予定調和I、予定調和II、時間の環


タイムマシンで過去を変えられない例として、カール・セーガン(Carl Sagan、1934~1996)は「もし、自分の親が知り合うのを邪魔したら、自分は生まれなかったことになる」という矛盾を言っている。
藤子・F・不二雄(1933~1996)がこれの逆を描いたのが「プロポーズ作戦」で、1959年、のび助と玉子が公園(アニメでは日比谷公園、のちに多摩川動物園に改訂)で喧嘩となり、のび太(1964年生まれ)の要請でドラえもんがヒトマネロボットを使って仲を取り持った。ヒトマネロボットは、まず、のび助に化けて玉子に求婚、次に玉子に化けてのび助に求婚した。この結果、12年後の1971年に至るまで、のび助と玉子はいずれも「相手が自分にプロポーズした」と認識し、喧嘩になってしまう。
ドラえもんとのび太がタイムマシンで12年前にさかのぼったのは、この真相を確かめるためだった。

映画『Back to the Future』にも似たような話が出てくるようだ。

ドラえもんの言によると、もし、のび助と玉子が破談となったら、のび太は生まれないことになるらしい。しかし、のび太とジャイ子の結婚が変更となり、のび太が静香と結婚しても、孫の孫・セワシは生まれてくる。これについて柳田理科雄が検証しており、それを応用すると以下のようになる。

セワシには野比家と剛田家の血(または遺傳子)が受け継がれているはず。もちろん、のび太の母・玉子がのび太に与えた片岡家の血もセワシに受け継がれている。のび太が静香と結婚しても孫の孫がセワシになるとすると、セワシは野比家(+片岡家)、剛田家、源家の血(遺傳子)を受け継いでいることになる。すると、のび太とジャイ子が結婚した場合の子供か孫、ひ孫が源家の人と結婚した結果、できたのがセワシ。それで、のび太と静香が結婚した場合、子供か孫、ひ孫が剛田家の人と結婚してもセワシが生まれる。
この場合、のび太にとって結婚相手がジャイ子より静香のほうがいいだろうが、セワシにとっては状況はさほど変わらないはず。柳田氏はこう、結論付けており、全く同感だ。
└→T-Cup掲示板>のび太からセワシまでのDNAを示す系図

こうなると、タイムマシンで過去を変えると、それが本当に歴史の改変になる場合もあれば、結果がやはり歴史に組み込まれることもあるようだ。

『うる星やつら』では、20世紀から平安時代後期にタイムスリップした諸星あたるが牛若丸(のちの源義経)を京都見物に誘った。ところが、義経のむすめ・クラマの家来のカラス天狗によると、この京都見物はあらかじめ歴史的事実となっていた。また、ラムは恋敵であるクラマを消そうと、弁慶をけしかけ、五条大橋牛若と勝負させた。

『戦国自衛隊』では現代(20~21世紀)の自衛隊が戦国時代にタイムスリップし、その部隊の隊長は戦国の世で天下を獲ろうと考えたが、結局、そこで全滅した。これは、タイムスリップによる歴史の大きな改変を許さない自然の力による結果にも見える。

前後一覧
09年3/9 7/1