「仮面ライダー」と「怪人」はどう違うか

毒を以て毒を制す――「悪」を倒す「悪」の力
「正義」と「悪」が紙一重という展開はほかにも多い。

円谷プロが創ったウルトラマン、ウルトラセブンは宇宙人であり、セブンはカプセル怪獣を使う。
宇宙から来た怪獣に見えたジャミラは人間のなれの果てであった。

石森章太郎が創った『アクマイザー3』では人類の敵が地底世界に住むアクマ族であり、そのアクマ族の中の裏切りものが人類に味方したのがアクマイザー3であった。

『人造人間キカイダー』のドラマ版では、光明寺博士はダークに使われていたので、『空想法律読本』によれば、光明寺博士が作ったキカイダーとダークのロボットの対決は、同じ組織のロボット同士の内輪もめになる。

ハカイダーの頭に光明寺博士の脳が入っている。この場合、ハカイダーの人格は博士そのものになるのではないか。実際、漫画版では途中でハカイダーが光明寺博士の記憶を取り戻し、ジローの味方になる。

石森章太郎のアシスタント・永井豪の『デビルマン』では主人公・デビルマンもデーモン族の一人であった。テレビアニメではデビルマン以外のデーモンのほとんどは「妖獣」と呼ばれたが、デビルマンも「妖獣」であるはずだ。

タツノコプロが作った『新造人間キャシャーン』では悪の組織が「人間の作ったロボットが狂い出したもの」という設定で、本によっては公害処理ロボットが口蓋の原因を人間と見なしたという説明もある。キャシャーンは人間の人格を移されたロボットのような設定で、人類を救うためにアンドロ軍団と戦っていたが、一般人にとってはキャシャーンも敵と同じロボットであった。

さらにGAINAXが作った『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァンゲリオンは人類が使徒と戦うために創ったものだが、結局、エヴァと使徒は似たようなもので、最後はエヴァ同士、人間同士の死闘となった。

時代劇の主人公も刀で人を斬りまくっている以上は犯罪者である。必殺シリーズはそこをはっきりさせた異色の作品であった。中村主水は賄賂をもらう「悪い役人」であり、ほかの時代劇では悪玉に属する武士であった。

漫画版『仮面ライダー』ではショッカーの背後には日本政府があり、国民に番号をつけて管理する政策と関係していたらしい。

一緒にされやすいが、人類滅亡と地球の滅亡は違うのである。
人類が滅んでも地球が残れば、そこでは生物が進化し続ける。「アフターマン」と呼ばれる生物が想像された。
一方、地球がなくなっても人類が宇宙に避難すれば別の星で生き残る。
しかし、世間では人類滅亡と地球滅亡が混同されている。

『デビルマン』においてデーモンは人類以前の知的生物であり、地球を汚した人類を憎んでいた。だが、最も地球を破壊する核戦争を計画していたのが矛盾している。

恐竜が絶滅せずに地下で生き残った設定は『ドラえもん』と『ゲッターロボ』に出てくる。
恐竜帝国は人類より先に地球を支配していた先住生物である。

小学館学習雑誌の漫画版『ゲッターロボG』では、ゲッターによって両親を殺された百鬼帝国の子供の恨みが描かれていた。

アニメや特撮ヒーローは安易に人類の側を「正義」としているにすぎない。しかし、人類こそ地球の敵という視点も時代とともに出てきた。

デーモンや恐竜帝国も含め、アニメや特撮の「悪玉」は先住民族ではないのか。
『アイアンキング』で人類の敵とされる不知火一族は、実は2000年ほど前に大和政権に敗れた別の古代日本人であった。アイアンキングが戦っていた相手は、大和政権に復讐を試みていた不知火一族であった。

すると、『アイアンキング』でアイアンキングとその周りの人類を単純に「善玉」とするのは、アメリカ先住民族を悪玉にした西部劇の考えに近く、日本で大和民族以外を敵とした日本武尊や坂上田村麻呂の話に近い。
所詮は勝者の歴史観である。

『ウルトラセブン』では人類より前に地球に来ていた知的生物がいたが、人類はこれを宇宙人が「侵略」をたくらむ秘密基地と見なし、ウルトラ警備隊がこの知的生物の海底都市を滅ぼしてしまう。その中には戦闘を望まない市民もいたはずだ。
それは初代ウルトラマンによって虐殺されたバルタン星人も同様である。
└→人類は地球の敵か

「勝てば官軍、負ければ賊」
歴史上、「悪」とされるのは戦いで敗れた側である。
すると、戦いに勝てば「歴史」を創造できる。
多くの国で戦争に負けても戦いを放棄せず、勝つまで何度も戦争を繰り返すのは、戦勝国になるためである。
理論上、戦争に負けたことへの反省は「次の戦争ではどうやって勝つか」ということになるはずだ。

「勝てば官軍、負ければ賊」と言われるが、負けて「賊」とされた側の言い分にも耳を貸すべきだろう。

70年代までのSFでは地球人と宇宙人の戦いが多かったが『機動戦士ガンダム』で地球人同士の戦争が描かれ、リアリティーが増した。