表紙に「WASCISM Vol.29 小学館」とある。3月は春であるが、2月發賣で、一応、冬号である。

「田母神論文を補強、擁護!」という企画には賛同できる。
田母神氏を批判した朝日新聞の2009年11月2日の社説は論文でなく感想文だ。

前号、『わしズム』28号で小林氏がアイヌについて書いたことについて、新党大地副代表の多原香里氏が抗議文を送ったようで、『わしズム』29号に全文が掲載され、おそらく小林よしのり氏が反論している。
細かい内容は雑誌を観てもらうことにする。

多原氏は「個人がどの民族に属しているかは。帰属意識によって決定されます」と書いており、これには私も賛成である。

これに対し、『わしズム』の側(おそらく責任編集長である小林氏と想われる反論の書き手)は、
(引用開始)
そもそも人種的・地域的起源も、文化的要素も一切関係なく、本人たちの「帰属意識」だけで決まる、なんていう乱暴な「民族」の定義をこの日本において認知したら、「隼人民族」も「熊襲民族」も「琉球民族」も、これから次々に政治的運動で復活・勃興させることができる。日本は民族分裂で国家解体だ。まさか多原氏がそれを期待している極左傾向の人物というわけでもあるまい。
(引用終わり、『わしズム』2009年2月發賣の冬号より)
と書いているが、まず、「帰属意識」だけで民族を決めるのが「乱暴」だという小林氏(推定)の論は小林氏の主観であり、私には何が「乱暴」か理解できない。

また、「それを期待している極左傾向」の「極左」の意味が曖昧であり、何が「極左」で、それのどこが危険なのかまったく定義がない。
多原氏が「隼人民族」「熊襲民族」「琉球民族」の存在、あるいは日本の分裂を望んでいるかどうかはわからないが、假に多原氏がそう言う考えを持っているとしても別に一つの考えであり、何も問題はない。

「熊襲民族」「琉球民族」はあっておかしくない
そもそも、ある」人が「帰属意識」で自分の属する民族を決める場合は、それなりの地域や文化の根据があるはずだ。
また、「隼人民族」「熊襲民族」「琉球民族」も存在すると認識する人がいれば、それもいいと想う。
小林氏は「日本は民族分裂で国家解体」と言うが日本が多民族国家になっても分裂するとは限らないし、日本国家が解体することのどこが悪いか理解不能である。日本が分裂したらすればいい。

事実、小林氏はチベット独立という中国分裂を支持している。
小林氏は中国分裂を支援しながら日本分裂を何の根据もなく否定している。

世界中で民族独立運動は起きている。
もし、小林氏の意見を中国に応用して書き換えれば「ウイグル民族もチベット民族も満州民族も、これから次々に政治的運動で復活・勃興させることができる。中国は民族分裂で国家解体だ」となるが、中国ではウイグル民族もチベット民族も存在するとしながらそれらを中国人を認めている。問題はその自国民への対応が余りにも非人道的ではないかということである。

中国の場合、漢族を含めて56の民族がいると言われているが、55の少数民族の中には中国籍の朝鮮人、ロシア人、カザフ人、キルギス人、モンゴル人も入っている。また、チベット系、モンゴル系、トゥーングース系のそれぞれ民族をさらに極力細かく分類し、民族の種類を多く見せる代わりに、「チベット民族」や「ウイグル民族」といった個別の少数民族において、1民族当たりの人口が少なく見えるような分類になっている。一方で「漢民族」はその言語の方言の格差が英語と独語くらいに離れていても「1民族」と計算している。

例えばユネスコで日本の8つの言語が絶滅の危機だと報告されたが、そこではアイヌ語だけでなく、日本語の八丈島や奄美、沖縄の「方言」を独立した言語と解釋している。これを「八丈語」「奄美語」「琉球語」などを復興させて「日本を解体する策動」などと批判するのは幼稚であろう。
琉球語は「うちなーぐち」と言われるがその方言の区分と名前の付け方で「琉球語」と「沖縄語」を別のものに見せかけることも可能である。

小林氏は民族と血統が関係ないと言っているようで、その血を理由にアイヌが存在しないと言っている。そこに矛盾がある。
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2009年2/27 2月末