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前期の必殺は、主水、鉄、錠の登場した『必殺仕置人』をいかに継承し、それを超えるかという歴史だったが、後期になると、主水、秀、勇次の登場した『新必殺仕事人』をいかに継承し、超えるかという模索になった。

針型と刃物型
必殺!裏稼業の凄い奴ら』にあるように、『必殺仕事人』初期に左門は『仕掛人』の西村左内をモデルにしたようなもので、また、秀が鑿(のみ)を使っていたのも『仕置人』の錠が使った手槍に近い。

この秀の武器が鑿(のみ)から簪(かんざし)になったわけだが、花屋の政はこの簪(かんざし)の秀をコピーしたようなキャラクターで、政が手槍を使うようになったのは、秀の武器が簪(かんざし)から鑿(のみ)に戻ったようなもの。また、いつの間に着替えたのかわからない「裏稼業用の衣裳」がなくなったのも初期の秀に近い(注釋)。
また、錠を演じた沖雅也も『必殺仕置屋稼業』の市松では針状の竹串を使った。
さらに、必殺の原点ともいえる針を使う仕掛人・藤枝梅安を演じた緒形拳も『必殺必中仕事屋稼業』では刃物の武器、剃刀(かみそり)を使っていた。つまり、緒形拳の武器は必殺シリーズで「針」から」「刃物」という変遷をたどった。
糸井貢も『仕留人』初期では三味線のバチ(撥)を使っていたが、後期では簪(かんざし)、そして仕込み矢立てを使うようになった。つまり「刃物」から「針」に移っている。

     刃物型             針型
半兵衛・剃刀(かみそり)←─梅安・針(または)・・・演:緒形拳
糸井貢・バチ(撥)────→簪(かんざし)→仕込み矢立て・・・演:石坂浩二
錠・手槍────────→市松・竹串・・・演:沖雅也
│ ↓継承?
秀・蚤(のみ)──────→簪(かんざし)・・・演:三田村邦彦
│                  ↓継承
政・手槍←────────花の枝・・・演:村上弘明

『必殺仕掛人』は必殺シリーズの原点であるが、『仕置人』は原点に肉づけをした核であろう。
『必殺商売人』でおせいが使った仕込み扇子の技は映画『必殺!』などの朝吉、『激闘編』の弐に受け継がれた。

緒形拳と沖雅也と三田村邦彦は『仕事人大集合』に出演したが、緒形拳は半兵衛の役で剃刀を使い、沖雅也は手槍を使う棺桶の錠を演じていた。それぞれ梅安と市松でなかったのは針状の武器が秀の簪と似ているからだろう。

「原点回帰」における武器の変更
『必殺仕事人』は1979年の時点で原点回帰をはかった作品で、そのあと、『必殺仕事人V激闘編』でもう一度原点回帰を狙った設定がなされた。
『激闘編』では政の武器が花の枝から手槍になり、壱の素手による技は『必殺仕置人』の鉄に近かった。

一方、組紐屋の竜の武器は相変わらず、紐であった。
三味線屋・勇次の技を「継承」した形の組紐屋の竜は映画『表か裏か』で退場し、その後、夜鶴の銀平の鶴、かげろうの影太郎の南京玉簾という変遷をたどる。

だが、銀平と影太郎は刀を使ってもよかったのではないか。

むしろ、『激闘編』以降の原点回帰で竜の武器を組紐から刀にしたほうが、うまくいったと想う。
なぜなら、組紐屋の竜は三味線屋・勇次のコピーのようなキャラクターで、その勇次は畷左門(なわて~)に代わって出てきた仕事人であり、左門は刀を使う武士から怪力坊主に移っている。

左門(刀→怪力)→勇次(三味線の糸)→竜(組紐)→銀平(鶴)→影太郎(玉簾)
秀(鑿=のみ→簪=かんざし)→政(花の枝→手槍)
└→必殺シリーズ「原点回帰」――針と怪力と刃物の系統(弐)


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09年2/19~23