『空想歴史読本』(「終戦」直後~20世紀後半について) 

『空想歴史読本』では『ドラえもん』について22世紀のドラえもん誕生だけを扱っており、その他、のび太とドラえもんがタイムマシンで訪れた「過去」や「未来」についてまるで触れていない。
「りっぱなパパになるぞ!」でのび太がタイムマシンを使って訪れた近未来は、原作で西暦2002年という設定である。この作品が出たのが1977年当時で、それから25年後は2002年である。その2002年にはのび太と静香は大人で、ノビスケという息子が観たところ10歳くらいに成長している。『空想歴史読本』では2003年の鉄腕アトム誕生について書いているが、『ドラえもん』ののび太の息子について書いていない。

また、『歴史読本』では『デビルマン』についてはデーモンが太古の氷河の中に眠ったことと、1973年にデーモンと戦ったしたことが書かれてあるだけで、不動明と飛鳥了がジャンヌ・ダルクやアントワネット等と遭遇した時間旅行について書かれていない。それに『デビルマン』の文庫版では時代設定は1980年代になっている。

つまり、この『空想歴史読本』は空想歴史の本としては未完成であり、PART-2、PART-3が出ても不思議はないのだが、現時点で新作が出る気配はない。
言ってみれば、この「ものがたりの歴史」は『空想歴史読本』に足りないものを補い、『歴史読本』に対する不満を爆發させたものである。
しかし、この「ものがたりの歴史」でも『こち亀』『ゴルゴ13』などを扱えなかった。
『科学読本』に続編のほか、亜流が出たように、「空想歴史」を扱う本がもっと出てもよさそうなものだ。

この『歴史読本』では、『ドラえもん』について22世紀のドラえもん誕生のみで、多くの時間旅行を扱っていないことはすでに述べたし、『21エモン』や『キテレツ大百科』『みきおとミキオ』『忍者ハットリくん』なども触れられていない。『キテレツ大百科』など、飛行機の歴史にかかわる興味深い話である。円道氏がこれらに一切触れないところを観ると、残念ながら円道氏は藤子作品に余り関心がないのであろう。

むしろ、空想歴史に関しては柳田理科雄氏が『科学読本』の本文や欄外コメントなどで詳しく書いている。例えば、トトロが縄文時代に人類とドングリを取り合っただろうという推測や、花形満が星飛雄馬と出会ったときに何歳だったかなどについては『科学読本』に詳しい。

この「ものがたりの歴史」は、その『空想歴史読本』に対する不満を爆發させたものだとも言える。
だから『ウルトラマン』については軽く扱うだけにとどめた。『宇宙戦艦ヤマト』と『銀河鉄道999』についても『歴史読本』で時代設定が検証されているので、ここでは細かく検証していない。
『空想歴史読本』はすでに文庫になっているようなので、未読に人には是非、一読するよう、お勧めする。

柳田理科雄氏が『空想科学読本』で『マグマ大使』と『鉄腕アトム』に触れながら『ジェッターマルス』に触れていないのに対し、円道氏は『歴史読本』で『マグマ大使』『アトム』『ジェッターマルス』、さらに『サンダーマスク』についても言及しており、そこは評価できる。

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09年6/19~21 6/23