『仕事人V激闘編』(1985~86年)では江戸時代(江戸後期なら1835年)のハレー彗星が描かれ、『ドラえもん』の「ハリーのしっぽ」(てんコミ第33巻)では明治時代のハレー彗星(1910年=明治43年)が描かれたわけだ。
昭和の接近の前年である1985年は江戸時代の1835年から区切りのいい150年後であるが、これは約76年という周期の2倍が152年だからである。
『ドラえもん』では当時から見て75年前のハレー彗星接近を描いたというわけだ。2010年は「ハリーのしっぽ」のハレー彗星接近(1910年)から100年である。

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09年8/25~27 9/8