「非主水(ひもんど)」その参 

『必殺仕事人』は必殺シリーズの第15作である。
20世紀のテレビシリーズ全30作は、1『仕掛人』、2『仕置人』、3『助け人』、4『仕留人』、5『仕事屋』、6『仕置屋』、7『仕業人』、8『からくり人』、9『からくり人・血風編』、10『新仕置人』、11『新からくり人』、12『商売人』、13『からくり人・富嶽百景』、14『うらごろし』、15『仕事人』、16『仕舞人』、17『新仕事人』、18『新仕舞人』、19『仕事人III』、20『渡し人』、21『仕事人IV』、22『仕切人』、23『仕事人V』、24『橋掛人』、25『仕事人V激闘編』、26『まっしぐら!』、27『仕事人V旋風編』~28『~風雲竜虎編』、29『剣劇人』、30『仕事人・激突!』である。
このうち、中村主水が出た作品は、2『仕置人』、3『助け人』(第12話ゲスト)、4『仕留人』、6『仕置屋』、7『仕業人』、10『新仕置人』、12『商売人』と『仕事人』の各シリーズ(15、17、19、21、23、25、27、28、30)、そして、29『剣劇人』の最終回におけるゲスト出演である。

まず、「仕置人」と「仕事人」は裏稼業の名前としては使用頻度が高く、それは劇中に台詞にも影響している。

『仕置屋』『商売人』の第1話で主水は「仕置人」
『仕留人』の次の主水編『仕置屋』では、おこうの台詞で主水がかつて「仕置人」だったことになっており、スタッフが「仕留人」時代を無視したか、または「仕留人」を「仕置人」の一種とみなしたようになっている。もっとも、これはスタッフが『仕置人』の「もう一つの続編」として『仕置屋』を改めて作ったとも解釋できる。
また、『新必殺仕置人』のあとの主水編『必殺商売人』の第1話では、主水は前からの続きで「仕置人」を名乗っていたようである(江戸町奉行所仕事人探索係『必殺仕事人・中村主水の秘密』1994年)。

『仕事人』では初めから主水は「仕事人」
ところが、『商売人』のあとの主水編である『仕事人』では主水も秀も初めから自分たちや同業者を「仕事人」と呼んでいたようである。
『仕事人大集合』では、以前、「からくり人」だった仕掛の天平、「仕事屋」だった知らぬ顔の半兵衛、そして「仕置人」だった棺桶の錠と虎の元締も「仕事人」になっていた。

「仕事人」が主水編と同義語になり、ついには必殺シリーズそのものと同義語になってしまった今となっては、必殺シリーズのスタッフはなぜ第15作『必殺仕事人』に至るまでの14作の間、「仕事人」というタイトルを使わなかったのだろうかという疑問が出てくる。
第5作で『仕事屋稼業』があり、そこで「仕事料」ということばがすでに出ている。
主水たちがもらう金の呼び名は、『仕置人』では「仕置料」だが、『仕業人』では又右衛門が「仕事料」と言っていた。
『新仕置人』で念仏の鉄と再会した主水は、当初、裏稼業を再開するつもりがなく、「俺は仕事はしねえぞ」と言って立ち去ろうとしていた。

『必殺仕置人』のOPナレーションで「闇に裁いて仕置きする」と言っていたのが、『仕事人大集合』では「闇に裁いて仕事する」になっていたようだ。
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『仕置人』の劇中では「仕置きに掛ける」ということばが出てきた。一方、『新仕事人』第1話で主水が裏稼業再開を決意したとき、「野郎、仕事に掛けてやる」
しかし、これらは、やはり「仕置きする」「仕置きに掛けてやる」でないと迫力に欠けるのではなかろうか。

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2009年5/31