反動をつけて球速を増す手、またはトリック投法、「大回転」投法
 『父の魂』で、南城隼人が身体を後ろにそらせて投げる「水流投法」があり、相手のバットを折る剛速球。
 アニメ版『侍ジャイアンツ』でば番場蛮がハイ・ジャンプ魔球を応用し、「えび投げハイ・ジャンプ」にした。空中で身体をエビのようにそらせ、球速を増すもの(73年ごろ)。
 『ドカベン』では中学柔道部出身の影丸がクリーンハイスクール野球部で柔道の背負い投げを野球の投球に応用。「背負い投法」のボールはただのストレートだが、スピードがすごい。
 投球動作の途中で投げるもので、『黒い秘密兵器』の椿林太郎が使った「かすみの秘球」。川上V9が始まる
1965年ごろだった(最終回の日本シリーズは巨人×南海戦)。
そのあと、1969年に中日の小川健太郎投手が王貞治に対し、背面投げを使用。
かすみの秘球から10年ほどたったとき、『ドカベン』で土佐丸高校の犬神が背面投げで山田を打ち取った(注釋)。
 1969年に中日の小川健太郎投手が王貞治に対し、背面投げを使用。これは6月の対巨人戦3連戦でのことで、最初の試合でA・オズマが星飛雄馬の大LB1号を打倒。
『巨人の星』の「運命の対決」(KC17巻、文庫10巻)によると、飛雄馬が大LB2号を開發したのち、小川投手は1970年の開幕第1戦、対巨人戦でも背面投げを披露。

 

 番場蛮の「大回転魔球」(73年)は「大回転投法」と呼ぶべきもの。ボールがいつ飛んでくるか不明で、原作漫画では腕だけでなく、ボールも分身。
 『ドカベン・スーパースターズ編』によれば、三十数年後の2007年、日本シリーズで中日を相手に投手として登板したスーパースターズの殿馬が、ジャンプや「回転」をして投げる方法を開發。殿馬はピアノストなので、この投げ方は舞踊のバレエに近い。投げた本人も目が回って守備ができなくなる。中日の打者はそこを狙ってバントしたが、3塁の岩鬼がバントを予想して処理。大砲万作も中日OBであり、中日は「回転投法」を使う投手と縁がある。
 『男どアホウ甲子園』でも明和高校出身の池畑三四郎が「剛球仮面」を名乗り、ジャンプして投げる「大回転投法」を使った。
└→ジンクス、景浦秋男、殿馬一人、谷津吾朗【人物】

 

砲丸投げの応用
 「大回転」して投げるのは圓盤投げやハンマー投げ、砲丸投げに近い。『巨人の星』では、六七年秋ごろに巨人の入団テストを受けた陸上選手・速水譲次が遠投テストでほとんど「回転」しない「砲丸投げフォーム」を使い、飛距離95メートルでテスト通過。しかし、プロ入り後の速水はもっぱら走塁のみで使われた。
 74年ごろ、やはり、中学柔道出身の甲府学院・賀間剛介が腕力を鍛え上げて砲丸投げのような剛球を投げた。打者にはボールが本当に鉛の球に見えたらしい。
 速水が「金メダルでは飯は食えない」と言ったのは昔の話。
 92年の初めはアルベールヴィル(Albertville)冬季五輪が日本のスポーツニュースの注目となり、プロ野球のキャンプなど、余り話題にならない時代となっていた。93年にJリーグが發足し、野球の人気に逆風が吹き始めた。長嶋茂雄が2期監督になったのも野球人気回復のためか。
 五輪に野球が加わり、2004年アテネ五輪で日本代表が銅メダル、2012年のロンドンから野球とソフトボールが除外されるだけで大騒ぎになる野球を五輪でやるかどうかの問題がメインになった。

 

 ハンマー投げの室伏が始球式で速い球を投げても、陸上の金メダリストで飯が食える今では、室伏も野球界には入らないだろう。
 水島新司は梶原一騎の『巨人の星』を意識して、野球漫画の中の多様性(例えば、脱巨人軍)を目指していたが、梶原一騎はスポーツ漫画の多様性を早くから目指していたようである。

 

ハイ・ジャンプ+「大回転」魔球、または+分身魔球
 原作『侍ジャイアンツ』で74年ごろに番場蛮が「ハイ・ジャンプ・大回転魔球」を開發。アニメでは最終回で「ハイ・ジャンプ。大回転・分身魔球」を編み出し、ジャックスが「ミラクル・ボール」と命名して空振り三振。
 フィギュアスケートを見ればわかるように、空中で「回転」するには、ジャンプと当時に回り始めないといけない。星飛雄馬は「スクリュー・スピン・スライディング」でジャンプしてからスピンを始めた。
 アニメの最終回で八幡太郎平はミラクル・ボールを全身で受けた。画面では遅い球に見えたが、ハイ・ジャンプと「大回転」の球速が加わって、すさまじいスピードになるはず。事実、原作漫画で「ハイ・ジャンプ・大回転魔球」を受けた森の左手は、ミット越しとはいえ、はれ上がっていた。

 

 また、高所から落ちる球が分身するものには鮎原こずえの最後の魔球があった。

 

 

tweet(1)〕〔TWEET(2)〕

 

 

関連語句

参照
前後一覧I前後一覧II
魔球、秘打の変遷、記事一覧
落合博満【人物】
背面投げに関して追加
スポーツ全般、梶原vs水島他(2008年9月14日~15日)
2008年9月前半