○伊集院光著、岸川真編『球漫――野球漫画シャベリたおし!』(実業之日本社、2003年)

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水島漫画を中心に、野球漫画について細かく解説してある。
イチローが殿馬をオリックスに推薦し、清原が山田を西武に推薦した話、肖像権問題で外国人選手を描けなくなる問題など、のちに水島氏が朝日新聞のインタビューで語ったことが詳しく述べられている。
これが出た時期は、まだ『スーパースターズ編』に移行しておらず、山田世代がFA(Wiki)を宣言したらどうなるか、もし、岩鬼が阪神に入ったら、パ・リーグの主要キャラクターはセ・リーグに移るのか……などという話も出ていた。
さらに緒方や山岡はどうしているかという話題もあり、この2名については『スーパースターズ編』1巻で水島氏が描いている。

水島氏が『巨人の星』などを批判して「野球はこんなつらいものじゃない」と言ったのに対して、伊集院光は「身近じゃないですからね」と賛同している。

伊集院光は『アストロ球団』の作者との会談では「漫画は荒唐無稽であるのがいい」と言いながら、水島新司との会談では水島氏の「本当の野球を描く」というコンセプトに賛同するところがあり、どうも人がよすぎて対談相手に合わせるところが見える。
昔は水島漫画でも「剛球仮面」などが出てきて、今だったら読者が文句を言うという話があり、必ずしも水島漫画が現実路線を狙ったとは限らないことがわかる。

伊集院光はあだち充の一連の「野球を扱った漫画」については野球漫画とは認めておらず、野球が入る前の『みゆき』で洗礼を受けていると語っており、まったく同感である。
東京MXの再放送で『巨人の星』と『ドカベン』は観る気がするが、『陽あたり良好!』は観る気にならない。

梶原一騎のスポ根路線へのアンチテーゼとして、水島新司、ちばあきお、あだち充が出たという経緯があるが、水島新司から見るとあだち作品は野球を安易に扱って許せないものらしい。
└→Wikipedia 水島新司漫画に関する逸話

しかし、水島漫画に出てくる相撲、柔道、ヤクザの世界など、それ專門の漫画家から見れば、安易に見えるかも知れない。

梶原作品とあだち作品は対極にありながら、いずれも野球を集団にして人間ドラマを描いており、野球を扱っていない『愛と誠』と『みゆき』を考えればわかる。
水島漫画でも野球以外を扱った『銭っ子』や『ジャラリンコ』があった。
その意味で、梶原作品とあだち作品は、野球漫画を野球の入門書のように考えている水島氏の作品とは違うわけである。

2008年12/17