ハナ夫、ペロ、指輪プロポーズ作戦など


 ドラえもんがおこなった「過去の改変」の最たるものは、のび太の結婚相手をジャイ子から静香に変更させたことであろう。また、犯罪的だったのは『パラレル西遊記』で現代社会を妖怪の国にしてしまったことである。
 「のら犬・イチの国」の場合、犬と猫の群れを3億年前の地球に移し、進化させるなど、地球の歴史を変えることをドラえもんたちはやったわけだが、これは現代においてドラえもんたちが3億年前に移る前から「イチ」の作った国の遺跡が話題になっており、やはり、予定どおりの行動であった。

 ドラえもんとのび太が過去を変えるつもりで時間移動したことが、結局、初めから歴史に入っていたという例が結構、ある。

●『ドラえもん』より、「ぞうとおじさん」
 『ドラえもん』の「ぞうとおじさん」では、ハナ夫は終戦直前、殺される寸前にドラえもんによって郵便ロケットでインドに送り返された。しかし、「終戦」直後、動物園の職員は駆けつけた子供に「ハナ夫は殺された」と告げた。
 この子供は原作『ドラえもん』ではのび太の叔父(のび助の弟)、2007年のアニメではのび太たちが動物園で出会った老人の少年期であった。
 原作の叔父はのび助に、アニメリメイク版の老人はのび太たちに「不思議な話」をすると言って話し始めた。その途中で「『ハナ夫は殺された』と聴かされた」と語ったところで、ドラ&のびは怒り、タイムマシンで戦時中に。
 そこでドラえもんはハナ夫をインドに送り返した。
 ドラえもんとのび太が「現代」に戻ると、叔父または老人は話を続け、「最近のインド旅行でハナ夫に会ったような気がした」と聴いて「ハナ夫は無事にインドに着いた」と認識、喜んだ。
 つまり、ハナ夫の救出はドラえもんとのび太がタイムマシンを使う前から歴史に組み込まれていた。そこでドラ&のびが途中まで聴いてハナ夫が死んだと誤解したからハナ夫は死ななかったわけだ。
象の寿命は100年近いらしいので、終戦後30年、60年余り生きていても不思議はない。

●「ペロ!生きかえって」
 「ペロ!生きかえって」は静香の愛犬・ペロの話。
 ペロが病気となり、静香は夜の12時近くまで看病したが、両親から休むよう言われ、眠った。朝、起きるとペロは「死んでいた」のだが、この指輪はドラえもんによって飲まされた薬で眠っていたのを静香が「死んだ」と認識した結果だった。
 ドラえもんとのび太が戻ったとき、静香は「ペロを早く生き返らせて」とせがんだ。もし、過去が改変され、ペロが元気なままだったら、静香がこのようなことを言うはずがない。つまり、話の冒頭で、静香が泣いていたとき、ペロは生きていたわけで、「死んだ」は誤認だった。
 しかし、この誤認がなければ、ドラえもんとのび太が昨晩に戻って薬を飲ませることはなかった。 
 今、想えば、タイムふろしきを使ってもよかった。
 静香の父親がのび太の人間性を評価したのは、こういう逸話からだったか。 
└→「ペロ!生きかえって」の前後関係

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